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BLACKPINKは“勝利の女神”として時代を牽引 史上最速1億回再生突破した「How You Like That」楽曲&MV分析

リアルサウンド

20/7/2(木) 13:00

 長かった。気付けば1年2カ月が経っていた。

 昨年の『コーチェラ・フェスティバル』の成功を経て、いよいよ世界で活躍するK-POPグループの筆頭格となったBLACKPINK。しかし、コーチェラ以降の活動は(日本でのコンサートなどはあったものの)影を潜めており、ファンは今か今かと次の活動を待ち望んでいた。Twitterのワールドトレンドには定期的に復活を求めるハッシュタグが1位になり、少しでもメンバーが場に姿を現そうものなら、その写真でタイムラインが埋め尽くされた。

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 そもそもBLACKPINKのリリースペースは著しくゆったりだ。他のK-POPアクトが年に1~2枚はアルバムをリリースし、リパッケージ版という手法でさらに露出機会を増やしていくのに対して、BLACKPINKが発表するのは年に数曲レベル。2016年のデビューから早4年が経過したが、これまでに発表された楽曲数はわずか11曲である。しかし、だからこそ、ファンは楽曲を切望するし、いざ楽曲がリリースされた時のインパクトは壮絶だ。そして運営側の気合いの入れようも尋常ではない。

 そしてついに6月26日。2019年4月に発売したミニアルバム『KILL THIS LOVE』以来約1年2カ月ぶりとなる新曲「How You Like That」のリリース日を迎え、SNSのトレンドはBLACKPINK関連で埋め尽くされた。いざMVが公開されると、YouTubeでは歴代史上最速となる32時間での1億回再生突破を記録し、Spotifyグローバル・チャートでは韓国人アーティスト史上最高位となる2位を達成、さらには「チャートなら何でも上げろ」と言わんばかりに彼女達が所属するYG Entertainmentの株価チャートまでもがリリース直後に急上昇するという大フィーバーを巻き起こしている。

 前作のリード曲となった「Kill This Love」は直後に『コーチェラ・フェスティバル』の出演を控えていたということもあり、前年のビヨンセのパフォーマンスに影響を受けたであろうブラスセクションの導入や、当時のUSトレンドであるトラップビートの導入など、BLACKPINKらしさは残しつつも、USのメインストリームを強く意識した楽曲となっていた。

 その反動からか、「How You Like That」については、これまでのBLACKPINKの楽曲の中でも特に「YGらしさ」が色濃く反映された、ある種の原点回帰のような楽曲になっている。丁寧にメロディを歌い上げる序盤から一転して奇妙にうねるベースラインがインパクト抜群のメインパートへ突入する構成や、オリエンタルな上モノと重厚感溢れるビートが織りなすトラック上でLISAが暴れ倒すヒップホップパート、そしてラストに待ち受けるリズムチェンジからの激しいダンスパートと、どこを切り取ってもBLACKPINK、そしてYGらしい攻撃力の高い仕上がりだ。K-POPの特徴とも言える大胆な音色と楽曲展開の応酬に、「待ってました」と思うファンも少なくはないだろう。

 攻撃的なのは音楽性だけではない。「How You Like That」で描かれるのは次のような光景だ。一度は墜落し、暗い日々を過ごしていた自分達が、ついに翼を生やし、高く空へ舞い上がる。一方で同じく暗い空間へと堕ちてしまった、私を墜落させた存在を目の前にして「気に入ったでしょ?/気に入ると思うんだけど(〈How you like that? / You gon’ like that.〉)」とバッサリ切り捨て嘲笑う。実にBLACKPINKらしい、圧倒的な自信と尋常じゃない攻撃力を持つ楽曲と言えるだろう。

 また、歌詞の中には「空を見ろ。鳥だ。飛行機だ。(〈Look up in the sky. It’s a bird, it’s a plane.〉)」というフレーズがある。これはかの「スーパーマン」が登場する時の群衆のセリフであり、本来であればこの後には「スーパーマンだ!(It’s Superman!)」というフレーズが続くのだが、BLACKPINKは違う。「あなたの中にある最強のビッチを引き出せ(〈Bring out your boss bitch.〉)」と告げるのだ。「ガールクラッシュ」の筆頭である彼女たちがリーダーとしてファンの内面にある強さを引き出させる。これはBLACKPINK史上屈指のキラーフレーズでは無いだろうか。

 MVも相変わらず大量のセットを惜しげもなく活用した贅沢な仕上がりとなっており、ティザー公開時から話題を呼んでいた、歴代でも特にエッジの効いた衣装やメイクを身に纏うBLACKPINKの姿が存分に楽しめる。近作ではハイブランドの衣装を使ったセレブリティアピールを示すような流れが比較的多かったが、今回はラフでカジュアルな衣装も多く、特にMV後半ではこれまでの衣装から一転して、韓服のチョゴリやトゥルマギ(韓国外套)を想起させる衣装で激しいダンスパートに突入しており、本作の攻撃性や女性としてのプライドをさらに高めている。

 また、ファンの間ではすでに本MVへの考察が活発に進んでいるが、その中でも興味深いのが、最初のセットに登場する、今回のMVを象徴する首の無い巨大なオブジェについて。ギリシャ神話における勝利の女神であるニーケーを表現したギリシャ彫刻「サモトラケのニケ」を模しているのではないかという説だ。MVの後半では各メンバーがオブジェと姿を重ねるカットがある。つまり、「How You Like That」のMVを通して、BLACKPINKは自らが「勝利の女神」であると宣言しているのだ。あくまでも考察ではあるが、本作のテーマとも合致しており、筆者としてもあながち間違いではないのではないかと思っている。

 勝利の女神に自らの姿をなぞらえ、ヘイターを嘲笑う「How You Like That」はBLACKPINKの帰還を宣言するには十分すぎるほどに力強い楽曲だ。もはや「ガールクラッシュ」という枠を超えて、そのメッセージは世界中のBLINK(ブリンク=ファンの呼称)たちを力づける原動力となっている。だからこそ、そろそろ今年くらいにはアルバムという形でBLACKPINKが提示する世界観に触れたい……! とも思ってしまうのも正直なところではある。(ノイ村)

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