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『BNA ビー・エヌ・エー』は差別を扱う物語に 『プロメア』に共通する対の立ち位置に注目

リアルサウンド

20/4/9(木) 11:30

 映画『プロメア』が大ヒットし、従来の人気もさながらアニメ制作スタジオとしての名を改めて広く轟かせたTRIGGERの最新アニメ『BNA ビー・エヌ・エー』第1話が、テレビ地上波にて4月8日深夜より放送開始した。

参考:『BNA ビー・エヌ・エー』は世界を見据えた意欲作に 注目を集め続けるTRIGGERの戦略

 TRIGGERと『プロメア』でオリジナリティ溢れる世界観の構築を成した脚本家・中島かずき氏が原作を手掛け、獣の姿を持つ獣人である少女を主人公とし、「私は変わる、世界を変える。」をキャッチコピーに、元は人間だった彼女が獣人になってしまった理由を追い求めていく姿を描く本作。第1話の冒頭では、獣人と人間の共存を謳うポスターに、若者が大きく「死すべし」と落書きをするシーンから始まる。

 タヌキ獣人である主人公・影森みちるは獣人特区のある街・アニマシティへと向かうが、途中で獣人狩りの集団に襲われてしまう。追い詰められたみちるだが、ミンクの姿をした獣人・マリー伊丹に窮地を救われ、無事アニマシティへ入り込むことに成功する。

 辿り着いた場所で暗闇に光る狼の姿と無数の目に怯えるも、その正体は街の建立10周年を祝う祭りに集まってきたアニマシティの獣人たちであることに気づく。みちるは屋台のものを買いながら初めて足を踏み入れた街の賑やかな様子を楽しむが、途中で涙を流し、ただごとではない様子で感極まっている1匹の狼と出会う。

 その後、マリー伊丹と再び出会い、意識を逸らしているうちに財布を盗まれたみちるが犯人を追いかけ向かった先は、巨大モニターの骨組みの中だった。そこに居た怪しい狼の影に気を取られ、犯人を見失った苛立ちで殴った骨組みが突如崩壊し、モニターが倒れ下敷きになるところを感涙していた狼が救出。

 狼はみちるが発見した怪しげな狼を追い、突き止める。敵の狼は他にも仲間がおり、彼らの正体は人間に雇われたテロリストだった。祭りで集まった獣人たちを狙った犯行に狼は激昂、敵を殲滅させようとするも、現場に駆け付けたみちるに制止され踏みとどまる。

 アニマシティは獣人の楽園なのに、どうして獣人同士で戦うのかと問うみちるに、「人間はこの街の敵だ、人間に雇われた獣人も同じことだ」と、人間に対する憎しみをあらわにする狼。「違う! だって、私も人間なの! そう、私は人間。人間だったの」と、みちるは自分の正体を明かす。ここで第1話は終了した。

 獣人と人間という対の立ち位置が存在する物語には、映画『プロメア』における、炎を生むマッドバーニッシュと彼らの炎を消すレスキューの構図を彷彿とさせる。マッドバーニッシュの存在が差別を受けていたように、アニメ『BNA』でも獣人たちは人間から差別や蔑視を受けており、反獣人デモが頻発していることも描かれている。

 肝心なのは、主人公のみちるが実は人間だったという設定だ。これは先述した対の立ち位置、どちらにも属するキャラクターということになる。第1話のラストでは、親友である日渡なずなと楽しそうに会話している様子が回顧シーンとして描かれている。みちるは突然、何らかの理由により獣人化してしまい、その理由を知るためにアニマシティにやって来た。彼女がどうして獣人になってしまったのかは全く予想ができない上、彼女との出会いを果たした狼こと大神士郎というキャラクターも、人間を過剰に嫌う理由などの背景や素性が描かれておらず、今後の展開次第で明らかになっていくだろうと思われる。

 公式サイトによると、2人の間には絆が生まれ、行動を共にしながらアニマシティの住民たちとも出会いを重ね、みちるは今まで知ることのなかった獣人の生き様を知りながら成長し、物語が進んでいくようだ。アクロバティックな作画で人気を誇るTRIGGERだが、第1話のアクションシーンでも遺憾なくその魅力を披露していた。独特な世界観を引っ提げ、ハイクオリティの技術で繰り広げられる物語の始まりに早くも今後の展開が気になってしまう。

 獣人でもあり人間でもあったみちるは、この先どんな世界をアニマシティで目撃することになるのだろうか。また、彼女は本当に「世界を変える」ことができるのか。数々の名作に続き、今シーズンも再びTRIGGERの世界に魅了されることになりそうだ。

■安藤エヌ
日本大学芸術学部文芸学科卒。文芸、音楽、映画など幅広いジャンルで執筆するライター。WEB編集を経て、現在は音楽情報メディアrockin’onなどへの寄稿を行っている。ライターのかたわら、自身での小説創作も手掛ける。

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