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ついに劇場版が公開! 沢口靖子と内藤剛志に聞く『科捜研の女』が愛される理由

ぴあ

左から)沢口靖子、内藤剛志 撮影:源賀津己

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1999年に放送が始まり、20年以上にわたって愛されてきた『科捜研の女』がついに映画化! 『科捜研の女 -劇場版-』がいよいよ公開を迎える。これを機に、シーズン1から主演を務めてきた榊マリコ役の沢口靖子、そしてシーズン5より現在に至るまで、マリコの頼れる“相棒”であり、今回の劇場版でも大活躍を見せる刑事・土門を演じる内藤剛志にあらためて“科捜研”の魅力、ここまでコンビを組んできたお互いの印象、そして映画の見どころについてたっぷりと話を聞いた。

――ファンにとっては「ついに!」という思いも強い映画化ですが、おふたりはどのように受け止めましたか?

沢口 私もまさか“科捜研”が映画になると思ってもおりませんでしたので、夢のようなお話だと喜びました。(映画化が決まったのが、TVシリーズが20シーズンめを迎えた2020年で)ちょうど節目の年でしたので「集大成にする」という気持ちで取り組みました。

内藤 (TVシリーズと)やっていることは同じだと思っています。ただ、これだけ長くやってきたことで、みなさんがご存知のような定型になっているので、形が変わるというのがすごく嬉しいんですよ。例えば1時間じゃなく、2時間のスペシャルドラマになったり、前後編のスペシャル版だったり。そういう意味で、映画ってまた新しい形なんですね。

やることは一緒なんですけど、また新しいチャレンジができるなと。決して映画が“終点”だと思ってやってきたわけではないんですが、新しいことを楽しめるというのが、話を聞いて思ったことでした。

『科捜研の女 -劇場版-』

――映画ならではとも言えるオールスターキャストで、ファンにとっては懐かしく、嬉しい面々が続々と登場します。撮影現場で印象的だった再会のエピソードについて教えてください。

沢口 それぞれのみなさんとマリコの歴史がありまして、お会いしたときは嬉しい、懐かしい気持ちになりました。それぞれの方とのいろんな思いがあるんですが……特に長田成哉さんが演じる相馬くんは、マリコのヤンチャな弟的な存在でした。今回は、カナダ在住という設定で、映画の中ではリモートでの会話だったんですけど、撮影ではマリコの声の相手をするために長田さんがスタジオに来てくれたんです。

今までと同じ物理研究室の自分のデスクに座り込んで、以前と同じようにすっかり溶け込んでましたね。「科捜研はやっぱりいいなぁ」とか言ってくれてました(笑)

マリコと相馬くんのアイコンタクトがあって、マリコが叱ったり、励ましたりするとき、耳を引っ張っていたんですね。今回、リモートでの共演でしたが、監督に「ぜひ再現したい」とリクエストを出させていただいてやっていますので、ファンのみなさんには楽しみにしてほしいです

内藤 僕は第2シーズンから出演していて(※)、1999年に放送が始まった当初は、家で寝転んで観てたんですよ。そのとき「なんで、渡辺いっけいがこんなキレイな人のダンナなんだ? ふざけんな!」と思ってたんですけど(笑)、20年経ってやっと本人に会えましたよ。「こいつかっ!」と思いましたね。

※第2シーズンでの出演は、科捜研のプロファイラーの武藤要役として。武藤とは別人の土門刑事としての出演は第5シーズンから。

『科捜研の女 -劇場版-』に登場する、渡辺いっけい演じるマリコの元夫・倉橋。

いっけいとは、仲も良いし、その間もいっぱい一緒に仕事もしてるんですけど、(今回の劇場版で顔を合わせると)イメージが変わるんですよ。“マリコの元ダンナ”って(笑)。土門はあくまでも(マリコの元夫・倉橋拓也を)知らないという設定で「この人なのか……」という感じなんですけど、僕自身は20年ずっと「なんでいっけいなんだよ!」と思ってたので、そんな思いがやっと成就しました! お客さんにしてみたら「いよいよ3人が会うぞ!」と思うでしょうから、そこは楽しんでほしいですね。

いや、本当に(元ダンナが)いっけいっておかしいよね? やっと“恨み”を晴らせました(笑)。

沢口 3ショットが見られるので、そこは楽しみにしていただきたいですね(笑)。

“科捜研”という言葉を他のドラマで耳にして認知を実感した

――今でこそ“科学捜査”を軸にしたドラマは国内外で数多くありますが、放送が始まった1999年頃はなじみのない存在だったかと思います。放送開始当初、沢口さんはこの作品にどんな印象を抱いていましたか?

沢口 (ドラマの話が来て)科学捜査研究所という言葉自体、初めて知って、そんなものが主体のドラマは他にないし、現場に残された微細な証拠から犯人にたどり着くという内容がとても面白い、希少なミステリーになるなと感じましたね。

――その後、これほどの人気を博し、シリーズが続いていくと思っていましたか? 周りの反響の変化やご自身で“手応え”を感じた瞬間などはありましたか?

沢口 先のことは見ず、毎年、毎年、新たな気持ちで、いただいた台本ごとに向き合ってきたという感じですね。ただ、あるとき、“科捜研”という言葉を他のドラマで耳にして、認知されてきたなと感じましたね。一般的な言葉になったんだなと。

“DNA鑑定”なんていう言葉も、放送開始当時はあまりニュースでも一般的じゃなかったと思います。

『科捜研の女 -劇場版-』

――内藤さんは、シーズン5から土門刑事役でマリコの相棒的存在を務めてきましたが、既にシーズンを重ねていた人気ドラマに入るというのはどういう心境でしたか?

内藤 既に違う役(プロファイラー・武藤役)をシーズン2からやってて、それは科捜研の側の人間だったんですけど。これはハッキリと記事に書いていただきたいんですけど、武藤は今でも生きてるんです。土門はあくまでも別人、新しい役としてやっていますし、やっちゃん(=沢口さん)とはそれ以前も仕事はしていたので、やりやすかったです。

ただそこから、今までやってきた関係性というのは、みなさんからいろんな意見をいただいて、修正しながらやってきてできあがったのが、今の形だと思っています。最初は、マリコとも“VS”でしたからね。

沢口 でしたね(笑)。

内藤 土門は「科学なんてなんだ!」という態度で。マリコともケンカばかりでしたから。そこからどうやるかはふたりだけでなく、スタッフみんなでやってきてこういう形になりました。長くやってきたからこそ、そうやって微調整できたというのは幸せな形だなと思います。マリコも変わったし、僕も変わったし、それはみんなのおかげですね。

『科捜研の女 -劇場版-』

――現場でのマリコと土門のコンビ感であったり、科捜研の仲間とのチームワークのために意識していること、大切にしていることはありますか?

沢口 やはり同じ方向を見て、同じ価値観を持っていることが大事かなと思っています。そして相手を尊敬し、信頼する気持ちも大切ですね。

内藤 長くやってますから基本的には何もしなくてもチーム感はあると思っています。ですが、やっちゃんとの話で言うと「ここは大事だ」ってときは必ず言葉でやり取りしますね。「ここどう思ってる?」って。たまにやるよね?

沢口 そうですね。

内藤 それは大事なことで、「なんとなく……」じゃなく「あそこどうやる?」ってね。

沢口 ポイントポイントで。

内藤 20年やっているので基本的には台本を読んで現場に行けばいいんですけどね。でも大事なところでズレたらまずいので。

沢口 迷ったり、何かリクエストがあるときは必ず相談します。

内藤 今回も話の中である“仕かけ”があるんですけど、それをどこから始めているのか? そういうことは話しますね。でも基本的にはだいたい(何も言わなくても)OKですよ。逆に言うと、しゃべるときはよほどのときだね。

「寂しかったら電話してこい!」って言うんだけど、1回もしてこない

――役としてではなく、俳優、人間としてのお互いの印象についてもお聞かせください。

沢口 内藤さんは非常に知識豊富でお話もすごく楽しくて、音楽、司会の才能まである多才な方なんですが、一方で同じ大阪の出身ということで、ざっくばらんで話しやすい方ですね。もう長いですからね。

内藤 初めて会ったときは何才だったっけ?

沢口 22歳でしたね。

内藤 じゃあ僕は32歳くらいだね。もちろん、そのときのことは全然覚えてないと思いますけど、(『科捜研の女』以前に)一度、会ってるんです。それからもう長いけど印象は変わらない、このままですね。

「寂しかったら電話してこい!」って言うんですけど、1回もしてこないんですよね(苦笑)。京都でひとりで頑張ってるからね、「俺もいるぞ」と。「寂しかったら飯でも食おうぜ」って言ってるけど、1回も電話してこない(笑)。そういう人です(笑)。

画面(=劇中のふたりの関係)どおりじゃないですかね? このふたりの関係って、夫婦や恋人でもない……家族って感じですかね? それは以前、彼女が言ったんですよ、ある難しいシチュエーションの回で「やっちゃん、これどう思ってやるの?」って聞いたら、「お兄ちゃんかな?」って言ったんです。それはたぶん、血のつながった兄妹じゃなくてね。

(別作品で)恋人の関係も演じたことがあるけど、俳優個人として“沢口と内藤”という関係で言うと、どこか肉親的な関係性もあるような気がしますね。いや、俺が勝手にそう思ってるだけで、全然そんなふうに思ってないかもしれないけど……(笑)。

沢口 いやいや、そうですね。距離の近さということで言うと……。

内藤 それでいいと思ってるし、たぶん、この作品は恋愛に発展はしないドラマだと思うし。

『科捜研の女 -劇場版-』

――キャスト陣の素晴らしさはもちろん、スタッフ陣の優秀さもこれだけ人気を博し、年数を重ねてきた要因のひとつだと思います。

沢口 毎シーズン、作品を進化させてくださってるし、真摯に作ってくださるのを感じますね。だからそれにお応えしたいという気持ちでいつも臨んでいます。

内藤 20年やってると、スタッフも世代交代するんですけど、新しくそのポジションに就く人たちは、前の世代のスタッフの助手なんですよ。『科捜研の女』で育って、監督や技師になっていく――つまり、この作品の全部を見てきているし、前の世代の残した有効な部分はそのまま使って、変えるべきところは変えていくんですね。長くやっていることが素晴らしいスタッフが育つことの一因だと思います。

例えば“シリーズ助監督”という人がいて、その人は現場に毎日は出てこないんです。何をするか? やっちゃんがドラマの中でやる科学のこと、手元のことなどを調べたりしてるんです。そういう人がいつか監督になると、よそから呼ばれてきたどんな優秀な監督でも撮れないものを撮ってくれるんですね。

20年がそういうスタッフを生んだんだなと思う。俳優もそうですね。若い子たちは「シリーズが始まった頃はまだ生まれてませんでした」とか「小学生のときに観てました」って言いますからね(笑)。そういう意味でも長くやってきて良かったと思うし、僕らも新しい監督に対して「どうぞ好きなようにやってくれ」と思えるんですよね。だって僕のダメなところも含めてすべてを見てきてくれているので。

――『科捜研の女』という作品はなぜここまで愛されているのでしょう? 作品、登場人物たちがシリーズを通じて持っている“哲学”“スピリット”はどういうものだと思いますか?

沢口 今回の映画でもそうですが、例えばマリコがみなさんにムチャぶりをしても、みなさん、文句を言いながら最終的に協力してくださるんですね。それはマリコの持つ「真実を突き止めたい」という純粋な情熱が心を突き動かしてるからだと思います。

やはりみなさん、「何かをやりたい」と思っても、残念ながら諦めてしまうところってあると思います。でも、マリコに刺激を受けて、元々みなさんが持っている思いが触発され、結果的に彼女についていくようになっているのかなと思います。

内藤 それが“プロ”ってことだと思います、全員がね。これはアスリートの言葉なんですけど「努力しなきゃ」と思った時点で負けてる。「したい」じゃなきゃいけないと。

たぶん、ここに出てくるみんな、そうだと思うんですよ、自分の仕事を「やらなきゃ」と思ってやってないんです。彼女は特にそう(笑)。そこだと思います。「頑張らなきゃ」と思ってないし、いい意味で、他の人より激しさを持っているんですね。

そんな人、現実には中々いないと思うけど、それが自分も「そうありたい」という気持ちでみなさんに伝わっているんだと思います。中には仕事はしなきゃと思ってやってる人もいるでしょ? でもそこに「好き」という成分が入ると全然変わってくる。

『科捜研』はみんなそう。イヤイヤやっているというのは“フリ”ですからね、所長(斉藤暁)が「マリコくーん……」って言ってるのも、全部フリですから(笑)! 「頼みますよ~」とか言いつつ、みんな、一番熱中してやってるし、マリコと土門はその先頭を走ってる。それがみなさんの元気の素になっているんだと思います。



取材・文:黒豆直樹 撮影:源賀津己

『科捜研の女-劇場版-』
9月3日(金)より公開

(C)2021「科捜研の女 -劇場版-」製作委員会

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