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いま、最高の一本に出会える

Russian Circles、Volbeat、Sacred Reich……西廣智一が選ぶ注目すべきHR/HM新作5作

リアルサウンド

19/8/25(日) 8:00

 この夏は話題性の高い新譜リリースが続いているハードロック/ヘヴィメタル(以下、HR/HM)およびエクストリームミュージック界隈。前回のキュレーション連載(Slipknot、Abbath、GYZE……西廣智一が選ぶ話題性の高いHR/HM新作6作)で紹介したSlipknotの5年ぶり新作『We Are Not Your Kind』が、全米&全英でそれぞれ1位を獲得するなど、まだまだその人気ぶりや注目度は衰えていないようです。

 同作に続き、この8月も数々の力作がリリースされています。今回は日本でも注目度の高いアーティストの新作、およびこれから注目すべきアーティストの話題作を計5作品紹介したいと思います。

 最初にピックアップするRussian Circles『Blood Year』は、メタル/エクストリームミュージックリスナーのみならず全音楽ファンがこの夏注目すべき1枚だと断言します。彼らはアメリカ・シカゴ出身の3ピースインストゥルメンタルバンド。今回紹介する『Blood Year』は前作『Guidance』(2016年)から3年ぶりとなる通算7作目のオリジナルアルバムで、前作から引き続きConvergeのカール・バルー(Gt)がプロデューサー&レコーディングエンジニアを担当しています。

 ギターとベース、ドラムのみで構築されるインストナンバーはいわゆる“歌モノ”とは異なり、メロディが主軸となって進行するものとは異なります。が、それでも最初から最後まで飽きずに惹きつけられてしまうのは、彼らが構築する楽曲群のアレンジ力や演奏力&表現力の高さ、そして要所要所に散りばめられたトリッキーな味付けによるものが大きい。ポストロックやエクスペリメンタルミュージックの要素も感じさせつつ、メタルやエクストリームミュージック的な生々しく分厚い音像と楽器一つひとつの音の太さ、それらが折り重なることで生まれる不思議な調和と不調和からは、ジャンルの枠を超えた魅力が感じられるはずです。メタルリスナーはもちろんのこと、Deafheavenなどポストメタルのファン、MogwaiやExplosions In The Skyのようなバンドのファンにも存分にアピールすることでしょう。

Russian Circles “Milano” (Official Audio)

 続いては、2000年代のUSメタルコアシーンから誕生したKillswitch Engageのニューアルバム『Atonement』です。アメリカ・マサチューセッツ州出身の彼らは、今年で結成20周年。すでに大御所的存在の彼らが3年ぶりに発表した本作は、初代シンガーのジェシー・リーチ(Vo)がバンドに復帰してから3作目のアルバムにあたり、長らく在籍した<Roadrunner Records>を離れ、アメリカでは<Metal Blade Records>、イギリスでは<Music For Nations>、それ以外の海外は<Columbia / Sony>に移籍しての第1弾リリースとなります。

 結成20周年ということもあるのか、本作の内容はある種の集大成感がにじみ出ており、かつ個々の楽曲も2〜3分台とコンパクトにまとめられ非常に聴きやすい内容となっています。また、ヘヴィさと同じくらいにメロディアスさも大切にされた楽曲群からは、メタルコアやルーツのひとつであるメロディックデスメタルから数歩抜きん出た印象を受け、もはや正統派ヘヴィメタルの枠に括られても不思議じゃないほどの王道さが感じられます。さらに、本作にはジェシー脱退後にKillswitch Engageのフロントマンを務めたハワード・ジョーンズ(現Light The Torch)や、Testamentのチャック・ビリー(Vo)といったゲストアーティストも参加。ジェシーと濃厚なボーカルバトルを繰り広げています。これは単なる記念碑というだけではなく、Slipknot同様に「これこそが今のUSヘヴィメタルの最高峰」と言いたくなるほどの傑作ではないでしょうか。

Killswitch Engage – The Signal Fire

 3作目は、デンマーク・コペンハーゲン出身のヘヴィメタルバンドVolbeatによる7thアルバム『Rewind, Replay, Rebound』です。彼らはHR/HMのみならず、パンクやロカビリーの要素を飲み込んだ個性的なサウンドを信条としており、前作『Seal the Deal & Let’s Boogie』(2016年)は本国のみならずドイツやスウェーデン、スイスなど7カ国でチャート1位を獲得。アメリカでも最高4位にランクインする人気ぶりを誇り、2017年には自国バンドとしては最大規模の4万8000人以上を集めたライブをコペンハーゲンで成功させました(その模様は2018年にライブ作品『Let’s Boogie!: Live From Telia Parken』としてリリース済み)。

 3年ぶりの新作となる今作では、バンドが新たなフェーズに突入したことを感じさせる新機軸が打ち出されています。従来のロカビリーメタル的要素はそのまま残されているものの、楽曲の持つスケール感が急激に大きくなっており、それによりキャッチーさやメロディアスさも過去イチで親しみやすいものに進化しています。また、そのポップさの中には普遍性の強さが感じられ、よりルーツロック的なカラー……もっと言えばゴスペルやソウルなどからの影響すら感じさせる、そういった新境地が至るところから見受けられます。

 USストーナーロックの雄Clutchのニール・ファロン(Vo)をゲストに迎えつつ、ピアノやサックスをフィーチャーしたシンプルなロックンロール「Die To Live」や、ExodusやSlayerで活躍するゲイリー・ホルト(Gt)がダークでメタリックなソロを披露する「Cheapside Sloggers」など、ヘヴィロックファンが唸りそうな共演も楽しめる本作。これまでVolbeatに触れてこなかったリスナーにこそ触れてほしい、入門編的1枚と言えるのではないでしょうか。ここ日本にも2013年8月の『SUMMER SONIC』、翌2014年2月の単独公演で二度来日している彼らですが、ぜひ本作を携えた再来日にも期待したいところです。

Volbeat – Last Day Under The Sun

 4作目は80年代からジャーマンスラッシュメタルシーンを牽引し続けるベテランバンド、Destructionのニューアルバム『Born To Perish』です。シュミーア(Vo/Ba)とマイク(Gt)を中心に40年近くにわたり活動を続けるDestructionは、ここ日本でもSodom、Kreatorとともに“ジャーマンスラッシュ三羽ガラス”と称され、根強い人気を誇る存在。過去にはシュミーアが10年ほど脱退していた時期もありましたが、1999年に復帰してからはトリオ編成で地道な活動を続けてきました。そんな、「3人編成が一番だ」と公言してきた彼らがダミア・エスキッチ(Gt)とランディ・ブラック(Dr/ex. Annihilator、 Primal Fearなど)を新メンバーに迎え、4人編成で今作『Born To Perish』を制作。4人になったことに驚きは隠せませんでしたが、実際にアルバムを聴けばギターでの表現に多彩さが加わり、楽曲アレンジの幅が確実に広がったことが理解できるはずです。比較的ストレートなスラッシュナンバーが多かった近作と比べても、今作での技巧派アレンジはとても新鮮に映るはずです。

 通算15作目(リメイクアルバムなどを除く)ともなるとアルバムを重ねるごとに新鮮さは薄れていきますし、実際これから新しい要素を入れようとなるとファンから反感を買ってもおかしくはありません。しかし、この変化は(過去にも経験があることとはいえ)非常にポジティブに受け入れられるものではないでしょうか。ただ、ひとつだけ残念なのが「これ!」と言える1曲が見当たらなかったこと。ここにキメとなるキラーチューンが含まれていたら、問答無用の最高傑作になっていたのではないか……そう思わずにはいられません。

DESTRUCTION – Born To Perish (OFFICIAL VISUALIZER)

 最後に紹介するのは、アメリカ・アリゾナ州出身の4人組スラッシュメタルバンド、Sacred Reichの新作『Awakening』です。1985年に結成された彼らは、80年代後半から90年代前半にかけて活躍し、ハードコア的要素を含むテクニカルスラッシュメタルサウンドと政治的な歌詞で個性を発揮。2000年に一度解散しますが、2006年の再結成以降はライブを中心にコンスタントな活動を続けてきました。今回発表された『Awakening』は再結成後初のオリジナルアルバムであり、前作『Heal』(1996年)から23年ぶりの新作にあたります。オリジナルメンバーはフィル・リンド(Vo/Ba)とワイリー・アーネット(Gt)のみですが、90年代の作品に参加したデイヴ・マクレイン(Dr/ex. Machine Head)、弱冠22歳のジョーイ・ラジヴィル(Gt)という新たな布陣で完成させた本作は、『Ignorance』(1987年)や『The American Way』(1990年)といった代表作にも引けを取らない力作に仕上がっています。サウンド自体はオールドスクールなスラッシュメタルですが、そこには古臭さや年寄り臭は皆無。実際、フィルのボーカルは往年の作品よりもパワフルさが増しており、ジョーイという新世代ギタリストを迎えたことによる演奏のフレッシュさもなかなかのものがあると思います。歌詞においても社会派的側面は健在で、“覚醒=Awakening”と題された作品にふさわしく、現代社会の問題点がさまざまな側面から切り取られています。

 全8曲(日本盤ボーナストラックを除く)で31分半というコンパクトな構成も往年のメタル作品を彷彿とさせるものがありますが、それと同時にストリーミングサービス中心の現代のスタイルにもフィットするものがある気がします。こういった作品がデジタル世代の若い世代にどう受け取られるのか、非常に気になるところです。

Sacred Reich “Awakening” (OFFICIAL VIDEO)

■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

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