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LEO IMAI×人間椅子が繰り広げた異色の2マン公演 両者の情熱ぶつけ合う刺激的なライブを見た

リアルサウンド

19/10/2(水) 16:00

 LEO今井が自身のバンド・LEO IMAIを率いて、自主企画ツーマンツアー『大都会ツアー』を全国5都市で開催中。初のカバーアルバム『6 Japanese Covers』を携えた同ツアーには、ゲストとして人間椅子、eastern youth、ZAZEN BOYS、前野健太、呂布カルマが参加している。2019年9月24日の渋谷クラブクアトロ公演では、対バンに人間椅子を迎え、まさに異種格闘技戦と呼ぶべき貴重なステージが展開された。

参考:人間椅子、30年歩み続けた地獄めぐりの孤高の道 ストイックな生き様を見せつけた豊洲PiT公演

 先に登場したのは、人間椅子。オープニングは2017年のアルバム『異次元からの咆哮』収録曲「超自然現象」だ。変拍子を交えたリズムアレンジ、キャッチーにして豪快なギターリフ、〈来る 来る ミラクルパワー〉というフレーズがひとつになったこの曲は、“ハードロック×怪奇現象”を軸にした人間椅子の神髄とも言えるロックナンバー。爆発的な音量、異形のメンバーのパフォーマンスを含め、このバンドにしか生み出せないムードが濃密に溢れ出す。

 さらに30周年のタイミングで発表されたニューアルバム『新青年』から「鏡地獄」、1990年にリリースされたアルバム『人間失格』の収録曲「賽の河原」を続けて披露。70年代~80年代のハードロック、ヘビィメタル、プログレを根っこに持つバンドサウンド、そして、大正から昭和の日本の叙情性、江戸川乱歩に象徴される文学的世界を融合させた人間椅子のスタイルは、30年経ってもまったく変わっていない。というか、ブレようがない。

 この一貫した美意識や世界観がこのバンドの強みなのだーーと改めて実感していたら、和嶋慎治(Gt/Vo)が「30年やってるんだけど、やってることが変わらない(笑)」と楽しそうに話し始める。ここ数年の再ブレイク・再評価に伴い、若いオーディエンスから“かわいい”と言われることもある和嶋だが、ステージ上の彼(53歳)は確かにチャーミングだ。

 「どだればち」では、LEO今井がステージに登場。『6 Japanese Covers』にも収録されたこの曲を本家本元の人間椅子とセッションできるとあって(このミニアルバム制作のきっかけは、昨年9月にLEO今井が初めて人間椅子のライブを観て、感銘を受けたことがきっかけだった)、LEO今井のテンションも最高潮。鋭さと力強さを兼ね備えたボーカルによって、津軽弁を交えた歌詞、津軽民謡を想起させる〈あらどした〉という合いの手を入れ、ステージを動き回りながらメンバーと絡む。その個性的なステージングは人間椅子のメンバーにも影響を与え、和嶋のギターソロも凄まじいテンションを生み出した。「LEOくんに煽られて、ギターソロがいつもより長かった(笑)」(鈴木研一、Ba/Vo)という化学反応(?)も起きた、超レアなコラボだったと思う。

 さらに超ヘビィなリフと弱者のルサンチマンを描いた歌詞がひとつになった「無情のスキャット」、ナカジマノブ(Dr/Vo)がボーカルを取る「地獄小僧」、官能と恐怖が押し寄せる「雪女」など、唯一無二としか言いようがないロックワールドが炸裂。高速のアッパーチューン「針の山」で超絶テクのギターソロ、骨太かつメロディアスなベースライン、ツーバスによる強靭なビートが一体となったバンドサウンドを爆発させ、オーディエンスの熱狂を引き出した。

 続いてはLEO IMAI。「お経を唱えます」といきなり歌い出し、バンドメンバーの岡村夏彦(Gt)、シゲクニ(Ba)、白根賢一(Dr)も声を重ねる。肉声によるグルーヴから始まったのは、「Omen Man」(アルバム『Made From Nothing』収録)。メンバーそれぞれの音がガッツリとぶつかり合い、強固にしてしなやかなーー矛盾しているようだが、まさにそういう感じなのだーーアンサンブルが立ち上がる。

 人間椅子に匹敵する爆音を突き抜けるようにLEOのボーカルが響き渡り、〈鉄と飯 Metal and food〉という刺激的なフレーズへと結びつく。さらに研ぎ澄まされた近未来的サウンドと古き良きブルースロックが混ざり合う「Bite」、直線的なビートと旧約聖書をモチーフにした歌詞、鋭利な手触りのメロディがひとつになった「Fresh Horses」、「次は呑んだくれの歌を」(LEO今井)と紹介された“ダークなカントリーミュージック”と称すべき「Wino」など、アルバム『VLP』の収録曲を続けて披露。メタル、グランジ、ニューウェイブ、カントリー、ブルースといったLEOのルーツミュージックを内包させたアンサンブル、メンバーそれぞれの個性的なプレイヤビリティが一体化したサウンドは、ここにきてさらなる進化を遂げている。

 この後は『6 Japanese Covers』の曲を続けて演奏。まずはZAZEN BOYSの「ポテトサラダ」。緊張感あふれるファンクネスは原曲に沿っているが、メタリックな音像を加えることで、完全にLEO IMAIの楽曲として昇華されていた。このカバー集に対して向井秀徳は「LEO今井が病的なほどヘヴィーなカバーをブチかました!」というコメントを寄せているが、まさにその通りだ。そして、「ファックミー」(前野健太カバー)では、(なぜかこの曲だけ)サングラスをかけたLEOが豊潤なボーカルを響かせる。破壊的な手触りとロマンティックな表現を併せ持った歌は、原曲の新たな魅力を引き出すと同時に、シンガー・LEO今井のポテンシャルの高さを明確に証明していたと思う。

 『6 Japanese Covers』にボーナストラックとして収録された唯一のオリジナル曲「Fandom(Remix For A Film)」(映画『プリズン13』主題歌)でダークゴシック的な世界を描き出し、ライブは後半へ。強度の高い音がぶつかり合い、確固たる音楽的ストラクチャーへとつながる演奏はまさに圧巻だった。自身の精神と肉体を研ぎ澄ませ、まるで己と戦っているようなLEOのステージングも強く心に残った。

 その頂点は本編ラストの「Tokyo Lights」。都市の光景を描いたリリック、ニューウェイブとヘビィロックが共存するアレンジ、どこにも曖昧なところがなく、すべての音が完全に一体化した演奏と歌は、(現時点における)LEO今井の真骨頂だと思う。

 アンコールでは、まずLEOがひとりで登場し、Black Sabbathの「Changes」を鍵盤で弾き語り。最後は人間椅子のメンバーも参加し、再び「どだればち」をセッション。一夜限りの貴重なライブは大団円を迎えた。人間椅子とLEO今井(LEO IMAI)。ルーツミュージックへの敬意、独創的なクリエイティビティ、ライブにかける鋭い情熱が同時に感じられる、驚くほど刺激的で意義深いイベントだったと思う。2019年10月25日に東京・マイナビBLITZ赤坂で開催される『大都会ツアーファイナル』(LEO IMAI x ZAZEN BOYS +GUESTS:前野健太・呂布カルマ)にも大いに期待したい。(森朋之)

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