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2020年、いつもと違う年 その3 TBSラジオ宮嵜守史氏×ウエストランド

ナタリー

20/12/9(水) 17:00

左からウエストランド井口、河本、TBSラジオの宮嵜守史プロデューサー。

新型コロナウイルスの流行で図らずも特別な年になった2020年を、お笑いに携わる人たちと気のおもむくままに振り返るインタビュー企画。第3回ではTBSラジオ「JUNK」などを担当する宮嵜守史プロデューサーと、ウエストランドの3名に話を聞きました。

取材 / 成田邦洋・狩野有理 文・撮影 / 狩野有理

TBSラジオ宮嵜守史P×ウエストランド インタビュー

僕は無観客のほうがよかったです

──今日はよろしくお願いします。

ウエストランド井口浩之 これってどういうインタビューなんですか?

──新型コロナウイルスのためにいつもと違う1年になった今年をざっくばらんに振り返ろうという企画です。みなさんには特に「爆笑問題カーボーイ」(TBSラジオ)を爆笑問題・田中さんがコロナの影響でお休みした今年8月、9月の放送回のことをお聞きしたくて。宮嵜さんには代役を立てるまでのいきさつ、ウエストランドのお二人には田中さんの代わりに出演することになった8月25日の話を中心にお伺いさせてください。

井口 ああ、なるほど。どういう3人?と思って(笑)。

──それは失礼しました(笑)。田中さん不在の「カーボーイ」最初の週を共に乗り切ったお三方です。まずは、コロナが日本でも流行し始めた頃のことは覚えていますか?

井口 僕がコロナっていうものを身近に感じたタイミングは、出場していた「R-1ぐらんぷり2020」の決勝が無観客になるらしい、と聞いた頃です。それまでは無観客ライブ自体がほとんどなかったですし、自分たちも出たことがなかったから、賞レースが無観客ってどうなっちゃうんだろうと思いましたね。

──「R-1」の決勝が無観客で開催されると発表があったのは2月27日のことでした。

宮嵜守史プロデューサー 確かに2月の前半くらいまでは“よその出来事”っていう印象はみんなどこかにあったよね。TBSラジオでは2月に「RADIO EXPO ~TBSラジオ万博2020~」というイベントを開催したんですが(参考記事:ウーチャカ&チャンサカ、爆笑太田&もぐらのカップル成立!2組が即席ラジオ)、終わってからいわゆるパンデミックな状態になって、「ギリギリやれていたんだね」って振り返ってみて実感しました。

──河本さんは?

ウエストランド河本太 2月の終わりにK-PROさんのライブが全公演中止になって、最初は1週間休演と言っていたのが10日になり、2週間になり、どんどん延長されていって、「あ、これは大変なことだぞ」と。結局そこから2カ月くらい芸人さんに会わずに過ごしました。

井口 せっかく「R-1」がんばって、敗者復活で2位になったのに誰からも何も言われませんでしたからね。普段だったら「よかったよ」とか「(決勝に)行ったと思ったのに」とか言ってもらえるんですけど、ライブが再開しないまま自粛期間に突入したから誰にも褒められなかったっていうのはめちゃくちゃ覚えてます。

──井口さんは敗者復活ステージに出場したわけですが、無観客の賞レースはどんな感じでしたか?

井口 無観客と言ってもスタッフさんがいたし、特に僕の場合はもともと芸人とか裏方さんに笑ってもらうような変なネタだったので、そこまでやりにくいなっていう感じはなかったです。ネタによってはしんどそうな人もいましたけど。

宮嵜 こういう世の中になって、基本的なことだけどお客さんの笑い声って本当に大切だなと思ったよね。演者さんにとってももちろんだけど、自分が面白いと思ったところで隣の人も笑ってる、じゃあ自分も笑っていいんだっていう確認ができたほうが見ている人も安心して笑えるじゃない。

井口 その相乗効果で笑い声が増えて、芸人も乗ってきますしね。

──11月初旬現在、最近は劇場も使用する座席数を以前同様に戻しつつあります。

井口 それこそ昨日の「M-1」2回戦は吉本(興業)さんの劇場でやりましたけど、8割まで増やしていました。久しぶりにお客さんがたくさん入っている舞台に立てて単純にうれしかったです。あれだけの笑い声があるとやっぱりやりやすい。

河本 僕は緊張してネタ飛んじゃいました(笑)。

井口 その様子はぜひ「M-1」のYouTubeで確認してください。明らかに飛んでるところがあると思うんで!

河本 だから僕は無観客のほうがよかったです。

井口 そんな芸人いないんだよ!

相方としゃべれるのがうれしくて泣くな!

──テレワーク、リモートワークが推奨されるようになりましたが、TBSラジオでは働き方に変化はありましたか?

宮嵜 どの企業もそうだと思いますが、打ち合わせや会議はできる限りリモートでやるようになりました。ただ、リモートのやりやすさとやりづらさが常に共存している感じです。

──宮嵜さんはリモートは得意なほうですか?

宮嵜 僕は苦手ですね。

井口 得意、不得意ありますよね。

宮嵜 リモート飲み会が流行ったときに(おぎやはぎ)小木さんの奥さんとリモート飲みしたんですよ。

井口 奈歩さんと?(笑)

宮嵜 そうそう。奈歩さんだから楽しくできましたけど、関係性の薄い人だと難しいだろうなって思いました。

井口 けっこうZoomで会話するのってテクニックいるんですよね。しゃべるぞって雰囲気出してからしゃべらないと。リモート酔いというか、あの分割の画面もだんだん見飽きてきて。

──ウエストランドのお二人は、いつもは通称“謎の屋敷”で収録して配信している「ぶちラジ!」にいち早くテレワークを導入して自宅から生配信していましたよね。

井口 僕ら自体はそういうのに疎いんですけど、スタッフさんたちが大得意な人たちだったからラッキーでしたね。Zoom配信もかなり早い段階からやりましたし、それに飽きたら今度は僕がやっているMinecraftっていうゲームの空間から配信したり。

──そんな期間を経て、久々に対面した回では河本さんがすごくうれしそうでした。

河本 泣くほど笑いましたね。

井口 僕はその前もちょこちょこお仕事があったんですけど、こいつはマジでずっと外出自粛していて。その収録が自粛明け一発目だったんです。

河本 人と生でしゃべることが久しぶりで興奮しました。涙出るくらいうれしかった。

井口 相方としゃべれるのがうれしくて泣くな! キモいから。でも外出できるようになって芸人と会えるようになったのは本当にうれしかったです。だって楽しいじゃないですか、おしゃべりって(笑)。芸人とのおしゃべりってやっぱり楽しいんですよ。

──宮嵜さんは基本的には出社されている?

宮嵜 そうですね。毎日生放送があるので、家でずっとやるっていうのはできなくて。

井口 ラジオだけはずっと放送されていましたもんね、自粛期間中も。

宮嵜 そうだね。だけど一時はやっぱり考えたよ。アーカイブを流す準備をしておいたほうがいいんじゃないかとか。僕が担当している深夜の番組のパーソナリティって大忙しな人ばかりじゃないですか。一番怖いのが、自分が感染してしまったときに与えるパーソナリティへの影響が大きすぎること。伊集院さんにしても爆笑問題にしても、山ちゃん(南海キャンディーズ・山里)、おぎやはぎ、バナナマン……。ラジオだけの人たちではないし、巨額が動いてるわけですから。

井口 僕もあの時期、爆笑さんに会いたくなかったですもん。自分がうつしたら最悪だから。

宮嵜 だから万が一を考えて、例えば金曜日の「バナナムーン」だったら「ヒムペキ傑作選」とか。一応スタッフに素材を集めてもらって、枠のナレーションだけバナナマンの二人にもらっておこう、と。それで1週分はしのげるので。

──テレビでは傑作選や再放送が当たり前でしたよね。

井口 でも、リスナーとしてはラジオが救いでしたよ。ラジオだけは毎週、通常放送をやってくれていたので。あと会う芸人に「最近どう?」って聞くと、「週1のラジオだけっすねー」って、みんなラジオの仕事が唯一の頼みの綱みたいでしたね。ライブとかテレビの出演はなくなってもラジオだけはあるっていう、それで芸人として保っている部分もありました。

宮嵜 ラジオって、密室にこもってしゃべるからテレビより危ないんじゃないの?という見られ方もするんですが、テレビに比べて関わる人数が圧倒的に少ないんですよ。極端に言えばパーソナリティが1人、中に入っていればいいだけなので。これはコロナがポロッと落とした面白いものの1つですけど、いつも前後で2本録りしているアルコ&ピースとうしろシティでちょっとしたやり取りが生まれたこともありました。アルピーのラジオにうしろシティを乱入させる、みたいなことがこれまでもあったんですが、今はブースに人数制限がある。だから、うしろシティ阿諏訪くんを中に入れる代わりに、アルピーが自分の番組なのにどちらかが出ていくっていう。そういう遊びが生まれたのはコロナ禍という特殊な環境ならではでしたね。

「カーボーイ」ドタバタすぎて記憶あやふやな宮嵜P

──では、ウエストランドのお二人が田中さんの代打を務めた「爆笑問題カーボーイ」8月25日放送回の話に移りましょう。田中さんの妻の山口もえさんがコロナ陽性となり、田中さんは濃厚接触者にあたる可能性があるということで自宅待機となっていました。

井口 僕は家にいたらマネージャーさんから急に電話がかかってきて、「今からTBS行けるか?」と。なんでかわかんないですけど、そういうときっていつも理由を言ってくれないんですよ(笑)。ただ事ではない感じだけは伝わってきましたけど。

河本 シリアスぶるんです。

井口 「いつでもいけるようにしておいてくれ!」みたいに言われて、なんなんだろうってモヤモヤしながら待機していました。

宮嵜 僕は太田光代社長から電話があって、まず田中さんはお休みするとして、太田さんはどうしましょうかっていう話をしました。保健所がいう濃厚接触者にはあたらないけれど、大事をとってTBSラジオに来てもらうのはやめようということになり、赤坂にタイタンの分室みたいな場所があるからそこで収録しようと。実はコロナ禍の影響で「カーボーイ」の収録をそこで何度かやっているんですよ。夕方のチャイムが聞こえてくることありませんでした?

──ああ! そういえばそんなことがありましたね。

宮嵜 そこで収録している回なんです(笑)。換気のために窓を開けておかなきゃいけないから、外の音が入っちゃうっていう。

井口 びっくりですよね。「ぶちラジ!」で救急車のサイレンが入ることはよくありますけど、「カーボーイ」でチャイムって(笑)。

宮嵜 で、太田さん1人よりは誰かいたほうがいいだろうということで、ウエストランドに声をかけることになったんです。その場で光代社長が事務所に確認して、「今日ウエストランドって空いてる? え、河本がバイト!?」みたいな。「何時からTBSラジオに行けるか調べて!」って、本当にバタバタでした。

──河本さんはバイト中だった。

河本 はい。だからケータイをしばらく見ていなかったんですよ。時間が経ってから開いたら、3人くらいのマネージャーさんから鬼のように電話がかかってきていたので、「うわ、終わった」と思いました。何かがバレたなと。

井口 「バレた」ってことは何かしらやってることになるだろ!

河本 でもその中に「社長」ってあったから、これは井口がやらかしたんだろうなと思いましたね。

井口 もうクビ系のな。

河本 で、一番話しやすそうなマネージャーさんに折り返して、事情を聞いたら何かがバレたわけでも、クビでもなかった。

宮嵜 そのときは録音にするか生放送にするかも決まっていなかったんですよ。あれ? 結局どうしたんだっけ?

井口 生放送でした。

宮嵜 太田さんは来たんだっけ?

井口 来ました。……え、そんなに記憶ないんですか!?

宮嵜 本当にコロコロ状況が変わっていったから……。タイタンの分室には俺もいたよね?

井口 いましたよ。そしたら宮嵜さんが「なんか喉が痛い気がする」って言い出して。「俺もしんどい気がしてきた……」とか、完全に気持ちの問題(笑)。

宮嵜 そうだそうだ(笑)。で、太田さんは念のため自分でPCR検査を受けていたんですが、万が一陽性だったときのために火曜日の流れがあるからアルピーにも声をかけていたんですよ。アルピーとウエストランドでやろうと。でも今度は井口くんが少し前に太田さんと会っていたことがわかり、アルピーと河本くんになる可能性もあった。

井口 ドタバタでしたよね。

河本 僕は社長からメールで「今日頼むね。最悪スタジオ1人だから」って連絡をもらっていたんですけど、いやいや、そんなわけないだろうって。

井口 それはヤバいな(笑)。

宮嵜 たぶん、PCR検査の結果が何時に出るかわかんないっていうタイミングだったんだよ。結果が間に合わないようだったら太田さんと井口くんに分室にいてもらって、TBSのスタジオにいる河本くんとつなごうとしていて。だから「(河本が)スタジオに1人」っていうのはそういう意味。

河本 そういうことか。

宮嵜 こんなふうに常に最悪を想定して何パターンも用意しておかないと放送に穴を開けてしまうし、何より人の命にかかわることだから、それを最優先に考えていました。だから面白い面白くないは正直、その段階では考えられなかったですね。

──検査の結果太田さんは陰性で、最終的にはウエストランドと一緒にTBSのスタジオから生放送という形になりました。

井口 僕らとしてはその日急に決まったことが逆によかったです。1週間前に知らされていたら緊張が日に日に高まりますけど、もうやるしかないっていう。それに毎週聞いてるラジオですし、流れとかはわかっていたのでなんとかできました。ただ、その後すごい人たちが代打で出られたじゃないですか。

──田中さんが復帰するまでは、アンガールズのお二人、伊集院光さん、劇団ひとりさんが太田さんのパートナーとして出演しました。

河本 楽しかったですね。

井口 聴くのはな! Twitterで嫌なことも言われたんですよ。「ハズレ回」とか。アンガールズさん、伊集院さん、ひとりさんって並びで見たらそりゃそうですけど、こっちは急遽なんだから! 少しは汲んでくれよ!

宮嵜 さっき「そのときは面白いかどうかなんて考えられなかった」と言いましたけど、こういう仕事をしていると有事のときこそ燃える節もあって。もちろん事件とか事故なんて起こってほしくないですけど、そういうときこそ力が湧いてくるっていうのは感じましたね。

井口 太田さんこそ有事のときにすごい力を出す人ですよね。それを期待されている人でもあるし。伊集院さんの回もすごい言い合っていたじゃないですか。

宮嵜 伊集院さんも本当にありがたかった。実はウエストランドとの生放送の日、伊集院さんがTBSラジオにたまたまいらっしゃっていたんですよ。で、喫煙所にいた太田さんと「大変だね」なんつって雑談が始まって。僕は心の中で太田さんが「ちょっと(カーボーイに)出てよ」って言ってくれたらいいなって思っていて。「言え、言え!」って(笑)。結局言わなかったんですけど、ウエストランドとの生放送終わりに「太田さんが言えば絶対伊集院さん来てくれてましたよ」って話したんです。

河本 「心の中でずっと思ってたんですよ」って、全部言ってましたね(笑)。

宮嵜 そうそう。そしたら今度は伊集院さんが自分の番組で「太田さんが『助けてくれ』って言ってくれたら行ったのによー」とかって言ってくれて、これは実現したらリスナー的にもうれしいだろうなと。コロナは怖いし、田中さんも心配だけど、そんな中でもできる限りワクワクするようなことを提供したいと思って、改めて伊集院さんにお願いしたんですよ。

「メガネびいき」のあの発表、尺読み失敗

──近い時期に「おぎやはぎのメガネびいき」でも欠席や代演がありました。

宮嵜 小木さんが偏頭痛の治療でお休みしているときに、矢作さんも体調不良で欠席することになり、今度こそアルピーに代打をお願いしました。「カーボーイ」の件が流れちゃったときに「声かけてくれたらいつでも行きますよ」って言ってくれていたので、素直に頼りたいなと思って。もともと彼らは「メガネびいき」との親和性もありますからね。アルピーの「オールナイトニッポン」の最終回に中継を出して出待ちのリスナーにインタビューしたこともありましたし。当時からTBSラジオでやってもらいたいって僕はずっと思ってたので、ANNが終わると聞いてから事務所さんにはお話ししていたんですよ。TBSラジオのリスナーに「彼らはこういう人たちですよ」って紹介してなじませる意味で最終回のあとわりとすぐに「メガネびいき」に呼びました。で、いざ「D.C.GARAGE」を始めるときはディレクターの石井玄くんも、作家の福田卓也くんも、チームまるごとお迎えして。

井口 すごいですよね。そんなことあるんだっていう。

宮嵜 でもそのほうがいいじゃん。アルピーのラジオが好きっていう人はあのチームセットで好きだと思うんだよ。自分がリスナーだったら同じスタッフでまたやるんだって知れたらうれしいし、安心して聴ける。ニッポン放送と戦争しているわけではないから。

──その矢作さんの体調不良での欠席があり、小木さんのがん、矢作さんのコロナ感染など、「メガネびいき」もバタバタだったのではと思います。

宮嵜 小木さんからがんの知らせが届いたときは手が震えましたね。すぐに連絡して、発表するのか、するとしてもどういう言い方がいいんだみたいな話をして。

井口 結局さらっとしてましたよね。

宮嵜 あれは、単純に小木さんが尺を読めてなかった。

井口 逆に考え尽くされた発表の仕方なんだと思いましたよ(笑)。

宮嵜 違う違う。小木さんが3分もあれば足りるっていうから、エンディング3分残しておいたんだよ。そしたら随分手前のディテールから話し出しちゃって。看護師さんがかわいくて、とか。

井口 最後、「えー、がんでした。さよならー!」みたいな感じでしたよね。

宮嵜 生放送終わりの空気すごかったもん。矢作さんが「時間、なかったなあ」って言って、小木さんはずっとだんまり。お通夜みたいな。

河本 失敗だったんですね(笑)。

宮嵜 小木さんは心配させたくない人だから数%は確信犯かもしれないけど、9割9分、尺読みがうまくいかなかった。結果オーライですけどね(笑)。「メガネびいき」で言うと矢作さんにコロナの陽性反応が出たって知らせを受けたとき、ちょうどニッポン放送の冨山(雄一)くんと一緒にいたんですけど、「オールナイト(ニッポン)のパーソナリティで誰か声かけましょうか」って言ってくれて、すごくありがたかった。「オールナイトで助けられることがあったらやりますよ」って。

──各局協力して。

井口 やっている人たちは大変だし、心配はもちろんありますけど、聴いているほうはイレギュラーな放送が楽しかったりもしましたよね。ハプニングこそラジオの醍醐味みたいなところなので。

お笑いライブは空間も共有したほうが面白い

──常にコロナの脅威を身近に感じながら生活する世の中になって、改めて気づいたことはありますか?

井口 さっきも言いましたけど、楽屋で芸人と話すのも僕らの生活の楽しみの1つだったんです。最近は楽屋の入り時間もバラバラですし、ネタが終わったらすぐ帰らなきゃいけないので打ち上げももちろんない。だからすごい……ネタやってるだけじゃん!みたいに思いますね。いや、それが芸人の本分なんですけど(笑)。なんだかんだ、飲んだりするのが楽しかったなーと。

宮嵜 そうだねえ。

井口 あと、出待ちも禁止ですからね。

宮嵜 え、出待ち……?

井口 僕らにもたまにいたんですよ! 「面白かったです」って直接言ってもらえたのがどんだけ幸せだったんだろうって思いますね。配信ライブが増えたことは地方のお笑いファンからしたらいいことなんですけど。

宮嵜 ラジオで言うと、こういう世の中になってからRadikoの聴取数がすごく増えて。原因はいくつもあると思うけどその一つは時間の共有だと思うんです。ただお笑いライブに関しては時間の共有だけじゃなくて空間も共有したほうが面白いっていうことは改めて感じました。

井口 「ラフターナイト」のチャンピオン大会がすごくよかったって芸人からよく聞きますよ。3割くらいしかお客さんいなかったのに、めちゃくちゃ盛り上がったって。お客さんも生のお笑いを求めていたんでしょうね(参考記事:オズワルド、ラフターナイト優勝の先を視野に「このままM-1にも行ける」)。

宮嵜 お客さんの勘がすごくよかったのもあるし、やっぱりMCの山ちゃんがすごかった。形式だけのアイドリングトークじゃなくて、しっかり客席が温まるまでねぶるんですよ。この笑いの量までくれば大丈夫っていうラインを彼は経験でわかっているから、ちゃんとそこに達するまで温め続ける。1組目のファイヤーサンダーの最初のボケに対する笑い声を聞いて「このライブは大丈夫だ」って確信しました。もちろんファイヤーサンダーがすごいんだけど、それと同時にこの笑いは山ちゃんとお客さんが一緒に作ったものだなって思いましたね。

──河本さんも何かありませんか?

河本 僕ですか?

井口 あたりめーだろ! 「河本さん」って言ってんだから。

河本 2月に嫁と子供が帰ってくるはずだったんですけど、コロナのせいで6月までそれが延びちゃって……。

井口 まず別居が気になるから! でも結局戻ってきたわけでしょ? みなさんご家族がいますけど、僕なんて真の1人ですからね。自粛中は3日に1回コンビニに行って食料を買い込むだけの生活だったので、声も出なくなってくる。だからゲーム実況とかを無理やりにでもやって、見られることを意識していました。ちょっと気を抜いたら老け込みそうじゃないですか。

宮嵜 外出自粛中にヒゲ伸ばしてる芸人さん多かったよね。

河本 僕は逆にヒゲ剃るようにしてました。今日もそうですけど、人前に出るときは剃らないままなんですけど。

井口 どういうことなんだよ。

河本 太らないようにも気をつけていて、いつもは食いたいもん食って、飲みたいもの飲めてたんだなって気づけました。

一同 ………。

井口 変な話!

河本 ただ、喉はちゃんと退化してましたね。

井口 今も家のお父さんくらいの声しか出ないから!

笑って振り返れるのはみんな無事で戻ってきてくれたから

──リスナーが知らない話をたくさん聞かせていただきありがとうございました。この連載のお決まりで、最後は「2020年、どんな年でしたか?」というざっくりした質問で終わりにしたいと思います。

宮嵜 僕はもう、コロナにぶんぶん振り回された年でしたね。だけど得るものも大きかったというか。なんか、人の優しさも知れたし(笑)。お笑いをまた改めて好きになった年でもあるなと思います。

井口 太田さんも前ラジオで言っていましたけど、いかにお客さんに依存していたかっていうのがわかった年でしたね。笑い声を聞くことが本当にうれしいし、お客さんいなかったら僕らの存在なんて意味ないし。というのと、しゃべることがすごい好きだったんだっていうのを再確認できました。あとはまあ、僕ら的には2020年はこれからでもあるんで! ここから次第で答えが変わりますね。

河本 まだ(M-1グランプリの予選に)残ってますから。

──現在2回戦の結果が出たところですが、実はこの記事が出るのがけっこう先のことでして……。

井口 あ、じゃあもう終わってるかもしれないですね!

──なんとしても残っていてください……!

井口 もし負けてたら「悔しい1年でした」って書いておいてください(笑)。

※編集部注:ウエストランドは見事「M-1グランプリ2020」決勝に駒を進めました。

──そして、河本さんはどうでしょう。

河本 えー……。

井口 けっこう時間稼いだんだから考えておいてくれよ!

河本 いろんな制限があったことで、大事なことがわかるようになったというか。前は芸人と飲みに行っても、なんか雑だったんですよ。でも最近は行く回数が少なくなったから1回1回がすごい楽しくなって。

井口 飲み会が楽しくなった1年だったってこと?

河本 あと昨日思ったんですけど、お客さんが多ければ多いほど、苦手だなって。

井口 やめちまえ!

──改めて気づけた(笑)。

河本 あと、お分かりだと思うんですけど、おしゃべりも苦手です。

井口 だから、おしゃべり苦手で人前苦手なんだから、もうやめちまえよ!

──(笑)。ではこんなところで終わりにしたいと思います。

宮嵜 まだいろいろなんかあった気がするんだよなあ。

井口 宮嵜さん、バタバタすぎて記憶なくなってますよ。

河本 (宮嵜Pのスケジュール帳を覗いて)字もすごいですもんね。

宮嵜 いつもはしっかりいろいろ書いてるんだよ。この辺の字、やばいね(笑)。

井口 メンタルが出てますね。

宮嵜 これは不謹慎って言われちゃうかもしれないけど……大変な1日だったけど、ちょっと楽しかった部分もあって。ピンチのときこそみんなで知恵絞って、面白い方向に持っていこうっていうチームワークみたいなものは強まった気がしますね。代役を手近なところで済ましてるって言われちゃうと耳が痛いけど、頼れるところは素直に頼らせてもらうのがいいと思いました。今日はウエストランドと話せてよかった。もう忘れて何もなかったかのように過ごしちゃってたから。

井口 ちゃんと時系列でまとめておいたほうがいいですよ。

宮嵜 でも、こうやって笑って振り返れるのはみんな無事で戻ってきてくれたからだよね。コロナ禍が終わったわけじゃなくて、未だに医療現場で闘ったり、恐怖を感じたりつらい思いをしている人は多くいるし、感染しないための生活をし続けなきゃいけないんだけど。田中さんも、矢作さんも小木さんも、みんながいつもどおり元気でラジオをやってくれているってことがまずは素直にうれしいし、本当によかったなって思います。

井口 そうですよね。「カーボーイ」で田中さんの第一声聞いたときうれしかったですもん。

宮嵜 この前の「カーボーイ」でちょうどコロナの騒動を振り返ってて、田中さんが療養から明けた最初の仕事で「そういうことだから」みたいな顔して太田さんと楽屋で再会したっていう話を聞いて、何があっても田中さんは変わらないなーって思った。その状況が目に浮かんでとても安心したんだよね。

井口 あれだけ長くやっていると照れくささとかもありつつ、でも「よかった」っていう表情なんでしょうね。

宮嵜守史(ミヤザキモリフミ)

1976年生まれ、群馬県出身。TBSラジオ「JUNK」(毎週月~金曜25:00~27:00)、「アルコ&ピース D.C.GARAGE」(毎週火曜24:00~25:00)、「うしろシティ 星のギガボディ」(毎週水曜24:00~25:00)、「ハライチのターン!」(木曜24:00~25:00)などを担当中。

ウエストランド

井口浩之(イグチヒロユキ)
1983年5月6日生まれ、岡山県出身。

河本太(コウモトフトシ)
1984年1月25日生まれ、岡山県出身

中学で出会った2人が2008年に結成。フリーで活動を開始し、オーディションライブからタイタン所属となる。2013年4月に「笑っていいとも!」(フジテレビ)のレギュラーに抜擢され、最終回まで不定期で出演した。2012年、2013年の「THE MANZAI」認定漫才師。今年2020年、自身初の「M-1グランプリ」決勝進出を果たす。2011年にスタートしたラジオ形式の番組「ウエストランドのぶちラジ!」をYouTubeはじめ、Podcastaudiobook.jpで配信中。

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