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アンジュルム 勝田里奈の卒業、そして考え得るハロプロの未来の可能性

リアルサウンド

19/10/10(木) 11:00

 先月25日のパシフィコ横浜でのコンサートをもって、アンジュルムおよびハロー!プロジェクトから勝田里奈が卒業した。2009年にハロプロエッグの第7期メンバーとして加入、2011年にスマイレージの第2期メンバーに昇格という10年間のアイドル活動を全うした。

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 当日の卒業コンサートは、アンジュルムの12月まで続く夏秋ライブツアー『Next Page』の中途の公演だったが、『勝田里奈卒業スペシャル』というサブタイトルが付き、ツアーでのセットリストをベースにしつつ、この日限りの特別なセトリが展開された。

 今年5月リリースのアルバム『輪廻転生 ~ANGERME Past, Present & Future~』から、それまでライブ披露されてなかった楽曲群が初披露されたのもポイントのひとつだが、他にも「恋ならとっくに始まってる」「旅立ちの春が来た」といった楽曲での勝田・竹内朱莉・中西香菜という第2期メンバー3人をフィーチャーした歌割りがひときわ印象深かった。

 アンコール明けに歌われた「とっておきのオシャレをして」は、卒業記念に制作された勝田のソロ楽曲。この曲は11月20日発売予定のアンジュルム新シングル『私を創るのは私/全然起き上がれないSUNDAY(曲順未定)』の通常盤Aに収録されるとの発表がまずあり、卒業コンサート1カ月前の9月16日にiTunes Store限定で先行配信リリースされ、卒コン前日の24日にYouTubeにてMVが公開、そして卒コン当日に最初で最後の生披露というなかなかアクロバティックな経緯があった。

 ジャズテイストを感じさせる曲調で、過去のハロプロ楽曲ではタンポポ「わかってないじゃない」(1999年/アルバム曲/石黒彩ソロ)、モーニング娘。「好きで×5」(1999年/アルバム曲)、近年ではモーニング娘。’16「セクシーキャットの演説」(シングル曲)、カントリー・ガールズ「待てないアフターファイブ」(2018年/配信シングル曲)などが想起される。

 グループ卒業記念のソロ曲で、なおかつジャジーな曲調というと、モーニング娘。’14から道重さゆみが卒業する際に作られた「シャバダバ ドゥ~」がすぐに思い出されるだろうし、℃-uteのやはりジャズ調なシングル曲「人生はSTEP!」(2016年)の作曲・編曲を手がけていた石井浩平は、本曲「とっておきのオシャレをして」の作編曲も担当している。

 上記の諸曲に比べると、「とっておきのオシャレをして」は、いい意味で肩の力の抜けた、軽やかさがより強調されたサウンドのように思われる。ロックやJポップが帯びている熱さや力強さとはまた違った、ジャズ本来が持つ洒脱さの表出。そこから、活動初期に“省エネ”と評された勝田のパフォーマンスを連想することもできるだろう。とはいえ、現在の勝田のピッチの安定した歌声や、しなやかなダンスさばきを目の当たりにしてもまだ“省エネ”と呼び続ける人は稀だろうし、そういった言説を覆していったのが勝田のこれまでの活動軌跡だったとも言える。楽曲とメンバーのベストマッチングがここにある。

 また、本曲の作詞を担当したのは福田花音。言わずと知れたアンジュルム(旧称スマイレージ)の第1期メンバーで、“6スマ”と呼ばれる2012~2014年の6人組時代を勝田とともに過ごした戦友だ。アンジュルム卒業後に作詞家に転向した福田が、かつての同僚の卒業時に記念曲を歌詞提供する――これは今年6月の和田彩花卒業ソング「夢見た 15年」と同じ趣向である。

 「とっておきのオシャレをして」の歌詞には、〈心の中にしかない 将来の野望を〉〈打ち明けた時未来に 大きな明かりさしたんだ〉〈目見て言ってくれた〉〈「がんばりな!」の言葉に 背中を押されたよ〉という4つのフレーズそれぞれに、“中にしかな=中西香菜”、“明かり=竹内朱莉”、“目見て=田村芽実”、“がんばりな=勝田里奈”という、2期メンバーの名前が組み込まれている。さらに、〈いつか卒業旅行 “アメリカ”でも行こうよ〉というフレーズは、2期メン4人の頭文字(あかり・めいみ・りな・かな)から取られた愛称“アメリカ”を踏まえてのものだろう。

 こういった作詞術は、粋な演出とも言えるし、あまり何回もやられると効果が薄れるとも言える(「夢見た 15年」でも同様の手法が見られた)。このような手法を使わずとも、平易な言葉のみで人心を動かす歌詞を執筆できた時が、福田花音が作詞家として一皮むける時だろう。

 卒業後の勝田は「ファッション関係の仕事に従事したい」と明言している。2017年からの2年間には、アンジュルムでのアイドル活動と並行して文化学園大学短期大学部ファッション学科で服飾業について学んでいた。また、ここ数年のアンジュルムのライブ衣装は勝田自らのコーディネートによるものが多く、ファンからも好評だ。

 20年以上の歴史を持つハロプロだが、以前からの傾向として“メンバーの裏方スタッフへの転向”という要素がある。前述の福田の作詞もそうだし、モーニング娘。’19の佐藤優樹やJuice=Juiceの宮本佳林はDTMでの作詞作曲を趣味としており、ファンクラブ会員限定のメンバーバースデーイベントで自作曲を披露したりすることもある。今年5月に行われた佐藤のBDイベントでは、楽曲の新たな振り付けを同グループの加賀楓が考えて付けたということがあった。BEYOOOOONDSの小林萌花の特技はピアノ演奏で、すでにライブではパフォーマンスに組み込まれているし、モーニング娘。’19の佐藤や野中美希もピアノが特技、Juice=Juiceの宮本や高木紗友希はギターを練習中だ。カントリー・ガールズの山木梨沙はイラストが得意で、メンバーを描いたイラストがグッズ化されたりしている。

 つまり、ハロプロの活動に関する歌やダンス以外の様々な要素にメンバーが関与するケースが年々増えているということであり、自給自足型アイドルとでもいうべき方向へ徐々に向かっているのが現在のハロプロだ。勝田のファッション志向にもそういう側面があるだろう(彼女の現在の所属事務所はアップフロント関連会社であるJ.P ROOM)。ハロプロメンバーおよびOGメンバーが制作したり演奏した楽曲を、メンバーがコーディネートした衣装で、メンバーが考案した振付で歌い踊るという未来も、そう遠いものではないのかもしれない。(ピロスエ)

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