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乃木坂46 4期生は歴史を背負って新たな未来を紡ぐ 16人体制で初めて臨んだ配信ワンマンを振り返る

リアルサウンド

20/12/9(水) 18:00

 乃木坂46の『4期生ライブ 2020』が12月6日、オンライン配信で行なわれた。2018年11月に先んじてグループへの配属が発表された11名と、「坂道研修生」を経て今年2月に加入した5名、乃木坂46の4期生として16人でワンマンライブを行なうのは初めてのことになる。

 それだけに今回のライブでは、何よりまず4期メンバーを一つのまとまりとして提示できたことの意義が大きい。そしてまた、この日の4期生ライブに特徴的なのは、すでに長い歳月を歩んできた乃木坂46の歴史の継承と、彼女たちだからこそ創りうる新しい型の予感との双方が、二重に浮かび上がったことだ。

 先人たちの歩みを受け継ぐ志向はまず、ライブ序盤で明確にあらわされた。「君の名は希望」「命は美しい」「インフルエンサー」と、グループの代表的なイメージを担ってきたシングル表題曲からセットリストが始まるとともに、メンバーたちの背景にはそれらシングルジャケットのビジュアルが掲げられる。2010年代前半、中盤、後半の各時期を象徴する楽曲のアートワークを背負って4期メンバーたちがパフォーマンスすることで、彼女たちがグループの軌跡の最先端に位置する者たちであることが視覚的にもはっきり示される。

 もちろん、4期メンバーはその蓄積の先に新たな歴史を作っていく当事者でもある。序盤ブロックを締めくくる「夜明けまで強がらなくてもいい」は、そのことを雄弁に物語る。遠藤さくらがセンターを務め、4期生がグループ本体に合流する契機となった同シングルが、あらためて4期生たちによって表現されると、先達への敬意以上に4期メンバーたち自身の現在形を届ける場としての『4期生ライブ 2020』の意義が明らかになる。

 「ありがちな恋愛」や、3期生楽曲「僕の衝動」などが披露される次のブロックでも、シングル表題曲とは異なる側面から、先輩メンバーの影を追いつつ作品を再解釈してゆく。一方で、このブロックを挟んで行なわれたMCでは、乃木坂46という名を背負うことの重さをにじませつつも、すでにトークの回し方において4期メンバー独自の空気やテンポが形成されていた。この時間はまた、先行して加入した11人と今年配属された5人とが、すでに一体となったユニットとしての統一感を持っていることをうかがわせるものでもあった。

 ユニット楽曲を固めた後半ブロックは、とりわけ特定の先輩メンバーのイメージが強い作品が並ぶ。柴田柚菜と弓木奈於がボーカル、掛橋沙耶香と筒井あやめがギターに入った「渋谷ブルース」や、林瑠奈が中元日芽香のソロ楽曲をカバーした「自分のこと」など、それぞれのカラーを発揮しながら、先輩メンバーたちの歩みを振り返る趣を見せていく。あらためて、多様な物語を紡いできた乃木坂46のアーカイブが、貴重な財産であることを思わせた。

 他方で、特にこうしたユニット曲は、オリジナル時のメンバーが乃木坂46から卒業している作品も少なくない。いわば、現在のグループ内にすでに基本となるモデルケースが存在しない楽曲が多くなり、今後もそれは増えていく。だからこそ、この先を担うメンバーたちが既存楽曲のイメージを更新し、自らの作品として位置づけ直す契機でもある。

 たとえば、ユニットブロックの冒頭を飾った賀喜遥香と金川紗耶による「孤独兄弟」は、テレビ番組『ノギザカスキッツ』を踏まえた趣向として展開されたが、それ以上に重要なのは、同曲発表時には組織に所属していなかった人物たちが、先人の名残をかすかに匂わせながらも、作品をあくまで自らのカラーに作り変えていくことの方である。芸能が歴史を背負いながら継続していくとは、おそらくそのようなことだ。

 そうした既存作品の再構築をことに強く感じさせたのは、遠藤さくらと早川聖来による「心のモノローグ」だった。4期活動初期からの顔として立ち回ってきた遠藤と、2019年春の『3人のプリンシパル』以降、ステージ上で際立った表現力を見せ続ける早川によるデュオは、すでにしてグループの未来形をうかがわせ、オリジナルとは異なる色を描いてみせた。今後も乃木坂46のライブを支えていくであろうメンバーたちの、頼もしいパフォーマンスだった。

 歴史として優れたアーカイブを持つことと、それらが時代ごとに現在形のパフォーマー自身の作品として表現されること。その両輪の重要さを幾度も感じさせたのが、今回のライブだった。もちろん、より充実した形でそれを実感させてくれるのは、未来の彼女たちなのだろう。

 継承と現在とを見せるライブだからこそ、他ならぬ「今」の4期生自身が主役となる楽曲群でライブ終盤を飾る構成も意義深くなる。特に、今年発表された乃木坂46楽曲の内でも指折りの存在感を誇る「I see…」は、クライマックスを盛り上げるに相応しい。エンターテインメント全般が、コンテンツの発信方法や活動意義そのものを根本から問い直された2020年、キャリア最初期を歩む人々にとっては特有の困難があったはずだ。このタイミングで、彼女たちの背中を押す最大級のアンセムが生まれたことは僥倖であった。

 そして、アンコールで披露された16人での新曲「Out of the blue」は、4期メンバーの次なる代表作を予感させた。確かなパフォーマンス力で同期を牽引する早川聖来のセンター選出も、4期メンバーの表現に新たな幅の広さをもたらすだろう。紡がれてきた歴史を確かめながら、現在そして未来を描く4期生ライブは、「継承」の意味を強く提示する公演だった。

■香月孝史(Twitter
ライター。『宝塚イズム』などで執筆。著書に『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』(青弓社ライブラリー)がある。

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