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いま、最高の一本に出会える

coldrain、Sons Of Texas、OUTRAGE……新旧メタルバンドが考える伝統の保守と進化

リアルサウンド

17/10/22(日) 13:00

 こんにちは、西廣と申します。本サイトではロック/ポップス/アイドルなどジャンル問わずいろいろ書かせてもらってますが、普段進んで聴く機会が多いのは国内外のハードロック/ヘヴィメタル(以下、HR/HM)やラウドロックなど、激しくて音のデカい音楽……単純なんですね、そういう音がカッコいいと信じているんですから(笑)。

 そんな私が今回から新譜キュレーションコーナーに仲間入り、しかも大好きなHR/HMやラウドロックの新作を紹介していくことになりました。同ジャンルは今や、ポップスやアイドルにもそのテイストが引用され、日常で耳にする機会が増えていますが、引用元となる“そのもの”を聴くことは少ないのかもしれません。そういう皆さんにとって、この連載がHR/HMに興味を持つきっかけになったなら非常に嬉しいです。

 さて、第1回のテーマは「新旧メタルバンドが考える伝統の保守と進化」。国内の音楽専門誌を見ると、HR/HMの場合は特にここ20年ほど表紙を飾るアーティストに変化がないように感じます。それは新しく魅力的なバンドが登場していないという意味ではなく、“HR/HMとはこういうもの”という固定観念が他ジャンルと比べて異常に強いからじゃないかと思うのです。だからなのか、モダンなサウンドを取り入れたバンドたちはここ日本ではラウドロックと括られ、HR/HMとは別モノと認識されることが多い。旧来のリスナーはそういった新世代バンドに苦手意識を持ち、ラウドロックから入った若年層はそのルーツとなる旧世代バンドを“違う世界”と感じている……なんてことが多いんじゃないかと、身の周りを見て感じます。だからこそ、“ジャンルとしてのHR/HMの進化”と“守るべきもの”が凝縮された、今回紹介する5枚の新作にぜひ耳を傾けてもらえたらと思います。

 1組目はアメリカ・テキサス州サンアントニオ出身の4人組バンド、Nothing More。彼らは2003年結成とキャリア的には中堅なのですが、2014年にMotley CrueやPapa Roach、In Flames、Five Finger Death Punchらが所属するアメリカの大手マネジメント/レーベル<Eleven Seven Music>とアルバム5枚の長期契約を結び、同年にアルバム『Nothing More』でメジャーデビュー。翌2015年2月には日本のVAMPSが日本武道館で実施したイベント『VAMPARK FEST』で初来日も果たしているので、その名前を目にしたことがある人も少なくないかもしれません。彼らのサウンドはThrice以降のポストハードコアやLinkin Park以降のニューメタルに近いものがあり、いわゆるHR/HMとは若干イメージが異なるものかもしれません。しかし、メンバーのルーツにはMetallicaやKorn、Deftones、Toolなどの名があることから、そのスタート時点にHR/HM系のラウドな音楽があったことは明らか。HR/HMというジャンルにはこだわらなかったものの、自分たちが信じるラウドな音楽を追求した結果、現在のスタイルにたどり着いたわけです。

Nothing More『The Stories We Tell Ourselves』

 先月発売された2年ぶりの新作『The Stories We Tell Ourselves』で聴けるサウンドは、前作で提示したスタイルをよりブラッシュアップしたもの。ダンスミュージックやインダストリアルミュージックからの影響下にあるシーケンス音を同期させたバンドサウンドは、重さよりも軽やかさを重視したもので、ひたすら気持ち良く楽しめる。ミドルテンポを軸にしながらも、時にアップテンポになったり時にスローになったりすることである程度緩急がつき、また本編中何度か登場する1分前後のインタールードのおかげで全体が引き締まった印象も強い。ジョニー・ホーキンス(Vo)によるボーカルも、スクリームよりハイトーンでエモーショナルなメロディを歌い上げるほうが多いので、歌モノロックとしても十分に機能しています。ギターリフを前面に押し出した王道HR/HMとは一線を画するものの、こうやってHR/HMは形を少しずつ変えてその伝統を未来に残そうとしている。そういった意味でも、彼らのようなバンドはもっとここ日本でも評価されるべきだと思います。

Nothing More – Don’t Stop feat. Jacoby Shaddix (Official Video)

 続いて2組目は、アメリカ・テキサス州マッカレン出身の5人組バンド、Sons Of Texasです。彼らは2013年結成とまだ歴史も浅く、海外では2015年にデビューアルバム『Baptized In The Rio Grande』をリリース。同作はここ日本でも早い段階から、輸入盤を扱う大手CDショップでプッシュされていたので、すでにその名を知っていたというメタルファンは多いことでしょう。そして2016年10月開催の『LOUD PARK 16』での初来日が決まったことから、同年8月にデビュー作が日本盤化。ライブも好評を博し、音専誌『BURRN!』の「2016年度BURRN!読者人気投票」内「BRIGHTEST HOPE(新人部門)」でチャンピオンに選出されるなど、ここ日本でもすでに高く評価されています。

Sons of Texas『Forged By Fortitude』

 早くもリリースされた2ndアルバム『Forged By Fortitude』は前作の路線を踏襲した、ヘヴィでラウドで男臭いヘヴィメタルが満載。90年代のPantera、00年代のLamb Of Godが提示してきた“ローチューニングで低音を効かせた、適度にリズミカルなミドルテンポのヘヴィサウンド”という伝統は彼らにも引き継がれているのですが、だからといってスクリーム一辺倒になることなく、古典的なHR/HMにも通ずるメロディアスさも色濃く表れている。つまり、モダンなサウンドメイキングやアレンジが施されているものの、軸になるメロディは従来のHR/HMそのものなのです。だからこそ、彼らを呼ぶ際に“Pantera meets Nickelback”という例えが挙がるのも頷ける話です。ダイムバッグ・ダレル(Panteraのギタリスト)を思い浮かべてしまうギターフレーズが飛び出したり、エモーショナルかつ表情豊かな歌声が前作以上だったりと、とにかく聴きどころの多い“現代的な王道HR/HMアルバム”ではないでしょうか。

Sons Of Texas – Beneath the Riverbed (Official Music Video)

 3組目は、ここ日本からcoldrainの新作『FATELESS』を紹介させてください。ワーナーミュージック移籍第1弾、前作『VENA』から2年ぶりのアルバムとなる本作は、すでに国内では10月23日付けオリコン週間CDアルバムランキングで8位にランクインするヒット作となっています。彼らについては過去に私の連載(参照:coldrainは国内ラウドロックと海外メタルをどう融合させ、オリジナルな音楽を作り出したか)で紹介したとおり、日本のHR/HMシーンの転換期である2008年にデビューし、海外のメタル/ポストハードコア/スクリーモなどからの影響を日本人として昇華させ個性を確立。近年は海外のマネジメントと契約し、現地でのアルバムリリースやワールドツアーも積極的に展開しています。

coldrain『FATELESS』

 通算5枚目のフルアルバムとなる今作『FATELESS』ではTriviumやAlter Bridge、Slashなどを手がけたエルヴィス・バスケットがプロデュースを担当しており、これまでに彼らが作り上げた個性をさらに一段高い場所へと導くことに成功しています。このバンドの場合、Masato(Vo)による日本的な繊細さを伴うメロディが海外ではどう評価されるのか心配になることもあったのですが、本作に関してはそういった点がまったく気にならず、むしろ海外に出て行ったときにそのポイントが絶対的な強みになることを強く証明しているようにも感じられます。海外では00年代以降に登場したメタリックなバンドと同じラインにいながらして、ここから頭ひとつふたつ抜き出るための武器は、実はこうした部分になるのだろうなと、本作を聴いて改めて実感。このメロディセンスは、80年代以降のメロディアスなハードロックを愛聴してきた諸先輩方にも触れていただきたい、日本が世界に誇る至宝だと信じています。

coldrain – ENVY (Official Music Video)

 4組目はフランス・マルセイユ出身の4人組バンド、Dagobaです。結成は1997年ということで、今年20周年を迎えたばかり。そのサウンドはアメリカのモダンメタル……PanteraやMachine Headなどグルーヴィーなサウンドを信条とするメタルバンドと、Fear FactoryやStrapping Young Ladといったインダストリアルテイストのメタルバンドからの影響が強く、そこにヨーロッパのバンドらしい、クラシカルかつシンフォニック要素が加えられた個性的なスタイルを確立。これまでに6枚のアルバムを発表しており、今年5月には初来日公演も実現しました。

Dagoba『Black Nova』

 通算7枚目となる本作『Black Nova』は<Jive / Epic>(フランス国内)、<Century Media Records>(フランス以外)と大手レーベルからのリリース。90年代以降のモダンなヘヴィメタルを軸に置きながらも、EDMやインダストリアルテイストのシーケンスサウンド、劇的かつシンフォニックなシンセサイザーを効果的にフィーチャーすることで、単なるモダンメタルで終わらない独自性を作り上げています。これは最初に紹介したNothing Moreにも言えるのですが、その楽曲構成や音の組み立て方はどこか映画のサウンドトラック的でもあり、そういったドラマチックなスタイルは古き良き時代のHR/HMと通ずるものがあると言えるでしょう。ホラー映画を思わせるアートワーク含め、その個性的な世界観はヘヴィでダークでラウドな音楽が好きな人には必ず引っかかるものがあるはず。ヨーロッパでHR/HMというとイギリスやドイツ、北欧の印象が強いですが、フランスにもこうして長きにわたり伝統を守り続けてきたバンドがいることを、この機会に知ってもらえたらと思います。

【ダゴバ / Dagoba】「インナー・サン」MV

 最後の1組は、今年デビュー30周年を迎えた日本のヘヴィメタルバンド、OUTRAGEです。80年代前半にMetallicaや、その彼らが敬愛したNWOBHM(New Wave Of British Heavy Metal。70年代末のパンクシーンを経てイギリスの登場した、新世代のブリティッシュヘヴィメタル)バンドなどから影響を受けたOUTRAGEは、ここ日本で欧米にも匹敵するスラッシュメタルサウンドを確立。90年代に入ると『THE FINAL DAY』(1991年)や『SPIT』(1993年)といったアルバムを海外でリリースし、Nuclear AssaultやG.B.H.、Pantera、Corrosion Of Conformityなどの来日公演ではサポートアクトを務めるなどして、洋楽メタルファンからも高く評価されてきました。1998年にはボーカルの橋本直樹が一度脱退するものの、2008年には奇跡の復帰。以降もマイペースな活動を続けており、最近では『LOUD PARK 17』での熱演が記憶に新しいところでしょう。私もここで久しぶりに彼らのライブを観たのですが、往年の代表曲と最近の楽曲をバランスよくミックスしたセットリストに「過去を引き継ぎ、今を生きる」という彼らの信念を強く感じたところでした。

OUTRAGE『Raging Out』

 その『LOUD PARK 17』開催直前に発表された最新アルバム『Raging Out』はデビュー30周年にふさわしく、彼らの“これまで”と“現在”、そして“これから”がバランス良く混在した、王道のヘヴィメタルアルバムに仕上がっています。時代によってはその当時主流だったモダンなサウンドからの影響を打ち出してきた彼らですが、本作では自身のルーツと真正面から向き合い、オールドスクールなハードロックやタフでハードな爆走ロックンロール、ヨーロッパの香りがするパワーメタル、Metallica以降のスラッシュメタルなど、彼らが“どこから来たのか”がかつてないほど克明に描かれています。しかし、それらが単なるノスタルジーで終わることなく、しっかり“今のOUTRAGEの音”として表現されている。30数年にわたり活動してきた彼らだからこそできる、豪快な表現方法なのかもしれません。間違いなく本作は、彼らのキャリア上でも重要な作品になるはず。だからこそ、国内のみならず海外のリスナーにも胸を張って届けたい1枚です。

Outrage – Doomsday Machine

■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

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