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「海辺の彼女たち」日本で移民映画を実現できた理由、監督とプロデューサーが語る

ナタリー

21/4/21(水) 14:30

「海辺の彼女たち」記者会見の様子。左から渡邉一孝、藤元明緒。

「海辺の彼女たち」の記者会見が4月20日に東京・日本外国特派員協会で行われ、監督を務めた藤元明緒、プロデューサーの渡邉一孝が出席した。

藤元がかつて実際にミャンマー人技能実習生から受け取ったSOSのメールをきっかけに着想した本作。主人公はよりよい生活を求めて来日し、技能実習生として働くベトナム人女性たちだ。過酷な職場から脱走を図り、ブローカーを頼りに雪深い港町にたどり着いた3人。不法就労という状況におびえながらも、故郷にいる家族のため懸命に働き始める3人の姿を描く。

在日ミャンマー人の移民問題と家族の愛を描いた長編デビュー作「僕の帰る場所」に続いて、日本で暮らす外国人の人々を題材にした藤元。配偶者がミャンマー人であることがテーマ設定に影響しているか問われると、「ミャンマーの方と結婚していなければ、こういう映画を撮ることはなかっただろうと思います。『僕の帰る場所』が終わったあとに結婚して、外国の方が日本でどのように生きているのか、生きづらさであったり、うまくいかないことを日常的に聞いてきて、僕の中でもフラストレーションが溜まっていた」と、「海辺の彼女たち」の制作に至るまでの心境を語る。

さらに藤元は「振り返ってみると、僕は身近な暮らしの中で感じたこと、家族や知人、友人の中から映画にすべきものを見つけてきているんだろうと思います。よく日本映画では半径5m以内を描いて小さな映画が生まれると批判されますが、僕にとっては気持ちのいい映画作りだと思っています」と続けた。

主演のキャスティングでは、ベトナムで100名以上のオーディションを実施。中国映画への出演歴があるテレビキャスターのホアン・フォン、精力的にインディペンデント映画の現場に参加していた俳優でモデルのフィン・トゥエ・アン、モデルとして活動するクィン・ニューの3名が起用された。選考では「そもそも彼女たちがたどってきた人生とこの物語のキャラクターが近いか」を重視したそう。「脚本のキャラクターを彼女たちに近付けるやり方を取りました。もっとも重要なのが、彼女たちの人生の中で、もしかしたら本当にこういうことがあったかもしれないという意識。そのために彼女たち自身の名前で演じてもらいました」と明かした。

会見では日本の映画業界では実現が難しいような題材を製作できた経緯が問われる場面も。自分たちの会社であるE.x.N(エクスン)で企画、製作、配給を一手に担っている藤元と渡邉。渡邉曰く、「海辺の彼女たち」の企画実現は、映画祭などで高く評価され、海外にもアプローチした「僕の帰る場所」の実績によるものが大きかったそう。「海辺の彼女たち」では日越ともいき支援会や日本・ミャンマーメディア文化協会が協力に名を連ね、国際機関日本アセアンセンターが後援している。

渡邉は「大きな枠組みを変えることなく、同じようなスタッフを集めて、前作でやれたことを引き継ぐ形で今回の現場に臨みました。そして『僕の帰る場所』のときに出会った人たちに企画を持ち込み、ベトナム側のパートナーになってもらえたという素晴らしい出会いもありました。また助成金もいただいたり、ロケ地である青森の外ヶ浜町から多大なご支援をいただいて現場が成立しました」と述懐。「日頃から監督と話しているんですが、インディペンデントな映画として作るには、僕たちじゃないと作れないことをやるべきだし、自分たちが誰なのかを伝えることも大事。協力してくださる方々に丁寧に説明することをやってきた結果、各方面の協力を得て実現できたと思っています」と語った。

「海辺の彼女たち」は5月1日より東京・ポレポレ東中野ほか全国で順次ロードショー。なお「僕の帰る場所」は軍による市民への弾圧が続くミャンマーへの支援としてチャリティ上映が5月から6月にかけて、大阪のシネ・ヌーヴォ、富山・ほとり座、長野・上田映劇で行われる。

(c)2020 E.x.N K.K. / ever rolling films

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