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カンファレンス2位は譲れない! プレーオフを見据え、トヨタ自動車とクボタが激突!

ぴあ

21/4/10(土) 12:00

(写真左より)マレ・サウ(トヨタ自動車ヴェルブリッツ)、マイケル・フーパー(同) (c)F.SANO

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最後の『トップリーグ』第7節でシビれるカードがラインナップされている。トヨタ自動車ヴェルブリッツ×クボタスピアーズ。レッドカンファレンス(RC)2位を争う好カードである。

全勝対決ではない。両チームとも6試合を終えて5勝1敗、サントリーに屈している。両軍ともタイトル経験はない。そればかりかトヨタ自動車の最高位は4位、クボタに至っては6位である。それでもこの最終節に注目するラグビーファンは多い。古くからのファンはラストシーズンでの優勝を目指すトヨタ、初のトップ4入り、その先にある日本一も視野に入れるクボタに期待せずにはいられないのだ。それだけ今季の戦いぶりは充実している。

今季のレギュレーションはリーグ戦の戦績に関係なく、プレーオフトーナメントで勝ち続ければ大逆転で覇権に届く。だが、各カンファレンス3位以下は対戦相手が厳しくなる。第6節終了時点の順位に当てはめてみると、準々決勝の相手はRC2位ならばホワイトカンファレンス(WC)3位NTTドコモレッドハリケーンズだが、RC3位だとWC2位神戸製鋼コベルコスティーラーズとなる。「優勝を目指すならば、神戸製鋼にもパナソニック ワイルドナイツにも勝たなければならない」は正論だが、「大一番は準決勝以降でいい」が各チームの隠れた本音だろう。そもそもカンファレンス2位を死守できないようでは、プレーオフが心許ない。第7節の一騎打ちは負けるわけにはいかないのだ。

吉田杏(トヨタ自動車ヴェルブリッツ)(c)F.SANO

トヨタ自動車は4月7日にオンライン取材を実施、サイモン・クロンヘッドコーチ(HC)はクボタをこのように分析した。

「クボタには非常にいいコーチ、非常にいい選手が揃っている。フォワード(FW)が強く、バックス(BK)にも熟練した選手が揃っているので、チームとして脅威を感じる。クボタの試合を見てもゲインラインを切って来るのがすごく強く、ラックスピードも速い」

順位でひとつ上のクボタに対して、どう戦うのか。

「今週の試合はゲインラインでの戦争になると考えている。その戦争で勝つことが重要。クボタとしてはこちらのラックスピードを遅らせるようなプレーが多くしてくると思うので、そこに注意しながらボールキャリーを早くしっかりし、自分たちのアタックの精度を上げていくことと、相手のボールにしっかりとプレッシャーをかけていくことを意識したい」

また、指揮官は開幕戦とともに直近3試合でフル出場、ここ2試合はトライをマークするなど33歳とは思えぬパフォーマンスを発揮しているセンター(CTB)マレ・サウについて、こうコメントした。

「マレ・サウは素晴らしいプレーヤーで、とてもいいスキルを持っている。少し前からトヨタのアタックを調整しているので、そのスタイルが彼に合っているのかな。彼自身チャレンジを好み、自ら立ち向かっていくタイプ。特にボールのハンドリングのスキル、ディフェンスの立ち位置がいい。年齢のことはあるが、日本代表に戻ってもおかしくないプレーヤーだと思う。試合でも非常に頼りになるプレーヤー」

当のマレ・サウは次のように指揮官への信頼感を口にした。

「年齢は数字でしかないと思っているし、常にベストを尽くすことに変わりはない。HCからチャンスを与えられているので、今季もベストを尽くし続けたい」

さらにBK陣への自信を垣間見せた。

「BKの強みは全員。スタートメンバーだけではなく、バックアップの選手、誰が試合に出ても高いパフォーマンスを発揮できるところ」

3年目のフランカー(FL)・NO8吉田杏はクボタ戦の勝敗の鍵を次のように語った。

「まずはチームの中での自分の役割をしっかり実行すること。その中で、自分の強みを生かしてフィジカルやボールを奪うところを粘り強くやることで、チャンスは来ると思う。チャレンジャーとして80分間戦い続けることが勝利につながると思う」

若きFWはニュージーランド代表前主将キアラン・リード、オーストラリア代表現主将マイケル・フーパーから多くを学んできた。

「開幕戦は出られず、自分に何が足りないか考え続けた。リード、フーパーに影響を受けて練習してきた。(フーパーの)ボールを奪い取るスキル、集中力、タックルテクニックが勉強になる。ヒットする時の足の運び方やハートの面の持って行き方を参考にしている。ここ数試合でジャッカルできているが、それは練習の成果が出ているのだと思う」

円陣を組む立川理道らクボタスピアーズのメンバー(c)クボタスピアーズ

一方、クボタも4月9日にオンライン取材の場を設けた。フラン・ルディケHCはトヨタ戦へ向けて抱負を語った。

「先週戦ったサントリーも今週戦うトヨタも我々クボタもいいチームだ。トヨタはいいHC、いい選手が揃っている。まずはセットピースをクオリティ高くして、自分たちのアタックへ持っていきたい。ブレイクダウンでは先週課題が見えたので、正確性と精度を高めていかないといけない」

プレーオフを睨む意味でも重要な戦いになるが、指揮官は否定した。

「まずはトヨタ戦にしっかりプランを持って臨むこと、目の前の試合にしっかりフォーカスしたい。WCのことは全く考えていない」

立川理道主将はトヨタ自動車の変化を次のように感じていた。

「今年はFWだけにこだわらず、ボールも動かしている。9・10・15番のところでボールを動かすいいラグビーをしている」

トヨタのキーマンを問われると、主将はこう返答した。

「アタックのキーマンのひとりが(ウィリー・)ルルーなので、しっかり止めていきたい。彼にスペースを与えるといいアタックをしてくるのでスペースを埋めたい。それと(ライオネル・)クロニエの右足とルルーの左足にもしっかりプレッシャーをかけていきたい」

ではクボタとしては、トヨタにどう対峙するのか。

「FWのセットピースのところで優位に立てれば、色んなことができる。サントリー戦の課題を解消すればしっかり勝てると思う。(サントリー戦)前半のペナルティだったり、オフサイドの部分はこの1週間かなり意識して準備してきた」

また、オンライン取材にはルーキーながらFBとして6試合フル出場している金秀隆も登場。

「トップリーグのレベルの高さを痛感している部分と自分でも通用する部分、両方ある。同級生は化け物ばっかり。人よりも練習するのが自分のモットー。FBに必要なスキルを先輩に聞いて練習してきた。(関東大学リーグ戦)2部でもやれるというのを証明できたらうれしい。2部にもいい選手はいっぱいいるので」と台頭の要因を明かした。

ともに5勝1敗、総勝点も同じ26ポイント。クボタが212得点105失点の得失点差107に対し、トヨタは263得点162失点の得失点差101。わずか得失点差6点差で2位・クボタ、3位トヨタとなっている。それではここまでの戦いぶりを振り返ってみたい。

【第1節】
トヨタ自動車34-33東芝
クボタ43-17宗像サニックス
【第2節】
NTTコム29-47トヨタ自動車
東芝7-39クボタ
【第3節】
トヨタ自動車45-3Honda
クボタ34-24NTTコム
【第4節】
宗像サニックス29-61トヨタ自動車
クボタ38-7Honda
【第5節】
トヨタ自動車36-39サントリー
クボタ32-17三菱重工
【第6節】
三菱重工29-40トヨタ自動車
サントリー33-26クボタ

トヨタが開幕戦で東芝の猛追を受け辛勝したのに対して、クボタは第2節で東芝を相手に何もさせなかった。RC1位サントリーとの対決でも、両チームとも好ゲームを繰り広げた。トヨタは第5節でサントリーを相手に試合の大半をリードする形で進めながら、終盤に同点、後半41分にSOボーデン・バレットのサヨナラPGで勝利を逃した。クボタは前節、前半31分のフォーリーのシンビン(10分間の一時退場)からペースを奪われ23-7で前半にリードを許すも、後半に入り巻き返し、後半30分にはついに同点に追い付いた。だが、後半39分にSOからFBへ回ったバレットに逆転トライを決められたのだった。トヨタもクボタも最多優勝5回を誇るサントリーを苦しめながら、オールブラックスのスーパースターの個人技にやられたのだ。

『トップリーグ』での直接対決対戦成績を振り返ってみると、トヨタが8勝2敗と大きく勝ち越す。ただ、毎回ワンサイドゲームというわけではない。昨年の好ゲームの記憶が新しいファンも多いことだろう。

両軍は昨年2月、雨のパロマ瑞穂ラグビー場で対峙。FWで優位に立つクボタがペナルティを誘い、前半20分に先制トライかと思いきや、TMO判定にてノートライに。トヨタもトライ寸前でのハンドリングエラーでチャンスを潰す。そんな中トヨタが主導権を握る。前半33分にFL姫野和樹が中央突破で先制トライを奪うと、後半4分にはクロニエの絶妙なノールックキックパスからトライ、コンバージョンも決めてトヨタが14-3とリード。その後、スクラムでリズムをつかんだクボタは後半38分にスクラムからトライへつなぎ、コンバージョンも成功して17-18と逆転する。このままノーサイドと思われたが、ドラマは最後に訪れた。42分、相手陣でPR吉田康平がジャッカル。ペナルティを奪い、クロニエが逆転PGを決めて20-18で熱戦にピリオドを打ったのだった。

勝った姫野主将(当時)が「トヨタのプライドを取り戻すことができた。自分たちのラグビーを見せ、自信を取り戻すことができた。これをスタンダードにして、さらに修正していきたい」と自信を深めれば、敗れた立川主将も「悔しい結果に終わったが、切り替えてしっかり準備する。これまでが間違っていないと信じていい方向へ向かっていきたい」と手応えを口にした。

キックオフ48時間前に発表される試合登録メンバーは以下の通り。
【トヨタ自動車】
1三浦昌悟、2彦坂圭克、3崔凌也、4秋山大地、5マイケル・アラダイス、6フェツアニ ラウタイミ、7古川聖人、8キアラン・リード、9茂野海人、10ライオネル・クロニエ、11ヘンリー ジェイミー、12マレ・サウ、13ロブ・トンプソン、14高橋汰地、15ウィリー・ルルー、16加藤竜聖、17吉田康平、18伊尾木洋斗、19吉田杏、20マイケル・フーパー、21滑川剛人、22岡田優輝、23チャーリー・ローレンス
【クボタ】
1海士広大、2マルコム・マークス、3山本剣士、4デーヴィッド・ブルブリング、5ルアン・ボタ、6トゥパ フィナウ、7ピーター・ラピース・ラブスカフニ、8末永健雄、9井上大介、10バーナード・フォーリー、11山崎洋之、12立川理道、13テアウパ シオネ、14ゲラード・ファンデンヒーファー、15金秀隆、16杉本博昭、17羅官榮、18北川賢吾、19青木祐樹、20土谷深浩、21岡田一平、22岸岡智樹、23ライアン・クロッティ

トヨタのFW第3列には1か月ぶりにリードが帰って来た。代わりにフーパーがリザーブへ回り、後半途中からチームにインパクトを与える。対するクボタはケガのバツベイ シオネに代わり、NO8に178cmの末永を配置した。ルディケHCは「今週は攻守にスピードが必要なので、彼をスタメンで起用した」と期待を寄せた。

果たしてトヨタが4強の座を死守するのか、それともクボタが2008-2009季以来となる勝利とともにトップ4の地位も奪取するのか。『トップリーグ2021』RC第7節・トヨタ自動車ヴェルブリッツ×クボタスピアーズは4月11日(日)・東大阪市花園ラグビー場にてキックオフ。チケットは予定枚数終了。試合の模様は当日深夜に日テレにて録画放送。

取材・文:碧山緒里摩(ぴあ)

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