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和田彩花の「アートに夢中!」

没後90年記念 岸田劉生展

毎月連載

第25回

今回紹介するのは、東京ステーションギャラリーで開催中の『没後90年記念 岸田劉生展』。日本近代絵画史上に輝く天才画家とも言われる岸田劉生は、ゴッホやゴーギャンらの後期印象派から、ミケランジェロやデューラーの古典西洋絵画、そして日本や東洋の美術からも多大な影響を受け、自身の絵画に取り入れながら、自身のスタイルを確立してきた。そんな劉生の画業を、制作年代順に展示することで、その芸術の全容を紹介する今回の展覧会。画風の変転を繰り返しながらも、画家として精力的に活動していた中、38歳の若さで亡くなってしまった劉生。その絵画と人生を、和田さんはどう受け止めたのだろうか。

ゴッホからデューラーまで

岸田劉生の作品をこれだけまとめて見たのは初めてだったのですが、いままで私が持っていた劉生の作品のイメージは、《麗子像》と、《道路と土手と塀(切通之写生)》くらいしかありませんでした。 あまり岸田劉生がどんな人で、どんな絵を描いていたのかというのは、実はよくわかっていなかったんです。

だからゴッホから影響を受けたということには、びっくりしました。それ以外にもミケランジェロやデューラー、それに日本美術にも影響を受けているんですよね。それを頭に入れながら見ると、いろいろな発見とともに、ちょっと混乱する気持ちも生まれました(笑)。

初期の作品を見ていくと、確かにゴッホの影響もありつつ、私はムンクとかの表現にすごく近いなって思いました。色も鮮やかというよりはくすんだ色であったり、原色を多用する表現主義っぽい雰囲気もすごくありました。

確かにここを通っているな……と思いながら見ていると、今度はデューラーからの影響がものすごく感じられる作品が出てくる。え? デューラーって15、16世紀の人だよね? ゴッホとデューラー? ゴッホからデューラーに行くの? っていう混乱(笑)。

でも作品を見ると、デューラーからものすごく影響を受けているのはすごくわかりました。芸術の表現ももちろんですが、デューラーが画面に文字を入れたような絵画の形式もそっくりなんです。

デューラー風麗子?

《麗子肖像(麗子五歳之像)》1918年10月8日、油彩/麻布、東京国立近代美術館蔵

その作品が、《麗子肖像(麗子五歳之像)》です。

デューラーの一番有名な作品といってもいい、《自画像(レザースカートを着た自画像)》(1500年、アルテ・ピナコテーク、ミュンヘン)、がありますが、もうそのままなんです。特に手の形が。完全に一致するぐらいのクオリティです(笑)。ここまでそっくりに描いていることにも驚かされましたが、そこがまた面白いなって。影響を受けていることを隠していないんですよね。

それに、デューラーも画面上に文字を必ず書き込みますが、劉生もほとんどの作品に完成した日付などを書き込んでいます。それもデューラーを意識したからじゃないでしょうか。

この作品は、最初の油絵による麗子像だそうですが、このあと数年後には、劉生の代名詞とも言えるような、ちょっと不気味な感じのする麗子像が描かれるようになります。写実的な麗子からの振れ幅もすごいですよね(笑)。

展示風景

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