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ひじきとプチトマトのパスタ、アンチョビ入りクリームパスタ……フライパン一つでできる『FRYING PAN PASTA』に挑戦

リアルサウンド

21/1/3(日) 10:00

 フライパンひとつで麺茹でからソース作りまでが完結する、ワンパンパスタにハマっている。今までは「大鍋にたっぷりの湯を沸かす」「1人前につき水は1リットル」が、パスタを茹でる時のお約束だった。

 しかし、水汲みから始まり、コンロに重い鍋を置き、麺が茹で上がったら再びよっこらせっとシンクに運んで湯切りするのが、正直ちょっとめんどうになってきていた。お腹いっぱいに満たされたあと、ヌメヌメと鍋についたデンプンを洗い落とすのもめんどうだった。でも、この大鍋から生じるめんどうって「麺の道」とも書ける。そこは、パスタを作る者が避けては通れぬ道。なんと言っても正統派の調理法が一番おいしいはずだよね、ウン。なんて自分に言い聞かせて、ずるずると大鍋とつきあっていた。

 そんなある日、以前紹介した『フライパンだけで完成!ほぼ15分でプロの味! めんどうな日でも作りたくなる極上パスタ』(KADOKAWA)に出会った。簡単でおいしいワンパンパスタは、すぐさま我が家の定番調理法となる。

 湯沸かしいらずのワンパンパスタは、優れた時短調理法でもある。同書を手にした私の麺道が高速道路と化した頃、ほどなくして本書『FRYING PAN PASTA フライパンパスタ』(主婦と生活社)がリリースされた。迷うことなく手に取ったら、目の前にまた新たなパスタ・ハイウェイがひらけたのだ。

フライパンで煮るだけで、とびきりおいしい一皿が完成

 5つのカテゴリーで構成されたメニューは、スタンダードなものから変化球系までバラエティに富む。

・【シンプルパスタ】
アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ、しらすとルッコラのパスタ、明太豆乳パスタなど10種
・【肉のパスタ】
アマトリチャーナ、ボロネーゼ、回鍋肉風パスタ、ビーフストロガノフ風パスタなど14種
・【魚のパスタ】
さば缶と梅のパスタ、ほたてのジェノベーゼ、ボンゴレ・ビアンコ、かきとクレソンのパスタなど9種
・【野菜と豆のパスタ】
ブロッコリーのパスタ、なすのアラビアータ、そら豆とカマンベールのパスタなど8種
・【ごちそうパスタ】
えびとほたてのクリームパスタ、カスレ(豚肉と白いんげん豆のパスタ)など6種

 イタリアンはもちろん、中華料理からフランス料理のカスレまでフライパンでパスタにできるの!?と、見ているだけでワクワクする。

 著者の若山曜子さんは、パティシエ、グラシエ、ショコラティエ、コンフィズールのフランス国家資格(C.A.P)を持ち、パリのパティスリーやレストランでの経験を経た人気料理研究家だ。しかも、著作にはすでに「フライパンカフェ」「フライパン煮込み」「フライパンリゾット」といったフライパン料理専門書がある。もはや日本におけるフライパン料理界の家元的存在と言っても過言ではないだろう。

 その若山さん、実はひょんなことからフライパンパスタ作りをひらめいたそうだ。

 ある日、アシスタントさんにアスパラガスを茹でるよう頼んだらフライパンを取り出した。結論から言えば、これがナイスアシストだった。フライパンは表面積が広い分、早く沸騰し、長いアスパラもそのまま収まる。パスタもいけるかも?と試したら、さすがに麺は折ることになったが、茹で上がるのが早いことに気がつく。

 若山さんのインスピレーションが湧き上がる。

 そういえば、フランスで肉料理に添えるヌイユ(フェットチーネのようなもの)。

 あれは厨房では、生クリームで煮ていたなあと思い出し、ソースの入ったフライパンで、パスタを煮てみました。調べてみると、本場・イタリアでも、そういう作り方のレシピがあるそう。

 フライパンだけで作るパスタという、この本のアイデアは、こうして出来上がりました。

 フライパンで、水とソースとパスタを煮込んでいけば、アルデンテで湯から引き揚げるタイミングを読む手間も省ける。ただし、水分を飛ばす時間はフライパンの大きさや材質で変わってしまう……。それらを踏まえて微調整と試作が重ねられたレシピは、精度と再現性が高いものに昇華した。

 ここで、『FRYING PAN PASTA フライパンパスタ』から、特にお気に入りのメニューを紹介していこう。

ひじきとプチトマトのパスタ

 油と相性のよいひじき。オリーブオイルとにんにくで炒めたことはあるが、ナンプラーとこんなにもマッチするとは驚いた。


 海のペペロンチーノと名づけたくなるこのパスタ、あっさりに見えて唐辛子のピリッとした辛さとナンプラーの塩気とコク、トマトの酸味のそれぞれが主張し、パンチが効いてあとをひく。

 最初から調味料と水分で煮ることで、麺にしっかり味が染み込むから、シンプルなオイルパスタも味わい深く仕上がる。

 白いパスタに踊るように絡む、黒と赤の色合いが目にも鮮やかだ。

アンチョビ入りクリームパスタ

 濃厚クリームパスタも、マッシュルームを炒めたフライパンでササっと完成。


 水と生クリームで煮ていくこのレシピ、ペンネから出るとろみも手伝って、けっしてシャバシャバにならず、期待通りにまったりとしたソースに仕上がる。ひと口食べれば表面の筋にも穴にも余すところなくソースが絡んだペンネから、アンチョビの塩気とコクがジワっと溢れ出し、ずーっと噛んでいたくなってしまう。

担々麺風パスタ

 少しこんがりめに炒めたひき肉に、練りごまと甜麺醤のコッテリソースが絡んだ汁なし担々麺風パスタは、ピリリと刺激的で本格的な味わい。


  煮込む過程で担々ソースがしっかり染み込んだスパゲッティがリッチさを底上げし、普通の汁なし担々麺が二度見してきそうな濃厚パスタに仕上がった。スパイスづかいの名手でもある若山さんならではの、中華とイタリアンの垣根を飛び越えるヤミツキの一皿だ。

カルボナーラ

 カルボナーラづくりのゴールは、トロッとした卵ソースにある。それも、フライパンひとつで大成功。


 若山さんが提案するカルボナーラの作り方は、失敗しにくいよう、生クリームを少し加えたバージョンだ。「卵だけで作る本場のレシピだと、どうもスクランブルエッグになりがちで……」と悩める方は、ぜひこのレシピを試してみてほしい。

ナッツ入りミートボールのトマトパスタ

 最終章「ごちそうパスタ」には、食卓にのぼるのを想像しただけでニンマリしちゃうような豪華メニューが並ぶ。特にチーズソースがとろんとかかった「大きな煮込みハンバーグのパスタ」や、かたまり肉を使った「豚肩ロースのバスク風パスタ」などは、大皿でドンと出すのが似合いそうだ。

 今回作った「ナッツ入りミートボールのトマトパスタ」も然り。大皿から一人分に取り分けてもなお、ごちそう感が溢れ出す。


 ミートボールはとても成形しやすく、手にタネがくっつくことなく気持ちよく丸められる。ハリがあり煮崩れず、それでいて食べると口の中でふわっとほどける。

 肉のだしをたっぷり吸ったスパゲッティを噛み締めながら、次に作るときは大皿に盛ったまま、「ルパン三世 カリオストロの城」のルパンと次元のように、家族と奪い合って食べることを想像してしまった。

 もともとパスタは忙しいときのお助けメニューとしても重宝していた料理だが、お湯を汲んで沸かすことを省いた「フライパンパスタ」のセオリーを学んでからグッと手軽なものになった。洗い物が少ないのは、食後に早くひと息つきたい疲れた日にもありがたい。

 前菜やサラダなどのサイドディッシュの簡単レシピも多く掲載されている『FRYING PAN PASTA フライパンパスタ』は、おせちに飽きてきた年始の食卓を支えてくれる、頼もしい味方にもなるだろう。

■大信トモコ
元Supersnazz、現在はTweezersとRock Juiceで活躍中のベーシスト/ライター/シュフです。趣味の料理本集めで見つけた、役立つ本を紹介します。Twitter

■書籍情報
『FRYING PAN PASTA フライパンパスタ』
若山曜子 著
定価:1,300円+税
出版社:主婦と生活社
公式サイト

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