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『監察医 朝顔』が向き合う東日本大震災からの10年 上野樹里×柄本明の息を呑む芝居

リアルサウンド

21/3/2(火) 6:00

 2021年3月11日。もうすぐあの日から10年が経とうとしている。

 『監察医 朝顔』シーズン2(フジテレビ系)3月1日放送の第16話、そして3月8日放送の第17話は、東日本大震災を強く意識した作りとなっている。最終章「家族の時間編」の括りでありながら、いわば前後編で紡がれるシーズン1を含めた物語のクライマックスにも取れる。

 第16話で描かれるのは、遺族にとっての幸せとは何か。危篤状態の浩之(柄本明)に朝顔(上野樹里)は歯の結果を里子(石田ひかり)のものだったと伝えると決めていた。しかし、それは40km離れた宮城県の女性のもの。朝顔は嘘をついてでも、祖父には最後に娘に会えたと思いながら天国に行ってほしかった。「おかえり」と言ってほしかったのだ。

 危篤状態から目を覚ました浩之の元に、朝顔が駆けつける。つぐみ(加藤柚凪)から代わりにと手渡されたペンギンのぬいぐるみを横に、浩之は夢に里子が出てきたと嬉しそうに話す。里子が夢に出てきたのは初めてのこと。その姿は若く、まだ仙ノ浦にいた頃の、高校生のおさげ姿の里子。朝顔が生まれる前の、今では浩之だけが記憶している娘の姿。

「やっと会えたよ。寂しかったよ」

 朝顔はその言葉に、浩之をずっと一人にしてしまっていたのだと自分を咎めてしまう。動揺もあったのだろう。浩之を目の前にし、朝顔は歯の話題すらも言い出せぬまま、部屋を後にしていった。左右に動く視線と震える声、合わせる顔がないというように背中を見せる朝顔に、浩之はもしかしたら「じいちゃん、あのね……」の先の言葉を感づいていたのかもしれない。

「じいちゃんがこんなにも会いたかったお母さんのこと、嘘ついてじいちゃん何にも知らないまんま死んじゃって、それで本当にじいちゃん救われるのかなって」
「全部、私がお母さんを理由にしてこの場所を避けてたから。じいちゃんを一人にしたのは私だと思う」

 この言葉が意味するのは、「孤独編」は平(時任三郎)や桑原(風間俊介)だけでなく、浩之もその物語の中にいたということ。劇中では朝顔をはじめ、平やつぐみらが浩之に何度も会いに来ていたが、10年間という年月を考えると一人の時間の方が圧倒的に長かったであろう。その寂しさを紛らわしてくれたのが、仏壇の引き出しにそっと入れていた、あの歯だった。優しい嘘で取り繕って、浩之は満面の笑みを浮かべただろうか。

 その答えはもう分かりはしないが、誰も一人にしてはいけないというメッセージだけは痛いほどに理解できる。とは言え、朝顔にも生活がある。浩之を一人にしてしまったというのは、今になって気づいたことであり、解決の難しい、現実的にも多く起こっているであろう問題である。

 第17話では、ついに里子の骨が遠く離れた青森の地で見つかる。里子を抱きしめ、むせび泣く平。雪の降る青森からそのまま朝顔と平は里子と3人で故郷の仙ノ浦へ。娘との再会に浩之は何を思うのか。3月11日を前に『監察医 朝顔』が放つメッセージとは。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

■放送情報
『監察医 朝顔』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~放送
(2020年秋・2021年冬2クール連続)
出演:上野樹里、時任三郎、風間俊介、志田未来、中尾明慶、森本慎太郎(SixTONES)、藤原季節、斉藤陽一郎、坂ノ上茜、田川隼嗣、宮本茉由、辰巳雄大(ふぉ~ゆ~)、加藤柚凪、戸次重幸、平岩紙、三宅弘城、杉本哲太、板尾創路、山口智子、柄本明ほか
原作:『監察医 朝顔』(実業之日本社)
脚本:根本ノンジ
プロデュース:金城綾香
演出:平野眞、阿部雅和
制作:フジテレビ
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/asagao2/

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