桃尻犬『ゴールドマックス、ハカナ町』
20/2/1(土)
劇団「桃尻犬」の主宰であり、全作品で作・演出を務める野田慈伸さんを最初に知ったのは、おそらく「桃尻犬」の舞台ではなく、どちらかの劇団に役者として出演されていた時だと思う。その後、様々な舞台で彼を観るようになり、やがて「桃尻犬」も拝見することとなるのだが、どの舞台においても、役者としての彼は〈座りが良く〉、どんな役を演じても軸がぶれなかった。と書くと、どの舞台でも同じ演技という風に誤解を招く可能性があるかもしれないが、そうではない。その時、その時の役を的確に自分のものとし、観客に「その役のベストと思う佇まいを、極めて自然な演技で届ける」、すなわち、あくまでもしなやかに揺れながら、それでいて常に演技の軸がぶれないのである。出演した舞台を拝見した後には、「なるほど、彼にいろいろな劇団から出演のオファーが掛かる理由がわかるなあ」と、いつも感嘆の声を上げていた。
その彼が作・演出を手掛ける「桃尻犬」の前回公演『山兄妹の夢』(2019年6月/シアター711)が素晴らしかった。もともとセリフの切れ味は随所に鋭いものを持ち、舞台上に叩きつけるアイデアも興奮を覚えることが多かったが、演出的に少し散漫になることがあり、映画の世界の言葉を借りると「編集の弱さ」を感じることがあった。それが『山兄妹の夢』ではすべて払拭され、全く隙を見せることのない舞台が展開され、元来強みであったセリフの切れ味が、テンポの良い演出によって、更に躍動していく様を、心から楽しんだ。
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「ゴキブリも住む町。」
ハカナ町にあるパチンコ店、ラスベガス。
この店にはハカナ町のあらゆる人間たちが集まってくる。
ハカナ町には何もない。
コンビニもない。ゲームセンターもない。
畑と田んぼと、松田さんちのスーパーまっちゃんがあるだけ。
しかしここにはラスベガスがある!
みんなが集まるラスベガスがある!
今日も朝の10時から新台目当てに、みんなで並ぼう!
なんて毎日は楽しいんだ!
パチンコ屋しかない町に生まれたり、住んでる人たちのお話です。
多分どこかに旅に出ると思います。野田慈伸
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チラシの裏面に記された文面に期待を高めつつ、今回もその切れ味を、堪能したい。
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