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【おとな向け映画ガイド】

気分が晴れる2本。韓国OL奮闘劇『サムジンカンパニー 1995』、世界大会に挑むゲイの水球チーム『シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち』をご紹介。

ぴあ編集部 坂口英明
21/7/4(日)

イラストレーション:高松啓二

今週末(7/8〜10)に公開される映画は21本。全国100スクリーン以上で上映される作品は『東京リベンジャーズ』『ブラック・ウィドウ』『ハニーレモンソーダ』『100日間生きたワニ』の4本。今回はミニシアター系の作品から明るい気分にさせてくれるおとな向きの2本をご紹介します。

韓国の実話をもとにしたドラマ
『サムジンカンパニー1995』



韓国の、それも1995年の話だから、と、ひとごとのように観てはいられないところがこの映画の面白さであり、凄さです。セクハラもパワハラも日常的だったあの時代、日本以上に学歴が幅をきかせる韓国で実際にあった、高卒“OL”たちの正義の反乱を、コミカルにパワフルに描いたドラマです。

スカートと胸が強調されそうなベストの制服。「オフィスの花」と言葉では持ち上げられ、◯◯ちゃん、と呼ばれるけれど、頼まれるのはお茶汲み、コピーとり、オフィスの雑用ばかり。重要な仕事は望んでも与えられず、結婚したら「寿退社」を迫られる。日本でもごく普通にあった光景です。でも実は、社内の書類がどこにどんな風に保管されているか、社内の人間関係はどうなのか、誰が経費をごましているか、なんてことをOLはよくご存知。横のネットワークできちんと把握しています。パソコンの習熟だって、いち早い。そういえば、1995年といえば、Windows95発売の年です。まだ、1人1台ではありませんでしたが。

そんな、大企業サムジン電子に勤める仲のいい高卒同期のOL3人が、偶然知ってしまった、自社工場が汚染水を川に流出しているという事実。この許しがたき会社の隠ぺいを、彼女たちはそれぞれの能力を活かして調査し、告発しようとするのです。会社の勢力争いがからみ、物語は二転三転、『半沢直樹』的な面白さで展開していきます。決して孤独な戦いではなく、社内のOL仲間の協力や、理解ある上司にも助けられ、次第に大きなちからとなり……。


上司が言います。「昔はよかったと安易にいわないことだ。私にとって昔がよかったように、今が誰かの幸せな時であってほしい」。昔も今も、どの国でも、理不尽なことは多いけれど、元気出していきましょう、という気分をとってももらえる映画です。

【ぴあ水先案内から】

池上彰さん(ジャーナリスト)
「……舞台設定は1995年の韓国ですが、2020年代の日本の企業にも同様な悪弊が残っているのではないか。まさに必見の映画です。」
https://bit.ly/3yiswBl

植草信和さん(フリー編集者、元キネマ旬報編集長)
「……爆笑、苦笑、失笑の渦のなかから、恐怖と怒りがせり上がる。…観る者を慄然とさせるシリアスなコメディ映画だ。……」
https://bit.ly/3h8bxw3

夏目深雪さん(著述業、編集業)
「……このうえない感動を呼ぶだけでなく、韓国の近現代史を肌で感じることのできる作品となっている。」
https://bit.ly/3wcucLw

紀平重成さん(コラムニスト、元毎日新聞記者)
「……(最近の韓国映画は)どちらかと言えばシリアスな作品が目立ちます。そんな中で本作はエンタメ色を意識して90年代を回顧する作品なのかもしれません。」
https://bit.ly/3hmFA1U

高松啓ニさん(イラストレーター)
「……舞台となる1990年代の肩パットの入ったスーツやバカでかいPCなど時代のムードを出しており……」
https://bit.ly/3w6nZ3L

(C)2020 LOTTE ENTERTAINMENT & THE LAMP All Rights Reserved.

これも実在の水球チームのお話
『シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち』



ゲイの弱小水球チームが世界大会をめざす、という最近ありがちなパターンの映画、ではあるのですが、これがケッサク!

50メートル自由形の銀メダリストが、同性愛差別発言で世界水泳の出場資格を失ってしまいます。フランスの水連(のような組織)が彼に提示した挽回策は、世界大会をめざす水球チーム「シャイニー・シュリンプス」のコーチ役をつとめること、でした。世界大会といっても「ゲイゲームズ」というLGBTQ+スポーツの祭典。水連がゲイの水球チームに力を貸すという設定が、すごいというか、日本ではありえない。しかも、このチーム、実在するんです。

刈り上げた頭、タトゥーありのいかついゲイ嫌いのコーチが、ゲイに何の偏見もない現代的な娘の後押しもあって、次第にチームのみんなと心を交わしていき、クロアチアで行われるゲイゲームズの大会まで遠征、という展開になるのですが……。それにしてもチームのメンバーがそれぞれ個性的で、ユーモアセンスも抜群。みんな悩みを抱えながらも、愉しむことを忘れません。強豪レズビアンチームと予選で戦ったり、水球リーグのことや、ゲイゲームズの仕組みについては、観ていてもよくわかりませんが、まぁ、固いことはいいっこなし。

2019年、フランスでの公開時は初週動員NO1のヒットだったといいます。「シャイニー・シュリンプス」に7年間所属したことのある、セドリック・ル・ギャロが、体験したこと、見聞きしたエピソードをもとに脚本化し、マキシム・ゴヴァールと共同監督しています。性的結合手術をしてチームに帰ってきた、つまり女性の体になったメンバーの役は、リアリティを追求する監督の執念で、パリの歓楽街ピガールのキャバレー「マダム・アーサー」の踊り子だったロマン・ブローを探し出したそうです。ゲイであることへの世の中の偏見にもちらっとふれますが、全体を通して、とても明るく、あけっ広げで、人生ってこれだから楽しいじゃない!という気分になれる映画です。

【ぴあ水先案内から】

伊藤さとりさん(映画パーソナリティ)
「……当事者だからこそリアリティある感情の揺れを演技で見せ、観客の私たちにも伝わった……」
https://bit.ly/3Ai8GIp

野村正昭さん(映画評論家)
「……メンバーそれぞれが抱える苦悩を繊細に描き、笑って泣かせる好篇……」
https://bit.ly/2TvPA0N

(C) LES IMPRODUCTIBLES, KALY PRODUCTIONS et CHARADES PRODUCTIONS

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