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打首獄門同好会、日本武道館ワンマンでみせた13年半の軌跡とバンドを囲む大きな輪

リアルサウンド

18/3/31(土) 13:00

 心踊る春の陽気に、水面煌めく千鳥ヶ淵。「獄」のプリントを背にしたファンが、日本武道館を目指す姿はやはり異様だーー。打首獄門同好会が、3月11日に日本武道館にてワンマンライブ『打首獄門同好会 at 日本武道館』を開催した。アンコール含め全23曲、2時間半を超えるバンドの集大成と呼ぶべき超濃厚ライブである。

 「結局10年やっていると、ライブハウスで一緒にやっていた仲間も、ほとんどいなくなってきているんですよ。だから、居場所としては自然とそっちでやっている人たち、大きいステージでやっている人たちとやれたら面白そうだなっていう。商売っ気抜きに、そうなりたいなっていうのは、ちょっと思いますよね」ーーこれは3年半前、打首が10周年記念ベストアルバム『10獄~TENGOKU~』をリリースした際の、大澤敦史(Vo / Gt)の言葉(RIZEのKenKenらも注目する打首獄門同好会 “生活密着型ラウドロック”のルーツと魅力とは?)。結果、打首は結成から13年半という歳月を経て、“大きいステージ”へと辿り着いた。打首が武道館を満員にする。そんな未来をどれだけの人が予想できただろうか。けっして、派手な露出があったわけではない。キャッチーでポップでいて、重厚なヘビーメタル。“生活密着型”をテーマに、マイブームを共感できる歌詞へ、絶妙な笑いのエッセンスを混ぜて楽曲として届ける。ライブバンドとして愚直とも言える打首のスタイルは、多くのバンド仲間に、ファンに愛され、武道館のライブへと結実されていった。

 今回の武道館公演が発表されたのは、昨年3月に新木場STUDIO COASTで行われた全国ツアー『やんごとなきツアー』最終公演でのことだった。「目指せ武道館!!2017-2018 戦獄絵巻」と題した4つのプロジェクト「夏・秋・冬・春 連続リリース」「47都道府県ライブ全国制覇!」「フェス全国制覇!」「10獄放送局大型新企画始動!」を見事完遂し、打首は武道館のステージへと立つ。「さぁ、あの日に約束した宴を始めよう」と、1年に渡る戦獄絵巻の歩みを歌った楽曲で、いよいよ開幕の火蓋が切って落とされた。

 記念すべき武道館公演の1曲目は、打首のお祭りソングこと「DON-GARA」。ゲストには秋田のフェス『OGA NAMAHAGE ROCK FESTIVAL』から男鹿ナマハゲ太鼓が登場し、和太鼓にて打首のバンドサウンドを勢いづける。今回のライブの特徴は、肉も、魚も、デザートも、全て食べたい! というような貪欲をガツンと満たしてくれる全盛りのセットリストにある。大澤の「冷蔵庫のプリンを盗まれたことはあるかい?」という問いかけから始まった「TAVEMONO NO URAMI」では、ステージ上に8つの松明が点灯し、フロアはヘドバンの海と化す。「島国DNA」「ニクタベイコウ!」「ヤキトリズム」は、魚・焼肉・焼き鳥の動物性たんぱく質繋がりの3連続。「花いちもんめ」のメロディを取り入れた「ニクタベイコウ!」では、左右に分かれての花いちもんめを彷彿とさせるウォールオブデスが巻き起こる。

 魚への溢れる愛を歌った「島国DNA」では、6つのアリーナブロックによる対抗戦「まぐろコンテスト」が開幕。元気に、優雅に、マグロのぬいぐるみを踊らせたブロックには、(コンテストがあったことすら忘れた)終演後に「マグロチャンピオンステッカー」が強制的に渡されるというプログラムだ。審査員には、フィッシュロックバンド・漁港の森田釣竿(Vo)が登場。森田曰く、「高さ・飛距離・回転」が審査の基準になってくるという。6匹のマグロがそれぞれの波に乗る中、森田の「ここからはポイント2倍チャーンス!」という合図で、マグロはさらに荒々しい波を気高くジャンプ。審査の結果、優勝はB2ブロックに決定。筆者も、席から一番近いB2ブロックに注目していたが、ポイント2倍の時間にクルクルと美しく、高く飛んでいたことが評価されたと見る。

 ここまでの時点ですでに明らかではあるが、この日の武道館公演には様々なゲストがステージに色を添えた。男鹿ナマハゲ太鼓、漁港の森田以外にも、「歯痛くて」にはDr.COYASSが、「きのこたけのこ戦争」にはバックドロップシンデレラの豊島”ペリー来航”渉(Gt / Vo)、アサヒキャナコ(Ba / Cho)が登場し、アリーナで起こる“きのこ軍 VS たけのこ軍”のウォールオブデスを扇動した。ライブ後半には、アシュラシンドロームの青木亞一人(Vo)がステージへ。開演前「四国地方のフェスへの参加」の補填として行われた四国八十八カ所のお遍路巡りの模様が映し出されていたのだが、ここで青木はリハーサルとは違ったステージ進行に愕然とする。ハーネスを付けられ宙へ飛び立つ準備万端、高所恐怖症の青木に、お遍路にて精神的にも強くなり、高いところを克服したことを信じ、打首は「88」を披露する。高いところへと吊るされ、悟りの境地に達した青木。彼と打首には、もう1曲馴染み深い楽曲がある。それが、青木の地元・北海道で開催の『RISING SUN ROCK FESTIVAL』に出店した際、店のテーマソングとしてフェスで披露した「10獄食堂へようこそ」だ。続く、「1/6の夢旅人2002」のカバーでは『水曜どうでしょう』(HTB)でご存知のマスコットキャラクター「onちゃん」が登場。河本あす香(Dr)が「岩下の新生姜!」と勇ましく叫ぶ中、岩下食品の新生姜キャップやバルーンがステージに所狭しと並んだ「New Gingeration」然り、「デリシャスティック」で歌われる株式会社やおきんの「うまい棒」とのコラボに然り、打首は個人的な偏愛を叫び続ける。けれど、その特異な愛が結果として多くの共感を呼び、大きな輪となって武道館を満員にしたのだ。本編ラスト、多くの紙幣が会場を舞った「カモン諭吉」にて起こった“福澤諭吉コール”で、自然と湧き起こってくる一体感に、改めて打首のもたらすカタルシスの境地へと、少なくとも筆者は達していた。

 “最初から”コールを受け、3人は再びステージへ。「夢って見るじゃないですか」と大澤はあえて武道館のステージで、レム睡眠とノンレム睡眠の周期について話し出す。センチなメロディとデスボイスの緩急が特徴の「布団の中から出たくない」にて感慨に浸った大澤が、「楽しい夢だったな。できることなら、続きを見たいなと。今の気持ちを例えるならそんな気持ちです」と語ると、会場には自然と温かい拍手が起こった。“風呂入って速攻寝る計画”こと「フローネル」では、歌詞の<しあわせって?>の問いに「今、幸せですよ。ありがとう」と大澤が答える。そこにいた皆が大団円を感じ始めたその時、ステージ上手、スクリーン近くにRIZEのKenKen(Ba)が、一瞬姿を現わす。ほんのわずか数秒。その刹那のために、あの足場が用意され、リハーサルを重ねたのかと想像すると恐れ入るが、盟友であり互いに慕い合う関係性だからこその、任せることができる重要な役であり、同時に多くのゲストを迎えた今回の武道館公演が、打首が歩んできた13年半の軌跡を讃えていた。

 武道館公演を機に、打首メンバーは1カ月ライブ予定を入れず、長期休暇という名の春休みに突入している。およそ1年ぶりのまとまった休み。Twitterの様子だと、大澤は宣言通りドラクエをやり込んでいるようだが、そんな休日を経て、打首はまた私たちに驚くような新曲を届けてくれるはずだ。

(写真=HayachiN)

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

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