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立川直樹のエンタテインメント探偵

ジョン・レノン生誕80年。展覧会『DOUBLE FANTASY – John & Yoko』は期待通りの素晴らしさ!

毎月連載

第61回

Photo by Iain Macmillan (C)Yoko Ono

ジョン・レノン生誕80年を迎える10月9日からソニーミュージック六本木ミュージアムで始まった展覧会『DOUBLE FANTASY – John & Yoko(ダブル・ファンタジー ジョン・アンド・ヨーコ)』は期待通りの素晴しい内容だった。

ヨーコも深く関わって完成させ、2018年5月から2019年11月までジョンの故郷であるイギリス・リヴァプール博物館で開催され、その圧倒的な内容で高い評価と反響を呼び、会期も当初の予定から7ヶ月も延長、異例の70万人を動員した展覧会の日本上陸だが、時系列に沿って展開する展示は、60年代半ばから前衛芸術のシーンを牽引してきた芸術家ヨーコ・オノと「ギターを持つ前から僕は絵を描いていたんだ」という言葉が展示物を観てよくわかったジョン・レノンという2人の天才の誕生から、1966年のロンドン・インディカ・ギャラリーでの運命的出会いを経て、その後互いに影響を与えあったアーティスト活動全般を巡り、現在まで続く“IMAGINE PEACE(イマジン・ピース)”キャンペーンを探訪する構成になっている。

ジョン手作りの本「The Daily Howl」(C)Yoko Ono

ロンドン郊外アスコットの田園地帯にあった豪邸ティッテンハースト・パークで名盤『イマジン』がレコーディングされたことを思い出させてくれる“白”を基調にした会場に展示されているのは、ジョンの手書きの歌詞や少年時代に手作りしたイラスト満載の本や、2人が共作したパフォーマンス・アート作品など、「これが現物なんだ」という想いで胸を熱くさせ、2人が世界で最もクリエイティブなカップルだったということを改めて実感させてくれるもの。

さらに言葉によるコンセプトとメッセージが強力で、すべての始まりだったインディカ・ギャラリーの展示が再現されているのもうれしいが、普通の展覧会よりも展示自体が完全にアート空間になっているので、会場にいるだけでクリエイティブな刺激が受けられる。

1969年ベッド・インの再現とベッド・インで使用した実際のギター(ギブソン)

ショーン・レノンがプロデュースしたアルバム『ギミ・サム・トゥルース.』、記念上映される『IMAGINE<イマジン>』など

ジョン・レノン『ギミ・サム・トゥルース.』[2CD]/ユニバーサル ミュージック

そして生誕80周年を記念するイベントとしては、ジョン・レノンという不世出のアーティストをその死後40年に渡って立ち位置も含めてプロデュースし続けてきたヨーコ・オノがエグゼクティヴ・プロデューサーを務め、ジョンとヨーコの間に生まれ、アーティストとしても確固たる実績を残しているショーン・レノンがプロデュースした、オリジナル・マルチ・トラックが新しくリミックスした36曲からなるベスト・アルバム『ギミ・サム・トゥルース.』も10月9日に発売されたし、同じ日に『イマジン』の収録曲を映画的にコラージュした映像集で、ジョンとヨーコが監督・製作・出演した映画『IMAGINE<イマジン>』も劇場で記念上映が始まった。

『IMAGINE<イマジン>』(C)2018 YOKO ONO LENNON

だから、絶対に出かけて、また現物を購入して欲しいと思う。世の中があらゆる意味で便利になり過ぎ、また効率や数字ばかりが重要視されて失われてしまったものの重要さをジョンとヨーコは考えてみて欲しいとメッセージを送っている感じもするし、10月24日に万博記念公園ドライブインシアターで上映されるボブ・ディランの1965年のイギリス・ツアーをベースにしたドキュメンタリー映画『ドント・ルック・バック』のトーク・ゲストに出演するため、改めて観直した作品はとても生々しく、ピュアなものは時代を超える力を持っていることを実感させてくれた。

毎年10月になると秋の服を出してくるような感覚で聴きたくなるスティーヴ・キューンとゲイリー・マクファーランド共演の1966年秋に録音された、知る人ぞ知る名盤『10月組曲』も“レコード”というメディアの重要性を伝えてくれるもの。

当初は4月発売予定だったのがコロナの影響でようやく秋に発売と相なったピンク・フロイドのドラマー、ニック・メイスンがバンドのアーリー・イヤーズを再現しようという思いで結成したスーパー・グループ、ニック・メイスンズ・ソーサーフル・オブ・シークレッツの『ライヴ・アット・ザ・ラウンドハウス』の音楽の響き方も抜群で、DVDもテクニックがあり、センスのいいミュージシャンがきちんと演奏しているライヴがどのくらい値打ちのあるものかを教えてくれる。

作品紹介

『DOUBLE FANTASY – John & Yoko』

会期:2020年10月9日~2021年2月18日
開館時間:日~木曜日 10時~18時
     金・土曜日 10時~20時
     祝日 11月3日、23日 10時~18時
        1月11日 10時~20時
     ※最終入場は閉館30分前まで
休館日:12月31日、1月1日
会場:ソニーミュージック六本木ミュージアム

ジョン・レノン『ギミ・サム・トゥルース.』[2CD]

発売日:2020年10月9日
価格:3,960円(税込)
発売元:ユニバーサル ミュージック
詳細はこちら

『IMAGINE<イマジン>』(1972年・英)

配給:Eastworld Entertainment/カルチャヴィル
監督・製作:ジョン・レノン/オノ・ヨーコ
出演:ジョン・レノン/オノ・ヨーコ/ジョージ・ハリスン/アンディ・ウォーホル/フィル・スペクター/クラウス・フォアマン/アラン・ホワイト
※2020年10月9日より生誕80周年記念上映。TOHOシネマズ日比谷他、全国順次公開

万博記念公園よしもとドライブインシアター

映画:Summer Of Love〜Extra ボブ・ディラン『DONT LOOK BACK』
日程:2020年10月24日
時間:開場17時/開演18時30分

ニック・メイスンズ・ソーサーフル・オブ・シークレッツ『ライヴ・アット・ザ・ラウンドハウス』

発売日:2020年9月18日
価格:5,500円(税込)
発売元:ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
詳細はこちら

プロフィール

立川直樹(たちかわ・なおき)

1949年、東京都生まれ。プロデューサー、ディレクター。フランスの作家ボリス・ヴィアンに憧れた青年時代を経て、60年代後半からメディアの交流をテーマに音楽、映画、アート、ステージなど幅広いジャンルを手がける。近著に石坂敬一との共著『すべてはスリーコードから始まった』(サンクチュアリ出版刊)、『ザ・ライナーノーツ』(HMV record shop刊)。

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