今年ももう12月です。早いもんだよね。今年を振り返ってみるとさ、新型コロナウイルスだの集中豪雨だの台風だの色々あったよね。本当だったら東京オリンピックがあって、東京の街並みとかがもっと大きく変わってたはずだけど、ほんの少しだけそれが伸びたのは今年ちょっと嬉しかったことかな。

山形で育った僕からしたら、東京のあらゆる街には、それぞれ色んなカルチャーが根付いてる感じがあって、そこに憧れがあったの。でも、最近の東京は経済最優先みたいな感じで街がどんどん変わっていってる。「それが良くない」ってことではないけどさ、でも、やっぱりそういう街に面白さはあんまり感じられないんだよ。

僕が東京に出てきた頃は、まず新宿に憧れを抱いたんだよ。学生運動の名残りが残る街があったり、なんか街の背景にはカルチャーがあった感じがして、そこはすごく憧れがあった。

あと、バンドが好きだったから西新宿の小滝橋通りのほうとかも好きだった。あの界隈のカルチャーの筆頭は、まず新宿ロフトだよね。新宿ロフトって今は歌舞伎町にあるけどさ、小滝橋通りにあった新宿ロフトはかっこいいバンドがいっぱい出てて、いろんな伝説があるけど、僕はギリギリ2回だけ出演できた。あと、僕が東京に出てきたばっかりの、この小滝橋通り界隈には良いレコード屋さんがムチャクチャあってね。ヴィニール、ラフ・トレード、ライカエジソン、オールマンとか。でも、僕が大学4年に上がった頃ぐらいからどんどんお店がなくなっちゃった。なんか寂しいよね。あの界隈に行けばさ、なんか音楽的な雰囲気が街に根付いている感じがあって好きだったんだけどな。今は、あの界隈もすごく綺麗になっていってチェーン店ばっかりになって、他と同じような雰囲気になってる。なんか悪い意味で漂白されている感じがする。

昔の東京ってもう見られないんだろうけど、ちょっと前にすげー貴重なYouTubeを発見したの。マツコ・デラックスさんの番組でもやってたけど、まだ浄水場があった時代の新宿、日本橋、銀座とかの動画がYouTubeに残っていてさ、これがもう最高なんだよ。

当時、東京に来た外国人が記録として残してたビデオなんだけど、一番東京が面白かった時代なんじゃないかなと思う。マツコさんは「家であの頃の東京の映像ばっかり観てる」って言ってたけど、マジで面白いから観たことがない人は観たほうが良いよ。例えば新宿だったら、今のルミネがある周辺とか、掘っ建て小屋みたいなのがいっぱい映ってんの。そのすぐ脇に線路が走っていたりしてさ、こういう動画を観ると、なんて面白い街だったんだろうと思う。

上野とか浅草には、ああいう雰囲気がまだ残っているけどさ、これからさらに変わっていくなんていう話もあるみたいよ。特に浅草なんかは、土地代がどんどん上がっちゃってさ、テナントに入りたくても「小さい商店は高過ぎて入れなくなった」とか、そのテナントを持っている大家さんとかも税金が高くて維持できないとか、そんなところがいっぱいあるらしい。だから、向こう1～2年もしたら街がさらにガラッと変わるなんていう話も聞いたことがある。仕方ないことかもしれないけどさ、これはちょっと寂しいね。

浅草で僕が一番好きな場所があるんだけど、それはね、銀座線の駅の地下街なんだ。ここがもう最高。「日本で最初にできた地下街」らしいんだけどさ、そういう功績は何も反映されていない、薄暗い地下街なんだ。天井から水はポタポタ落ちているし、空調もボロボロだから夏は蒸し風呂みたいに暑いし（笑）。でも、まんま昔の東京みたいな感じがあって、僕は大好きなの。ここも行ったことがない人は絶対行ったほうが良いよ。少しは昔の東京の雰囲気をそのまま感じられると思うからね。

街もそうだけどさ、なんでもかんでも新しいもの、次から次へと変わっていくことが一番良いことみたいに思われているフシがあるじゃん。それも一理あるのかもしれないけどさ、同時に昔の良かったものとか、何かを切り開いたオリジネーターへの敬意とかもちゃんと持っておかないといけないよね。洗練はされていなくても、そういう手探りで切り開かれたものの価値ってマジですごいし、洗練されたものとは違う面白さもあったりするんだから。

構成・文：松田義人（deco）

プロフィール

峯田 和伸

1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル／ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。

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