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『悪の偶像』イ・スジン監督が明かす制作の裏側 チョン・ウヒの起用理由も明かす

リアルサウンド

20/6/26(金) 10:00

 韓国映画『悪の偶像』が6月26日より公開されている。

 第69回ベルリン国際映画祭で上映され、ファンタジア国際映画祭で作品賞と主演男優賞を受賞した本作は、『シュリ』のハン・ソッキュと『オアシス』のソル・ギョングがW主演を務めるサスペンス・ノワール。ある“ひき逃げ事件”をきっかけに交錯していく“加害者の父”と“被害者の父”の運命を描く。事件のカギを握る“消えた目撃者”リョナ役で、『母なる証明』『サニー永遠の仲間たち』『ハン・ゴンジュ 17才の涙』のチョン・ウヒが出演している。

参考:『悪の偶像』は韓国ノワールの進化型!? ポン・ジュノに続く才能を持つイ・スジン監督の手腕

 監督を務めたのは、2004年に韓国で実際に起きた女子中学生集団暴行事件を映画化した『ハン・ゴンジュ 17歳の涙』が高く評価されたイ・スジン。リアルサウンド映画部では、長編2作目となるイ・スジン監督にリモートでインタビューを行った。

ーー前作『ハン・ゴンジュ 17歳の涙』は実在の事件を元にしていて、今作『悪の偶像』はフィクションですが、物語の骨子はどのように考えていったのでしょう?

イ・スジン:実はもともとこの作品のシナリオを書いたのが、13年前なんです。なので、『ハン・ゴンジュ』を撮るよりずっと前から温めていた物語だったのですが、当時書いたものはソル・ギョングさんが演じるジュンシクが、ひとり主人公となるようなワントップの構成でした。『ハン・ゴンジュ』を撮った後に、改稿をし変わっていきました。作品のテーマは変わっていないのですが、見識が変わったんです。中でも大きく変わったのが、前半と後半で全く違うトーンの作品になっているところ。前半は2人の父親の物語を中心に進んでいきますが、中盤以降にはチョン・ウヒさんが演じるリョナが登場し、新しい構成になっていく。このようにガラリと雰囲気が変わる構造は初稿の段階から大きく変えた部分です。

ーーおっしゃる通り、リョナの登場から全く違う作品のようなトーンに変わり、先の見えない展開でした。このキーパーソンを描くにあたり意識したことを教えてください。

イ・スジン:実は13年前に書いた初稿にも、リョナやハン・ソッキュさんが演じるミョンへといったキャラクターは存在したのですが、その比重は大きくありませんでした。修正を重ねる過程で2人の重要性が増していったのですが、中でもリョナはこの作品にどうしても必要な存在でした。それは、ジュンシクというキャラクターをより強く見せるためでもあります。ジュンシクは自身のことを被害者だと思っているのですが、彼は自分の息子を結婚させるために、人をお金で買ったという過去を持っています。それを考えると彼は被害者であると同時に加害者でもあるわけで、この事実をジュンシクに悟らせるためにリョナという存在がカギでした。

ーーリョナを演じたチョン・ウヒさんは、監督の前作『ハン・ゴンジュ』で主演を務めています。オファーの経緯を教えていただけますか?

イ・スジン:『ハン・ゴンジュ』を撮った後に脚本を書いていると、やはりチョン・ウヒさんを思い浮かべないわけがありませんでした。しかし、当初の考えでは、リョナは隠しておきたかったキャラクターで、そこがネックでした。このキャラクターの存在がベールに包まれた形で公開を迎えたいと考えていて、どうしても有名な認知度のある女優さんを起用すると、宣伝でも名前が出てしまうこともあり、リョナ役には無名の新人女優をオーディションで発掘しようと考えていたんです。

ーーチョン・ウヒさんが出演するとなると話題にもなりますし、事前にその役柄を明かさないわけにはいかなくなりますよね。

イ・スジン:でもそんな風にして、オーディションや女優さんとのミーティングを重ねる中で、どうしてもチョン・ウヒさんの顔が強く浮かんでしまいました。リョナという役柄は、外見的にも内面的にも非常に難しい役どころで、このキャククターを表現できる人を考えたときにやはりチョン・ウヒさんしか思いつきませんでした。そんな紆余曲折があり、シナリオを渡したのです。今となっては笑い話ですが、チョンウヒさんから「水臭いじゃないですか。真っ先に私にお話をくれればよかったのに」と言われてしまいましたね(笑)。『ハン・ゴンジュ』を撮っていたときは、撮影も準備も非常に短い期間だったので、チョン・ウヒさんについてあまりじっくりと知る時間が取れなかったんです。ですが、この『悪の偶像』で改めてご一緒して、深く彼女のことを知ることができました。『ハン・ゴンジュ』と比べてもパワーアップした姿を見せてくれていると思います。

ーー監督ご自身は、本作が長編2作目ということですが、両作とも観終わった後に、ズシンと残るような社会派な作品を撮られている印象です。映画を撮る原体験はなんだったのでしょう?

イ・スジン:原体験みたいなものは全くないんです(笑)。もともと映画監督になるつもりもなく、初めて短編映画を撮ったときもそういった実感はありませんでした。私はもともと大学で写真を専攻していて、卒業する頃に「自分の人生で一本くらい映画を撮りたいな」と軽い気持ちで撮ったのが始まりでした。その作品が映画祭で上映されることになり、そこで初めて映画祭にも行ったんです。写真は、ギャラリーに展示されるのですが、フィードバックがないんですよ。自分の作品をどう受け取ってもらえたのか聞く機会がないんです。しかし、映画の場合、自ら観客の人がいろんな反応を聞かせてくれて、私にとってはそれがまさに新世界に踏み込んだ感覚でした。ということで、私自身は映画をかなり遅く、一生の覚悟もないままスタートしました。一本撮り終える度に「もう一本撮ってみようかな」という気持ちの繰り返しでここまで来たんです。

ーーここまでの作品は、監督ご自身撮りたい作品のごく一部ということですね。

イ・スジン:もちろんです。まだまだ全然違う作品も撮りたいと思っています。次もおそらく人に関する物語を撮ることになると思いますが、できれば『ハン・ゴンジュ』や『悪の偶像』よりは明るい映画になるといいなと思っていますね(笑)。

(取材・文=安田周平)

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