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『ハイキュー!!』影山飛雄、本物の“コート上の王様”になるまでーー天才の挫折と仲間との出会い

リアルサウンド

20/5/30(土) 9:00

 バレーボールに青春をかける高校生たちを描く『ハイキュー!!』。今回、ピックアップするのは現在、最終章でVリーガー、そして日本代表として活躍する影山飛雄だ。主人公・日向翔陽の「相棒」であり、天才とも称された影山飛雄のルーツを改めて辿ってみる。

 烏野高校バレー部に所属していた影山のポジションはセッター。中学のころから高い技術と才能を持っており、バレーへの情熱も日向に負けない。そんな影山の異名は「コート上の王様」だった。

中学での出来事、高校での出会いが影山を変えていく

 有り余る才能、それに胡坐をかくことなく、努力を重ねていた影山。しかし、中学最後の県大会では独善的なプレーが原因でチームメイトからそっぽをむかれてしまう。トスを上げた先に誰もいないーーそれは影山のトラウマとなる。

 烏野高校に進学し、日向と運命的な再会を果たした影山はだったが、当初のプレーは中学のころと変わらないまま。

「レシーブもトスもスパイクも全部ひとりでやれればいいのにって思います」
「(セッターは)支配者っぽくて1番かっこいいだろうが!!」

 「コート上の王様」と呼ばれるにはぴったりすぎるセリフだ。影山はトラウマを後々まで引きずることになるが、克服のきっかけは1巻ですでにある。後に、“変人速攻”として恐れられることになるプレーだ。

 日向が飛ぶところにトスを上げる。日向はボールが来ると信じてスパイクを打つ。最初、まだ信頼関係も築けていないときだというのに、日向はボールが来ると信じて飛び、影山は日向がそこに「居る」ことがわかっていてトスを上げる。ひとつのボールが日向と影山を繋いだ。当初は影山も自覚をしていなかったが、日向が「居る」ことこそが、克服のきっかけとなったのだ。

影山に影響を与えた2人の先輩セッター

及川徹とのセッター対決が描かれた6巻〜7巻では、菅原も活躍する

 中学時代の先輩である及川徹は、影山に大きな影響を与えた人物のひとりだ。サーブとブロックは及川を見て覚えた、と影山が言うように、及川はセッターとしてのセンスが抜群でありながら、さらに全てのプレーが一流という万能型の選手である。

 「俺は一生及川さんに勝てないのかもしれない」「今んトコ及川さんより怖いモン無いんで」と言うセリフからもわかるように、影山の中ではあまりにも大きい存在だ。

 そしてもうひとりが、影山が入学するまでは烏野の正セッターだった3年生・菅原孝支。入部直後の3対3のプレーでは影山は日向に「俺がトスを上げたところに飛べ」と指示。そんな影山に、それでは中学のときと同じだ、と言って諭したのが菅原だった。

「周りを見るすぐれた目を持ってるお前に仲間のことが見えないはずがない」

 同じセッターだからこそ、影山の能力の高さに気がついていた菅原。勝つためには影山と日向の力が必要だと悟った菅原は、早い段階から影山に精神面で多くのアドバイスをしている。影山にバレーの強さを教えたのが及川なのだとしたら、チームで戦うことの意味を教えたのは菅原だろう。

 影山は、春高の試合が終わったあとにこう言葉を漏らす。

「このチームでもっと上へ行きたかったです」

 もっと勝ちたかった、コートに立っていたかった。その上で、ひとりで勝つんじゃなくて、チームで勝ちたかった。そんな気持ちを影山が持つようになったのは、選手としてだけではなく、人間としてもとても大きな成長だったように思う。

そして、最強の「コート上の王様」へ

 チームで戦うことを学び、スパイカーが打ちやすいトスを上げることに徹するようになった影山は、どんなときでもできるだけスパイカーの要望に応えようとする。

 しかし、高校No1セッターとも言われていた宮侑に言われた「プレーがおりこうさん」という言葉に引っ掛かりを覚えた影山。ユース合宿から戻ってくると、思うようにプレーが決まらないことに苛立ちを隠せなくなっていた。影山は、無意識のうちに本来の自分のプレースタイルを抑え込み「おりこうさん」になっていたのだ。

 前述の菅原のセリフや、烏養コーチが言った「最高のトスを上げることはコミュニケーションで探っていくもの、でもケンカをするなというわけではない」というセリフは、そこでさらに深い意味を持つ。

 影山は、周囲の言葉と自分のトスに応えてくれるチームメイトによって、スパイカーの要求に応えるだけが、セッターの役割ではないことに気がつき、封印していた「王様気質」を取り戻した。

 「おりこうさん」と言った宮侑擁する稲荷崎高校との春高2回戦。「一時、俺に上げる本数を減らしてくれ」というスパイカー田中に対し、影山は「いいえ」と断る。「田中さんの攻撃が必要です」。ユース合宿以前の影山だったら、田中の要望に応えただろう。しかし、チームで勝つための選択として、影山ははっきりと断った。そして、田中は影山の脅迫(と書いて「しんらい」というルビが振られている)に応える。

 ユース合宿から戻ってきて、烏野のチームメイトとぶつかった第224話のタイトルは「返還」。そして、この田中へのセッティングがあった第285話のタイトルは「静かなる王の誕生」だ。


 「コート上の王様」と言われていたころ、影山はそれを侮辱と受け取っていた。しかし、初めての春高で、影山は誇りと仲間を手にした最強の王となった。今は日本が世界に誇るセッターへと成長しているが、それらは全て烏野時代に培ったセッターとしてのスタイルがあったからなのだ。

文=ふくだりょうこ(@pukuryo

■書籍情報
『ハイキュー!!』(ジャンプ・コミックス)既刊43巻
著者:古舘春一
出版社:株式会社 集英社
https://www.shonenjump.com/j/rensai/haikyu.html

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