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Doul/PIA SONAR MUSIC FRIDAYインタビュー

世界が注目する18歳の完全自己プロデュース・アーティスト“Doul” 初のEP『One ByonD』を語る

特集連載

第11回

「これまでシングルでいろいろなジャンルにトライしてきたので、EPでは塊のDoulを感じてもらいたいと思っています」

── デビューしてちょうど1年ですね。

Doul ほんとだ。今言われて気づいた(笑)。

── この1年間は大きかったですか?

Doul 成長しましたね。自分自身の考え方がすごい変わったなと思っていて。固まってきたというか。

── それは音楽の面に関してだけではなく?

Doul そうですね。精神面でも強くなったと思うし、生活する面においてもそうだと思います。だから17歳の1年間というのはすごく大きかったです。

── 1st EPが7月28日にリリースされました。強力な5曲が詰まっていますが、まずは『One BeyonD』というタイトルについてお訊きします。“beyond”という言葉にDoulさんの姿勢がギュッと詰め込まれていますよね。

Doul “一歩先”という意味で『One BeyonD』というタイトルにしたんですけど、初のEPということもあるし、新たなDoulというか、これまでシングルでいろいろなジャンルにトライしてきたので、塊のDoulを感じてもらいたいと思っています。

── アーティストになる前は、プロの格闘家を目指してかなり本格的なトレーニングに励んでいたというふうに聞いているのですが、そうなんですか?

Doul かなり真剣にやってましたよ。

── ということは、格闘家への熱意をある時音楽が超えて(beyond)行ったわけですよね。音楽の何がそうさせたんですか?

Doul 自分でもそこはあんまりわかんないんですよ。世界を目指して本気で格闘技をやっていたんですけど、いつの間にか音楽の方が大切になっていたんですよね。たぶんですけど、音楽をやっている自分の方が輝いて見えたのかなって思います。格闘技をやっている自分もすごい好きなんですけど、音楽をやっている方がよりカッコイイなっていう感じですね。

── 格闘技も自己表現のひとつだと思うのですが、音楽の方がよりダイレクトに伝えられるという魅力を感じたのかもしれませんね。

Doul 世の中に対して伝えたいこととか、その頃抱えていたものとかをどういうふうに発信したらいいのかなって悩んでいたんですよね。そうするとやっぱり何かを伝えるという点においては音楽の方がストレートだと感じたし、実際に届くっていう実感があったからだと思います。

── 自分で曲を書き始めたのもそうした気づきがあってからということなんですか?

Doul そうですね。14、15歳の頃です。

── 曲はどういうふうに作り始めたんですか?

Doul アコギですね。アコギを弾きながらメロディを口ずさみつつ歌詞を書いてっていう感じです。今もそのやり方でやっていますね。ピアノで作ったり、いろんなやり方はあるんですけど、アコギが一番しっくりきます。

── アコギは最初からあったんですか? 例えば誰かのものがすでにあったとか。

Doul いえ、12歳の時に自分で買ったんですよ。Epiphoneのブラックのアコギなんですけど、ただカッコイイなと思って自分にクリスマスプレゼントしました(笑)。

── アコギで曲を作るというのと、アコギへの愛着に実はびっくりしているんですけど(笑)。というのもDoulさんの曲ってヒップホップやハウス、ファンクなどバキバキにダンスチューンのイメージがあるから。

Doul もともとダンスもやっていたというのもあったし、エミネムは超好きだし、アコギに憧れたのもニルヴァーナとか普通に好きだったしっていうのもあったりで、やりたい音楽がたくさんあるんですよね。だから自分では特にこのジャンルっていうふうに決めたくないし、曲を作るきっかけは一番愛着のあるアコギでっていうのはすごく自然ですね。そこからリズムを打ち込んだりっていう道筋もわりと最初から見えていますね。

「〈あいつら〉はいつでもいるんですよ。いまだに思い出すし、夢にも見たりするけど、こっちには音楽があるからっていう感じ」

── 1曲目『Bada Bing Bada Boom feat.Zag』ですが、“Bada Bing Bada Boom”という言葉があるんですね。

Doul そうなんですよ。すごく音的に気持ちいいですよね。

── 歌詞の対訳を見たら“トントン拍子”とあって、発語の感じも含めてすごく近い感じがしました。

Doul そうそう。なんかやっているうちにいつかいい方向に行くからっていうような意味合いですね。普段から気になる言葉とか面白い言葉をメモしてるんですけど、ビートを作っている時に、あ、これはきたかも! ハマるかも!って思って自分のメモから“Bada Bing Bada Boom”を引っ張り出してきました。

── 歌詞の内容はまさにこれから音楽をやっていくんだっていうような意思表明にも聴こえます。歌詞の中に〈あいつら〉という明確に対峙する存在が出てくるのですが、それはDoulさんの経験が反映されている存在なんでしょうか?

Doul やっぱり音楽をやっていくんだって決めるまでにいろんなことを言われたんですよね。今でこそ自分の中で処理できちゃってる部分もあるんですけど、でももちろんイラつくし、いまだに「は?」って思うことはあります。ただ、それがなかったらこの曲で描いているようなメンタルは持ててないし、考え方も持ててなかったんだろうなって思うと、感謝とかはないけど、自分の経験として吸収できたからもういいやって感じですね。

── でも、〈あいつら〉はいるんですね?

Doul いつでもいるんですよ。いまだに思い出すし、夢にも見たりするけど、こっちには音楽があるからっていう感じ。それを歌詞に乗せたり、サウンドに乗せたりして楽しんでますね。

── そういうことを伺ってこの曲を聴くと、謎のラッパー・Zag(ザグ)さんのパートがより正直な心の声となって響きますね。

Doul ZagっていうのはDoulの別人格のラッパーなんですけど、今回デビューさせました。もともといつからか自分の中にいたんですよ。Zagだからこそ言えるメッセージってあるので、Doulだと言えないメッセージを今回Zagがどストレートに怒りと疑問と勇気をぶつけて言ってくれてるっていう感じですね。

── その多面性っていうのはDoulさんの音楽の魅力そのもののような気がします。

Doul その時出た感情、その時に出た色に忠実にやっているっていう感じですね。

── 曲全体のイメージとして最初に描いていたものはどのようなものだったんですか?

Doul この曲に関しては、ゴール地点みたいなものはあまり意識してなかったですね。あるとしたら、“Bada Bing Bada Boom”という言葉をオーディエンスが一緒に言ってくれる感じっていうか。誰でも口ずさみたくなるような曲にしようっていうのはありましたね。だけど音楽性とかリリックとかは最初の段階では何もイメージしてなかったです。逆に何も考えなかったからこんなに面白いものができたのかなって思います。

── 2曲目が『Howl』(2020年12月配信の4th Sg)なんですが、この曲はやはり1st EPには入れたいなと。

Doul そうですね。『One BeyonD』というEPで伝えたいメッセージが『Howl』には入っていたので、絶対に入れたいなと思いました。

── “自分のことを好きで何が悪いの?”っていうストレートなメッセージなんですけど、実はそれってすごく難しいっていうのが多くの人の抱えている感情だったりしますよね。

Doul しかもそれをなかなかハッキリと言ってくれないじゃないですか。特に日本って、そういうメッセージを行動にする人があまりいないから、歌で伝えようと思ったんですよね。ただ言葉で言ったり、文字にして書いたりしてみても伝わらないと思ったから。

── 歌だから言える、伝わるっていうことは必ずありますよね。

Doul Doulはそれが軸になっていますね。

── ちなみにリリックと曲とではどちらが先なんですか?

Doul バラバラですね。メッセージは常に書き溜めてるんですよ。だからそこから引っ張ってきたりっていうこともありますし、逆にメロディに合わせて考えることもあります。でも最近は曲からテーマを決めて最初から作るということが増えてきましたね。

「一番悩んで一番苦しんで、すべてを捨てて音楽をやるって決めたあの時に抱いていたものってすごく大切」

── 3曲目の『Heart is Breaking』、ここで描かれているテーマは“どうして同じ場所に居続けなければいけないのか?”っていう、これもDoulさんがこれまで一貫して描いてきたテーマなんですが、やはり同じ居場所に居続けなきゃいけない違和感っていうのはありますか?

Doul ありますね。今まで“居場所がない”って感じることの方が多かったし、具体的な場所じゃなくても、同世代といるのがキツかったり、年上や年下と一緒にいるのがキツかったり、どんな場面においてもそういう経験をしてきたんで、その感情をそのまま音にもリリックにも乗せたっていう感じですね、この曲は。

── アレンジがすごくシンプルだからこそ余計にその息苦しさのようなものが伝わってきます。

Doul リリックをいかに刺さるようにするかっていうことを考えたら、まわりがうるさかったら伝わらないし、でも音がシンプルすぎても意味が抜けていってしまう感じがしたんですよね。だから、何かが崩れる音とか、何かを落とす音を入れてるんですよ。そこが変な違和感になってリリックと結びついた時に不思議な感覚になると思うんです。それで、ちゃんと歌詞を読んでいくと、こういう想いがあったんだ、だからこういうサウンドになったんだって共感してくれる人と、一方でちゃんと読んだからこそ反論する人もいると思うので、それはそれでいいというか。そういう意味でもこの曲はこだわりの強い1曲ですね。

── この曲が全体5曲の中の真ん中にあることによって、それまでのメッセージが際立ってくるし、その次の『From The Bottom』への繋がりが意味をもって迫ってくるんですよね。

Doul たぶんこのEPがなかったら、『Heart is Breaking』はどこにも入れられないんですよ。しかも3曲目にしか置き場所がなかったっていうくらいここしかないという曲ですね。

── Doulさんのコアな感情が表現された曲なんでしょうね。

Doul 表に出てくるってタイプじゃないけど、支えてくれているものがこの曲にはあるので。そうですね、土台って感じですね。

── 『Heart is Breaking』で感じていた感情が、4曲目『From The Bottom』で怒りに点火していく感じがあって、続けて聴くとそのグラデーションが非常に心地よかったです。

Doul この曲はノルウェーのプロデューサー・SKYWALKとコライトしたんですけど、サウンド面でもいろいろと面白い発見がありました。それで、リリック面でも実はこれ、あるものを例えて書いてるんですよ。人でもなく物でもないっていう。でもそこはあえて答えを言わない方が聴く楽しみがあるので秘密です。だから作っている時からめちゃくちゃ面白くて(笑)。

── 言葉数もものすごく多いですよね。

Doul ラップもあるので、子音の位置とかにもめちゃくちゃこだわって書いてますね。

── ノルウェーのプロデューサーとのコライトということで、やはり独特な感じが音にも反映されていますよね。出だしの童話っぽい感じというか、かわいらしさの中にちょっと怖さを秘めたサウンドイメージとか、サビのところのエフェクトは完全に別次元に持っていかれますね(笑)。

Doul そうなんですよ。脳内が揺れる感じであそこすごい好きです。やっぱりUK、USではない北欧ならではの独特の感性がありますよね。いつか現地に行って音楽を作りたくなりました。だってオンラインでここまでできるんですから(笑)。

── ラストが『16yrs』(2020年9月配信の1st Sg)。これは最後に絶対に入れるんだという強い意志を感じました。

Doul はい。絶対、でしたね。『16yrs』は何歳になっても自分の中では大切なものだと思っているので、1st EPにきちんと入れてもう一回みんなに聴いてほしいって思うし、初めてDoulを知ったっていう人もEPの最後にこの曲を聴いてほしいっていう想いがあったんで。

── 最後にありながらここから始まる感じもするし、このEPの流れで聴いて、改めてカッコいい曲だなって思いました。

Doul Doulも一番好きです。この曲を超えるものは自分の中にまだ正直ないんですよ。

── タイトルの通り、16歳の頃に作った曲ですよね?

Doul そうです。一番悩んで一番苦しんで、すべてを捨てて音楽をやるって決めたあの時に抱いていたものってすごく大切だし、いつまででも歌っていたいし、幅広い年齢の人たちに共感してもらえる曲だと思います。不思議なんですけど、自分の曲なのに自分のじゃない曲みたいに聴けるんですよ。だから普段から自分でも聴いていますね。たぶんこの曲を上回る曲ができたなって思う時は、新たにどこかに進出しているタイミングだなって思います。

── Doulさんが海外を足場に音楽活動をするのってすぐにでもイメージできるし、実際に可能だと思うんですけど、そこをあえて日本から始めたっていうのが意味のあることなのかなって思うのですが、そのあたりはいかがですか?

Doul 日本で育ってきて、日本にいろんな疑問が湧いているっていうのは正直なところあるんですけど、だからと言って、日本を変えていこうみたいなことを言うつもりは全然ないんです。でもこういう新しい考え方をする若者もいるし、それを受け入れてくれる大人もいるよっていうものをポーンと落としてから世界に行きたいんですよね。もちろんコロナ禍っていうご時世もあって日本でやっているという側面もあるんですけど、この順序で正解だったなって思いますね。

Text:谷岡正浩 Photo:吉田圭子

スケジュール

9月11日(土)【配信】MUSER FEST.2021 -MUSIC AID-
9月27日(月)17:00開場/18:00開演 渋谷WWW X『THREE WAVES』
共演:カメレオン・ライム・ウーピーパイ/(sic)boy
10月18日(月)17:15開場/18:00開演 渋谷 CLUB QUATTRO『CLAPPERBOARD』
共演:chilldspot/FIVE NEW OLD

プロフィール

Doul
福岡出身2003年生まれ、数々のヒットアーティストを輩出したSpotify[RADAR:Early Noise 2021]に大抜擢された完全自己プロデュースアーティスト。J-WAVE[SONAR MUSIC](月-金曜日21:00-24:00放送)内の“SONAR’S ROOM”木曜日を担当。Nike Japanとアンバサダー契約を結ぶなど、音楽はもちろんファッションでも世界中の同世代から注目を浴びている。2020年9月のデビュー曲「16yrs」がいきなり世界90カ国以上で再生され、米国の超ビッグプレイリストを始め、3,000以上にリスト入りをしている。12月に配信された「Howl」はSpotify[VIRAL 50(Japan)]の6位にチャートインするなど、メディア露出がほぼ無い中でもその声と楽曲、世界観で世界中の同世代からの夢中を引き寄せている。

関連リンク

SNSリンクまとめ: https://linktr.ee/Doul

番組概要

放送局:J-WAVE(81.3FM)
番組名:PIA SONAR MUSIC FRIDAY
ナビゲーター:櫻井海音
放送日時:毎週金曜 22:30~23:00
番組HP:https://www.j-wave.co.jp/original/sonarfriday/
番組twitter:https://twitter.com/SONAR_MUSIC_813
ハッシュタグ:#sonar813
番組LINEアカウント:http://lin.ee/H8QXCjW

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