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『幽☆遊☆白書』女性読者を虜にした蔵馬と飛影の関係性 二人の独特な付き合い方を考察

リアルサウンド

20/8/3(月) 8:00

■主人公のイメージをひっくり返した作品

 90年代の週刊少年ジャンプを代表する作品『幽☆遊☆白書』。連載からすでに20年以上の時が経っているのにも関わらず、人気は健在。連載終了後も数々のアプリゲームやOVAの制作、海外で展覧会が開かれるなど、国内のみに留まらぬ人気を伸ばし続けている。

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 本作をざっくりとカテゴリー分けするなら、少年誌によくある「バトルもの」であり、お約束のバトル・トーナメントも開催される。人々が好む王道要素もふんだんに含まれているのだが、ただありがちな設定だけで長きに渡って愛されることはないだろう。

 『幽☆遊☆白書』の魅力とは、やはりキャラクターの濃さ。大抵こういったジャンルの漫画は、主人公が素直すぎるほどの正義感を持っていて、それが人々を感動させる……という流れが多い。しかし主人公の浦飯幽助は、その概念をひっくり返すような言動が目立つ。

 今とは時代背景が異なるとはいえ、14歳にしてパチンコや喫煙も当たり前、万引きやカツアゲも行っており、物語の序盤から強烈なインパクトを与えてくれる。そして一話目から車に轢かれて死亡。こんなパンチが効きすぎた少年誌の主人公は、なかなか見つからないだろう。いわゆる”少年誌の主人公像”を良い意味で裏切ってくれる主人公だ。

■女性読者が夢中になった蔵馬と飛影の関係性

 本作は男性だけでなく、当時から女性の間でも人気が爆発していた。女性に人気のあるキャラクターと言えば、やはり蔵馬と飛影だろう。熱血な(暑苦しいとも言うが)幽助と桑原とはまた違う雰囲気を持つ二人である。

 蔵馬は南野秀一として人間界で暮らしているが、正体は妖狐という立派な妖怪。魔界時代は盗賊として悪事を動くなど、なかなか悪名高い人物だったようだ。しかしそんな恐ろしさを感じさせない丁寧な言葉遣いに、美しい中性的なルックス。さらには母親思いというギャップがたまらない。

 続いて飛影だが、彼は幽助と一度交戦している。螢子を人質に取るなど卑劣な行為を働いた妖怪だが、後々仲間へと加わることに。戦闘能力こそ高いが口数が少なく、しょっちゅう憎まれ口を叩いては桑原とぶつかっていた。しかし裏では仲間を心から信頼していたり、妹・雪菜のことを想うなど情に熱い一面も持っているのだ。

 元々は盗賊同士の蔵馬と飛影。付き合いが長いからこそ、お互いを理解し合っていると思われるシーンが多々見られた。四聖獣編で再登場を果たし、飛影は初めて幽助に加担することとなる。しかし素直でない彼はお礼を言われても「貴様らを助けたわけじゃない‼︎ かんちがいするな」といつも通りのツンツンっぷりを発揮していた。

 それをフォローするように「あれは彼流の礼だから気にしないで」と一言付け加える蔵馬。飛影の性格を知っていなければ決して出てこない言葉だ。この発言により、二人の関係性を気にし始めた方も多かったのではないだろうか。

 戦いを通じて親しくなった幽助らとはまた違い、蔵馬と飛影は同郷の大切な仲間といったイメージ。雪菜の件などお互いの秘密も知り尽くした関係だと考えると、少しドキドキしてしまうような……。実際に蔵馬が飛影をからかうなど、二人には独特の付き合い方があるのだろう。ツンツンな飛影、保護者的ポジションの蔵馬、多くの女性読者がこの関係性にキュンときてしまったようだ。

 本作はキャラクターが引き立っているからこそ、性別を問わずに人気が集められたとも言える。味方だけでなく敵も個性的で「あれ、誰だっけ?」となるキャラクターが極めて少ない。白熱したバトルだけでなく、キャラクター同士の関係や友情も注目すべきポイントだ。

 幽助達の冒険は幕を下ろしたが、単行本やアニメ、ゲームなどでいつでも彼らに再会出来る。子供の頃とはまた違った視点で楽しめる作品であるため、ぜひ彼らの個性に触れてみて欲しい。新たな発見や感動が見つかることだろう。

■たかなし亜妖
平成生まれのサブカル系ライター。ゲームシナリオライターとしての顔も持つ。得意技は飲み歩きと自炊。趣味はホラー映画鑑賞。

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