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騙されずとも、9.9は黙ってオドれ【キキミミ #5 ODD Foot Works】

ぴあ

ODD Foot Works 撮影:池野詩織

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私、庄村聡泰(ex- [Alexandros])によるインタビューと池野詩織による写真で、唯一無二なアーティストが真に伝えたい言葉、魅せたい姿を追求するインタビューシリーズ『キキミミ』。5回目の今回は筆者が兼ねてからファンである事を公言しているODD Foot Worksが登場してくれました。嬉しみ…(泣)。そして今回スタイリングもやらせて頂きまして、真夏のファーコートを快諾してくれた皆様への感謝も深みです(笑)。

来る9月9日のUSEN STUDIO COAST(※5月3日の振替公演)には勢喜遊 (King Gnu)とYohji Igarashiらお馴染みのサポートメンバーに加え、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)とAAAMYYYがゲストボーカルとして出演決定。更なる高みを目指す3人に、キキミミ立てて参ります!

ODD Foot Works

左からTondenhey (guitar)、Pecori (rap)、SunBalkan (bass)

――自分とODD Foot Worksとの出会いはよく行ってるお店でかかってたラジオでした。“何だこのカッコいいヤツらは!?”となって、そしたらその日に下北沢GARAGEでワンマンだっていうもんだから、行かねば!と。聞き逃さないようにスピーカーにがぶり寄りながら必死でアーティスト名メモりました。

全員 (笑)。

――で、検索したらチケットは既に売り切れで。でもそこで何度か[Alexandros]のインタビューもして下さった事のある三宅(正一)さんがマネージャーやられてるという事を知りまして、“めっちゃカッコいいですね!”とご連絡したところ、“良かったら遊びおいで!”と言って下さって、知ったその日にライブも観れるという、ミラクルな出会いでした。それから事あるごとにワンマン観に行かせていただいていて、fanamo'さんが脱退されて新体制で臨まれた昨年末のリキッドルーム公演はもう、とんでもない化け方で!

Pecori 久し振りにその名前聞きました(笑)。

――ステージネーム呼びなわけないですものね(笑)。サポートに勢喜遊さん(King Gnu)、Yohji Igarashiさんを加えた布陣で観たのが初めてで。やっぱ色々、変わりました?

Pecori  ライブはやっぱ生ドラムの方が良いよねって思いがあって、それまでも色々なドラマーと試してたんですよ。2018年からだっかな?初めては(澤村)一平くん(SANABAGUN)で、大井一彌くん(DATS / yahyel)ともやったり、SNSで良いドラマーいねえかって募集かけて動画送って貰って、その中で感触良かった人とはスタジオ入ってみたりもして。一平くんと一彌くんのツインドラムの時もあったし。そんな中で2019年にKing Gnu井口くんの実家遊び行った時にたまたまいた遊くんと出会って、“サポートとかやってみたいんだよね”みたいな事をさらっと言ってくれて。そん時はまだオドフット聴いた事なかったらしいんですけど(笑)。でもこっちとしては“言ったからには一回やって貰いたいね”ってなって、スタジオ入ったんですよ。俺は他の2人と比べると楽器に対するリテラシーは低いんですが、それでもラッパーとして今までのドラマー1人1人の違いは肌感覚で分かるところもあって。しかも俺等はトラックも独特だし音数も曲によってかなり差があるから難しいんですよ。でも遊くんはその辺もマッチさせてきて凄いなと思いました。そこからまあ、固定ってわけではないんですけど。

Pecori (rap)

――ファーストコールドラマー的な?

Pecori メンバーと言っても過言ではないですね。ODD Foot Worksのセキユウです(笑)。

ウチは緩くて自由(SunBalkan)

――(苦笑)。でもKing Gnuの時とはまた違った側面が見て取れるというか、オドのライブではセッションドラマーとしての魅力がもう爆発してて、ステージ上の全員が全員、めちゃくちゃ楽しんでる感じが伝わります。

Pecori 楽しんでくれてる感は俺等にも伝わりますね。

SunBalkan King Gnuは明確なヴィジョンに対して突き詰めて行く様なスタイルだと思うんですが、ウチは緩くて自由だから、その対比を楽しんでくれてるのかなっていうのは思いますね。

Tondenhey 曲作りの時に16分音符と3連符の交わりを意識してたりするんですけど、そういう外し方が面白いのかなと。8分の6と16分の1と8分の1が混在してる原曲のビートのどこを強調するかって言うのが、ライブでは生ドラムである彼に選択権があるので、ドラマーにとっては余白がある音楽というか。

SunBalkan 音源だと基本打ち込みなのでドラムで曲中のストーリーを作るって事があんまないからこそ、ライブではドラマーが自在に作って行けるって自由度はありますよね。

――現体制の5人が集まって音出した時の気持ち良さも共通項としてあったんですか?

Tondenhey 遊くんのフィルはフレーズが長くて拍を跨いで行くんですけど、それに感動しちゃって。ライブでもPecoriのフロウに合わせて拍ごと跨いで行く感じが凄いなと思って。結局自分はグリッドに沿った人間だからそこをガンガン外れて行く感じが気持ちよかったんですよね。

SunBalkan 空間の作り方が異常ですね。そもそもの技術も高いし、余裕がありますよね。これで行くっしょ!っていう自信がフレーズにも現れてるというか。大井さんはビートミュージック寄りで、ドラムンベースとかも好きな方だから硬めで細かい16の感じがあって、一平さんはもっちりとしてて、ビートさとし(skillkills)さんにサポートで入ってもらったことも一回あるんですけど、その時は遊くんがどうしても来れない時で、でもその割に遊くんは他のドラマーに叩いて欲しくないオーラを出すんですよ(笑)。

Pecori そうなんだ…ってちょっと拗ねる(笑)

SunBalkan 俺の方が良いと思うけどねとか言う(笑)。でもどうしようもない時だったからオススメのドラマーを聞いたんですよ。

Tondenhey そしたら遊くんの師匠が来るという(笑)。

SunBalkan さとしさんも…ヤバいっすね。そろそろもうワンさとしさん欲しいですね(笑)。

――(ビートさとしが所属する)skillkillsヤバいですよね。同じベーシストとしてもスグルさんもヤバいですか?

SunBalkan むっちゃくちゃヤバいですよ(笑)。見た目も怖いし声も低いし、でも喋ってみたらめっちゃ優しい先輩で。さとしさんはソロ名義でのライブ観てるんですけど、さとしさんもめっちゃ良い人なのにステージ上がるともうとんでもないライブをする方ですね。

――1人の演奏家としての勢喜遊を観るならオドのライブに行け!と思いました。

一同 (苦笑)。

――本人と話した時に"オドはね、俺がいないと最高じゃないんですよ"って言ってましたもん。

一同 (苦笑)。

ちゃんと頭でコントロールしながら言葉を届けたい(Pecori)

――初めて観たガレージではトラックが打ち込みなのにも関わらず、こんなに弾きまくるギターと隙あらばポキポキやっちゃうベースと…何観たら良いのか混乱しちゃって。

SunBalkan スラップの事“ポキポキ”て(笑)。

――今も相変わらず弾きまくりだしドラムも叩きまくりだしヨウジくんに至ってはププププウ〜(エアーホーン)やり過ぎなんですが、

一同 (爆笑)。

――でも、こんなに騒々しい調和の形があるんだなんてと思わされるくらい、現体制は本当にお互いがグルーヴ出来るメンツなんだなと思います。個人的には“騙されたと思ってライブ観て欲しい日本代表”です。

SunBalkan 嬉しいっす。

SunBalkan (bass)

――ライブアレンジの主導権はどなたが?

SunBalkan トラックの整理も含めて、基本は俺ですね。でもこの体制だからこその難しさもめちゃくちゃあって、トラックが出過ぎるとギターベースを生で弾く意味合いがぼやけるし、トラックだと音域や音程の幅も広いので、共存が難しい所もあるんですよね。

Tondenhey 9月9日のライブへ向けてトラックを削ってみるっていう。

Pecori 最近はより大胆に引き算をする方向で試してますね。つい最近Tondenheyの同居人で一緒にユニット(Zatta)もやってるタイシ(サトウタイシ)ってヤツもMPC担当で参加してくれる事になって。一層生バンド的なやり方に意識が向いてます。

SunBalkan いざそうやってみると自分達がいかにトラックに頼ってたのかっていうのも分かったし。

Tondenhey ライブでビートだけ鳴っててギターソロやるみたいな瞬間があって、引き算に熱中するあまり気付かなかったんですけど、心折れそうになりました(笑)。

Pecori 前はサブボーカルやメインも流しつつ生でラップしてみたいな形が当たり前だったんですけど、トラックからそれを全部抜いたので、今は曲中ちょっと一休みしたらもうどこ歌って良いのか分からなくなる(笑)。でもそれは今後いかにフィジカル的にラップしてかなきゃいけないかっていう挑戦というか、やりたくてやってるんで。

――そもそもオドのボーカルラインって歌ってラップしてパフォーマンスして、1人の人間が背負い切るには余りにも酷じゃないですか。にも関わらず、更なるカルマを背負うって事ですよね…?

全員 (爆笑)。

――俺からすればそれって2MCじゃないと捌けない情報量だと思うんですよ。なのに…。

Pecori 詰め込んだラップした後に盛り上がるフックが来るっていう流れの時に、そこで一息つきたいけどフックの頭は絶対歌わなきゃいけないから、じゃあラップのケツを抜き気味に…みたいな事をやってたんですけど、やっぱ全部歌い切ったらカッコいいよなと。で全部やってみたらもう、頭がバグりましたね(笑)。でも全部歌える様になりてえなって思ってます。出来ない事を出来る様になりたい願望が強いかもしれないです。

――肉体面と精神面、どっちを強化すれば効くんですかね?

Pecori フィジカルは特に何もやってないんですけど、Pecoriが2人いるというか。ライブ中は片方がカルマっていうバックパック背負ってパフォーマンスしてるんですよ。もう片方はそれを見守りつつ、応援もしつつ、でもそっちは主体でありながら物事を俯瞰的にも見てる。で、本当のオリジナルは後者のPecoriっていう感覚があるんですよね。でも最近は俯瞰側のPecoriがパフォーマンスしてる方のPecoriはもっとやれるんじゃねえかと思い始めて、ボイトレとかやってみたいなとも思ってるんです。

――自分の中にボクサーとセコンドがいる状態なんですね。

Pecori こないだのライブとかセコンドの俺はタオル投げまくってたんですけどパフォーマンスの俺が聞かなかったみたいな時もあって。そんな制御不能になる自分なんかもちゃんと制御出来る様になれば、もっと強くなるんじゃないかと思ってて。

――前から多重人格的なリリック書くよなと思ってたんですけど、その話聞くと何か分かる気がしますね。

Pecori 詰め込んだリリックが無意識的に出ちゃってる時があって、それはあんま良くないなと思ったんですよ。ちゃんと頭でコントロールしながら言葉を届けたいなと。じゃないといつかヘマするぞと。そこはちょっと反省しましたね。

“イェーイ!”がないと物足りない(Tondenhey)

――なるほど。続いてTondenheyさんに伺いたいのは、ヒップホップなのにギターソロめっちゃオイシイっていうこのツッコミどころについてなのですが(笑)。

Tondenhey 元々打ち込み主体で作っていたのもあって、そうなると曲の次元を突き破る武器ってPecoriの声しかないのかなと思ってたんですが、自分でもその武器を持てる様になりたいなと思ってソロ弾く様になりました。そしたら段々パターン化して来ちゃって(笑)。

Tondenhey (guitar)

――Tondenheyさん自身で作曲した楽曲には基本的に入れるみたいな?

SunBalkan いや、俺が作った曲でもほとんど入れて貰うようにしてますね。思えば俺元々そんなにヒップホップ詳しくないんですよ。

――確かに。プレイスタイルもそうだし、もう一個のバンド(1inamillion)もまた違った音楽性ですものね。

SunBalkan でも1つの曲って考えた時にそこでギターソロが来るのは不自然じゃないと思って入れてるし、むしろヒップホップだからとかいうルールじゃなくて、普通にこっからギターソロ欲しくね?って思った時は入れてます。

――1つのハイライトですよ。だから騙されたと思ってライブ観て欲しいんです。"オドってヒップホップなんでしょ?"に対して“でもギターソロ弾きまくりなんだぜ?騙されたと思ってライブ観に行こうよ!”となるはずです。

全員 (笑)。

Tondenhey 思えば単純に“イェア!!”って言いたいんですよ。音源聴いててもライブ観てても“イェーイ!”がないと何か物足りないというか。だからそうなるソロを弾いてるつもりです(笑)。

――楽器間はお互いどのくらい干渉してます?好き放題演奏しつつも調和させるコツというか。

SunBalkan 以前はトラックを流す事に頼ってたんですよ。“生演奏”してるけど“ライブ”してないというか。どうにかしないとって気持ちもお互いあったんですがなかなか言い出ず。でもリキッドルームを控える中で見直した方が良いんじゃないかとちゃんと話し合えて。"出来てるからいいじゃん"から“もっと出来るんじゃないか”になれたんです。それぞれが本当にやりたい事を見つけ始めたし、それもどんどん更新していかないとねって感覚も共有出来たし、それが良い感じに纏まり出した。互いの持ち場をそれぞれがこなすだけじゃなく、とにかくもっと良くして行こうって、向く方向が一点に纏まりつつあるんですよ。

――ジャムバンドっぽさもより強まりましたよね?「Bebop Kagefumi」がメドレーっぽいセクションでワンコーラスに短縮されてたり、曲間の繋ぎも異常な拘りが見て取れるようになってて。

Pecori ヨウジが入ったのはデカいなと思ってます。初見でもバンドとかの人にも入り易い感じを演出しつつ、DJがいるから生で曲を切ったり繋いだりというヒップホップ的な醍醐味も伝える事が出来るので。

SunBalkan 彼もバンドでやるのは初めてみたいで、色々考えてくれてて、案も出してくれるんですよ。お互いその新鮮味を楽しめてて、またやれる事が増えるというか、幅もどんどん拡大させる事が出来てます。

作品に関わってくれる人たち皆から愛情を感じられて嬉しい(Pecori)

――個人的にはなるだけ音源通りに聴きたいタイプでもあるのですが、あそこまでリズムアレンジや繋ぎ方に拘られるともう、参った!て気持ちになりました(笑)。

Pecori お客さん全員が全員100点満点のライブってある訳ないじゃないですか。だからこそむしろ多少の裏切りがあった方が体験として深く刻み込めるなとも思ってて。聴きたかったあのイントロがあんな風に編集されてたってのが意外とライブのハイライトとして記憶に残せたりすると思うし、驚きを届けていくって意味では1番リスナーに寄り添えてるやり方だとも思ってるんですよね。そして自分達が楽しめてる事、やりたい事を堂々と提示すると、今はそういう形になるので。

SunBalkan 「Bebop〜」はそれまでほぼ絶対ライブでもやってたのに、それをまあ…“切っちゃう?”みたいな(笑)。

――あの曲で音楽番組にも出たのに、何と大胆な(笑)。来る9月9日のライブは生MPCのタイシさんも加えた6人で立つ事になるんですね?漸く真の意味で仲間たり得るメンバーが集まって来たというか。

SunBalkan 遊くんもヨウジくんも自分だったらできないところまでやってくれる、オドを想ってくれている2人です。

Pecori 仕事量多いかも知れないですけど、サポートメンバーの2人以外も、作品に関わってくれる人たち皆から愛情を感じられて嬉しいです。何故かオドだったら何やってもいいみたいな風に思ってくれてるんですよね。良い事だと思うんですけど。何ででしょうね…?

Tondenhey 人徳すかね(笑)。

SunBalkan ただ三宅さんに言われた事があって、“何やっても良いけどノリだけでそこに明確な意思がないとそれで失う物もあるよ”みたいな。だから「KAMISAMA」のMVのコメント欄にもついて行けませんみたいなのもあって、そこまでやったったぜ!てつもりじゃなかったんですけど、置いてけぼりにし過ぎないというか、そこもちゃんと考えてかないとなとは思ってます。

ODD Foot Works「KAMISAMA」MV

――では最後の質問になりますが、9月9日のコーストに向けて、代表してPecoriさんから頂きたいのですが。

Pecori キューキューの日なので、オドが皆さんの救急車になります!

――エラいスリリングな救急車ですね。

一同 (爆笑)

ヘアメイク / 木村一真

オフショット
スタイリングも担当し、3人分のサングラスを持ち帰る庄村聡泰。

<ライブ情報>
『ODD Foot Works』

『ODD Foot Works』USEN STUDIO COAST単独公演フライヤー

9月9日(木) 東京・USEN STUDIO COAST
※5月3日(月・祝) の振替公演

Open 18:00 / Start 19:00
※開場 / 開演時間が変更になっております。

STARRING:
PECORI (Vo)
TONDENHEY (Gt)
SUNBALKAN (Ba)
YOHJI IGARASHI (DJ)
YU SEKI (Dr / King Gnu)
TAISHI SATO (MPC)

GUEST VOCAL:
REIJI OKAMOTO (OKAMOTO’S)
AAAMYYY

【チケット料金】
4,500円(税込・1ドリンクオーダー)
※5月3日(月・祝) 公演のチケットはそのまま有効となります。

チケット購入はこちら

関連リンク

ODD Foot Worksオフィシャルサイト
http://oddfootworks.com/

ODD Foot Works Twitter
https://twitter.com/oddfootworks

ODD Foot Works Instagram
https://www.instagram.com/oddfootworks/?hl=ja

インタビュー・文:庄村聡泰

ロックバンド[Alexandros]のドラマーとして2010年より活動するも局所性ジストニア罹患を理由として2021年3月に勇退。
バンド勇退の翌日より歌劇な過激団"不楽、足る。"(読み:フラクタル)の始動並びにライフスタイル提案型ファッションブランド"SNACK NGL"への合流を発表。
上記二足の草鞋を軸に、その他スタイリングや執筆など、多岐に渡る活動を予定している。
https://www.instagram.com/shomurasatoyasu

写真:池野詩織

1991年生まれ。2012年より写真家として活動開始。NY Art Book Fair 2018にてcommune Pressより写真集『オーヴ』をリリース。
ファッション、音楽、アート、コマーシャルなどあらゆるジャンルを縦横無尽に駆け回り、自由奔放な個性に起因した熱のある作品を生み出している。
https://www.instagram.com/ikenoshiori

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