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観劇納めにも、観劇初めにも!梅棒『風桶』上演中

ぴあ

梅棒 13th “RE”WORK『風桶』より (c)飯野高拓

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梅棒 13th “RE”WORK『風桶(かぜおけ)』が、12月17日に東京・本多劇場で開幕した。それに先駆け行われた公開ゲネプロ(リハーサル)のレポートをお届けする。

本作は、台詞を使わずにダンス×芝居×J-POPの融合でストーリーを見せるダンスエンターテインメント集団「梅棒」の第13回公演。2016年1月に東京・吉祥寺シアターで上演した作品の約6年ぶりの再演となり、今回は乃木坂46卒業後初の舞台出演となる渡辺みり愛、松浦司らを客演に迎え、現在の「梅棒」がつくる『風桶』を届ける。作・総合演出は伊藤今人〈梅棒〉、振付・監修は梅棒。

舞台は、梅澤裕介〈梅棒〉演じる未来の科学者・吉田テスタロッサの一人語りから始まった(梅棒の公演は台詞を使わないが、ベースとなる設定はここで話してもらえる)。どうやら彼は行方不明となった兄を探すためのタイムスリップをしている最中らしい。その途中で「どうせなら」と立ち寄ったのが現代。ここからさらに300年前の江戸時代に移動するのだが、その際に3人組バンド「夜桜前線」を巻き込んでしまい――。(あらすじは公式HPより)

そして繰り広げられる「梅棒」ワールド。辿り着いた江戸時代で、吉田テスタロッサや「夜桜前線」メンバーが出会うのは、ちょっと情けない傘売りや見習いの芸者をはじめとする個性豊かな江戸の民たち。いやしかし、その民たちを演じるキャストのほうが個性的とも言える。渡辺みり愛、松浦司をはじめ、グランドミュージカルからストレートプレイまで幅広い舞台作品で活躍するまりゑ、YouTubeの総再生回数が1億回を突破したバレリーナ芸人・松浦景子〈吉本新喜劇/吉本坂46〉、梅棒公演ではお馴染みのYOU、正安寺悠造〈寺ノ子屋〉、ひこひこ(梅棒・鶴野輝一とWキャスト。ひこひこの出演は12月24日から26日のみ)、高橋洋子の「残酷な天使のテーゼ」や「魂のルフラン」を振付しワールドツアーダンサーとして各国へ同行、シンガー・コレオグラファーとしても活躍中の長谷川敬タ、嵐などアーティストの振付師としても活躍するeat〈プレイルーム/69凛〉、数々のダンスコンテストを制すダンサーNaoki〈ricord〉、Juste Debout FINALベスト4など世界的に活躍するフィメールLOCKダンサーhirokoboogieという面々が、梅棒と共に、カラフルで賑やかでわちゃわちゃな世界をつくりあげる。

物語は、吉田テスタロッサや「夜桜前線」メンバーと江戸の民が仲を深めていく一方で、弟の気配を察知した兄が江戸の荒くれ者たちと結託してよからぬ策略を巡らすという展開で、果たして兄弟の運命は!?江戸の世はどうなるのか!?「夜桜前線」は現代に戻って来れるのか!?というもの。改めて書くが、梅棒の作品には台詞がない。J-POPだって当然この作品のための楽曲ではないので内容のすべてを説明できるわけではない。なのにこの、そこそこ複雑なあらすじをきっちり描くだけでなく、その中のエピソードとして大小さまざまなものを描き、時には脱線までする。そしてそういうエピソードの積み重ねによって登場人物たちは悪役含め愛さずにいられない人ばかりになる。

そこに加え、高いスキルを持つ客演それぞれの見せ場も“いかにも”とはならないように丁寧に組み込まれ、観客に驚きや楽しさをもたらす。こういう梅棒の表現は、作品を重ねるごとに、そして梅棒の活躍の場が広がるごとに、研ぎ澄まされ、より独特になっているように思う。つまりここでしか観られないものがどんどん増えていく。

野田裕貴〈梅棒〉は豊かな表現力で物語を引っ張り、渡辺は思い切りのいい芝居で笑いを生む。松浦司がまりゑと繰り広げるシーンは客席を大いに沸かせ、Naokiと松浦景子が共に躍るシーンは鮮やか。遠山晶司〈梅棒〉のタフガイぶりも、多和田任益〈梅棒〉のオラオラぶりも楽しく、“塩野拓矢〈梅棒〉劇場”もある。出演者から引き出せるものを徹底的に引き出し、生き生きと輝かせながら、笑わせたり、驚かせたり、キュンとさせたり、グッとこさせてくれる。ダンスに馴染みのない人にも、演劇に馴染みのない人にもオススメできる世界だ。

上演時間は約1時間50分。『風桶』は12月30 日(木)まで本多劇場にて上演後、1月7日(金)から大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール、愛知・名古屋市芸術創造センターを巡演。

【伊藤今人、野田裕貴、渡辺みり愛からのコメント全文】

◎伊藤 今人〈梅棒〉
演劇を志すものにとって「本多劇場」がどういう場所か。我々がこの聖地にふさわしいと考えた作品がこの『風桶』でした。梅棒は表現集団としては変わり種ですが、それでも大事にしている根幹は演劇であると自負しています。初演時の座組に改めて感謝をしつつ、6年の時を経て新たな座組でグレードアップを施しました。梅棒らしさはそのままに、この作品だからこそ感じられる”演劇”が詰まった自信作です。ぜひ劇場でご覧ください。

◎野田裕貴〈梅棒〉

『風桶』は梅棒としては珍しい、タイムトラベル×時代劇というアツさ満開の作品です。約 6 年ぶりとなる今回の再演『風桶』では「今の梅棒らしさ」をめいっぱい盛り込んでお届けします!素晴らしいスキルを持ったゲストの皆さんが集まって下さり、とにかく見どころだらけ!且つお話も疾風の如く駆け抜けるような作品になっていると思います。そして何より、凄く久しぶりに梅棒の作品をお届けできることが嬉しくてたまりません。皆さまに劇場でお会いできることを心より願っております。

◎渡辺 みり愛

『風桶』に出演させていただくと決まってから初演の映像を見させていただいていたのですが、好きすぎて本気で 10 回は見た気がします。それくらい梅棒さんが作り上げている作品、『風桶』という作品に引き込まれて感動している自分がいました。今度は私が皆様にその感動をお伝えする番です。1 回だけでは伝わらない良さ、何回も見てやっと繋がる部分だったり…そんな『風桶』という作品の良さを沢山の方に知っていただきたいなと思っています!乃木坂 46 を卒業して初めての舞台、そしてお客様にも久しぶりにお会いする機会。全力でパワーアップした姿をお見せしたいと思います!

取材・文:中川實穗 撮影:飯野高拓

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