またやられた！　それが偽らざる印象。『薄氷の殺人』でベルリン国際映画祭金熊賞、銀熊賞をＷ受賞した中国の気鋭監督、ディアオ・イーナンの5年ぶりになる新作『鵞鳥湖の夜』は昨年のカンヌ国際映画祭で、アカデミー賞まで受賞し、世界的な大ヒットを記録した『パラサイト 半地下の家族』と並んでアジア発の衝撃をもたらしたというが、それは十分に納得できる。 “ハリウッド・レポーター”誌の「ザラついた現代中国を舞台にした、先鋭的なフィルムノワール」という評は言い得て妙で、暗闇の魅惑に満ちたヴィジュアルは、警官殺しの逃亡犯や美しい謎の女などの登場人物が複雑に絡み合いながら進んでいくストーリーとともに、観る者を夢幻的にして迷宮的な陶酔へと誘っていく。 撮影も照明もセンスは超一級だが、『ロングデイズ・ジャーニー　この夜の涯てへ』の美術監督が仕事をしているのにも納得。そしてこれも中国とフランスの合作。何か新しいうねりが起きている。