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『僕のヒーローアカデミア』梅雨ちゃんが愛される理由とは? 心優しき「精神的支柱」の役割

リアルサウンド

20/9/30(水) 9:00

 ヒーローを目指す高校生たちを描く『僕のヒーローアカデミア』。今回ピックアップするのは梅雨入りヒーロー“フロッピー”こと蛙吹梅雨。梅雨ちゃんの愛称で親しまれる彼女の個性は“蛙”とあるように、全体的にカエルっぽい見た目でありながら愛らしさもあるキャラデザは秀逸で、作者自身も「気に入っている」と語る。実は読者からの人気も高く、第1回人気投票では6位に選ばれている。

 漫画内でも体育祭の1次予選では13位、学力も6位と優秀な成績を収めている。爆轟や八百万といった他のキャラと比較すると決して目立ったキャラではないが、期末試験や対ヴィランでは現状を的確に見極めた行動で、共闘した仲間を支えている。

 ポーカーフェイスだが誰よりも仲間想いな蛙吹梅雨の魅力に迫る。

冷静な判断で窮地を救う、個性も有能な万能型

 蛙吹の個性である蛙は、

「蛙っぽいことはだいたいできるぞ!! さすが!」
(『僕のヒーローアカデミア』2巻より)

との謳い文句通り、跳躍・壁に貼りつく・舌を長く伸ばす(最長20m)といった能力を持つ。

 USJでヴィランの襲撃を受けた際は共に水難ゾーンに飛ばされた緑谷・峰田を跳躍と伸びる舌を使い、いち早く回収しヴィランの攻撃を退けた。期末試験では「胃袋の中身を出し入れできる」能力を利用し、切り札を終盤まで隠し通した。

 しかし、特筆すべきは個性だけではない。「状況把握力・判断力」にも高い評価を持つ。

「思えばUSJじゃ蛙吹さんが冷静でいくれたおかげでずいぶん助けられた」
(『僕のヒーローアカデミア』8巻より)

 USJでは最悪の事態「オールマイトを倒せる想定で敵が来ている」を想定しつつも、冷静に対処する蛙吹の姿に主人公の緑谷も安心感を覚えている。

 また林間学校ではヴィランの奇襲で浮足立った麗日に対し、

「戦闘許可は「敵を倒せ」じゃなくて「身を守れ」ってことよ
相澤先生はそういう人よ」
(『僕のヒーローアカデミア』9巻)

と声をかけ、慌てた麗日の気持ちを立て直した。

 A組B組合同戦闘訓練では上鳴・心操とタッグを組み、指揮官を務める。自身の個性でB組を翻弄しつつ、心操の個性「洗脳」が活きる状況を作り出し、勝利をもぎ取る。

 仲間の個性と現状を把握し、瞬時に状況に合わせた策を練る姿は、八百万・緑谷につぐA組のブレーンと言えよう。仲間たちにいつも心配の言葉をかけるのも彼女だ。リカバリーガールからも、

「彼女の冷静さは人々の精神的支柱となりうる器さね」
『僕のヒーローアカデミア』8巻より

と評される。

 だが、彼女の1番の魅力は別にある。

個性でも知力でもない、他の生徒が持ちえない蛙吹の「強み」

 蛙吹はポーカーフェイスゆえ、友達がなかなかできない中学時代を過ごしていた。それゆえ、「友人」や「仲間」への思いもひときわ強い。

 ルールや守るべき規範を遵守した上で行動にうつす生真面目さも持つ彼女は、爆轟誘拐事件で規則を破っても助けに行こうと画策する緑谷たちに対し、

「ルールを破ると言うのなら、その行為はヴィランのそれと同じなのよ」
(『僕のヒーローアカデミア』9巻より)

と、ハッキリと口にする。

 だが結局、爆轟救出に向かってしまった緑谷たち。帰ってきた仲間に、彼女は、涙ながらにこう伝える。

「色んな嫌な気持ちが溢れて…何て言ったらいいかわからなくなって
みんなと楽しくおしゃべりできそうになかったのよ」
「でもそれはとても悲しいの」
「だから…まとまらなくってもちゃんとお話をして また皆と楽しくお喋りできるようにしたいと思ったの」
(『僕のヒーローアカデミア』10巻より)

 言いようのない不安を抱いていたクラスメイトの気持ちを涙ながらに代弁した蛙吹に、緑谷たちも涙ながらに謝罪する。

 助けたいという気持ちがから回るあまりルールを疎かにする緑谷は、スターウォーズの登場人物でたとえるならばアナキン・スカイウォーカーだ。余りある力と、正義の心を持ち合わせているが、気持ちの強さゆえに暗黒面に落ちる可能性もはらんでいる。

 実際、緑谷は無茶な個性の使い方で腕を使うパンチスタイルから、足を主体としたキックスタイルへの転向を余儀なくされた。

 一方、蛙吹をたとえるならオビ・ワン=ケノービだ。教師や学校から決められたルールは遵守し、感情に執着しすぎず状況を判断する。正義の心も持ち合わせており、「正式に」アサインされた壊理救出ミッションでは、少女の命を救えると奮起している。

 誰しも好きな人たちには嫌われたくない。それでも、仲間のために耳の痛い言葉を口にできる者は強い。焦りや憎しみ、怒りに流されず、仲間を思い、守るべき人へ心を傾ける姿勢は「ヒーロー」という職業を担うに相応しい人物と言える。

 校外の大規模なミッションでは末端として参戦している蛙吹。だが、持ち前の判断力と、悪いことを「悪い」と言える強さ、そして仲間への思いやりを持った「精神的支柱」として、司令塔ポジションでの活躍にも期待が高まる。

■千歳悠
フリーライター。得意ジャンルは金融など。読書は参考書、ビジネス書、漫画、小説まで幅広く読む。ちとせ(@chitose_haruka)

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