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大島幸久 このお芝居がよかった! myマンスリー・ベスト

10月のベストは『最貧前線』、『不機嫌な女神たち プラス1』で存在感抜群の芝居をみせた谷原章介に “敢闘賞”!

毎月連載

第12回

19/10/31(木)

『最貧前線』チラシ

①水戸芸術館ACM劇場プロデュース 『最貧前線』 宮崎駿の雑想ノートより 世田谷パブリックシアター(10/9)
②演劇集団 円『ヴェニスの商人』吉祥寺シアター (10/5)
③『組曲虐殺』天王洲 銀河劇場(10/6)
④ミュージカル『ラ・マンチャの男』帝国劇場(10/7)
⑤名取事務所『屠殺人 ブッチャー』「劇」小劇場(10/19)

*日付は観劇日。10/1〜31 までに観た41公演から選出。

『最貧前線』より、内野聖陽(中央) 撮影:田中亜紀

『最貧前線』は井上桂の脚本、一色隆司の演出、内野聖陽の主演が一体となって刺激的であり魅力的な舞台を作り出した。

太平洋戦争中、軍務に、それも最前線に駆り出された小さな漁船吉祥寺丸の漁師たちに戦いを強制し、船を支配した軍人を描いた。

船長・菊池太平と艦長・大塚少尉が対立する戦いでもあった。水兵を救う場面、敵機と立ち向かう場面などを織り込んだ脚本、ふたつに割った漁船を自在に動かせた美術と演出が舞台に集中させた。船長菊池の内野は方言を使いこなし、海の男の人間臭さに溢れた。最優秀主演男優賞だ。大塚少尉の風間俊介は居丈高な軍人から戦争の悲惨さを共有していく変化を見せる演技。激しく揺れる船での演技が面白かった共演者にも拍手を送りたい。

演劇集団 円『ヴェニスの商人』より、金田明夫 撮影:森田貢造

物語の展開が進むにつれ、これほど怒りが湧いてくるとは思わなかったのが『ヴェニスの商人』である。ユダヤ人に対するキリスト教徒の酷い仕打ちだ。金が必要というアントーニオが「人殺しの犬だ」とかユダヤ人に唾を吐きかけてきた、とシャイロックはなじる。何という差別だ。

金田明夫が演じたシャイロックは娘への海より深い愛情、「法の通りに」と繰り返す怒り、民族としての哀しみを浮き彫りにした。キリスト教徒に改宗させられるため水の中に顔を埋める場面がある。人の慈悲を迫る「正義」などあるのか。人の傲慢さを現代に重ねた舞台だった...

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