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死霊魂

20/7/29(水)

『死霊魂』 (C)LES FILMS D’ICI-CS PRODUCTIONS-ARTE FRANCE CINEMA-ADOK FILMS-WANG BING 2018

「何を言っても怒らないから自由に発言して」。この言葉を信じ安心して語った善良な人々が「右派」のレッテルを貼られ55万人もの人が収容所に送り込まれた1950年代の中国の「反右派闘争」。折りからの大飢饉も重なり、実に4500万人もの死者を出したと言われる中国史の闇に『鉄西区』『無言歌』のワン・ビン監督が挑んだ渾身のドキュメンタリー作品です。 人肉まで食べたと言われる凄惨極まりない地獄絵図のような飢餓を経験したにもかかわらず、生還率わずか10%ともいわれた収容所を生き延びた元収容者の語り口は驚くほど熱く滑らかです。半世紀を超える月日の経過と、今これを伝えなければ事実が忘れられてしまうという恐れが相まって後押しをしたのかもしれません。2005年から17年にかけて撮影された120人の証言者の600時間にも及ぶ映像素材が8時間26分にわたる長尺の作品としてまとまりました。 証言を聞いてまず驚くのは、元収容者の記憶力の良さです。地名や仲間の名前、さらに年月まで正確に覚えている人が多いことです。また「家族に会いたい」「ここで死ぬわけにはいかない」という強い思いがあったことも共通しています。そして生還できなかった仲間に共通する死因として気力、体力、飢えの3つを挙げる人が多かったのです。そもそも彼ら元収容者は「右派」と告発されたこと、さらには生き延びて監督の取材に答えているという事実が最大の共通点といえるのかもしれません。 膨大な証言者に向き合い続ける中で監督はある核心に触れた気がしたそうです。証言者の高齢化が進み、死に近づいた彼らがはるか昔の出来事を必死に思い出そうとする姿を見て、「地獄を生き延びた者たちの証言が死者の魂をよびおこす」ということでした。同じ人を何度もインタビューしたからこそ得られた“成果”と言えるでしょう。 『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』のビー・ガン監督や『象は静かに座っている』のフー・ボー監督らタイプの違う才能が排出する中国映画界。ドキュメンタリーの巨匠の存在感も負けてはいません。

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