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時空を超えた新旧アートの共演が実現! 国立新美術館『古典×現代2020』展

ぴあ

20/4/13(月) 18:00

鴻池朋子《皮緞帳》2015年/2020年

国立新美術館にて開催予定の『古典×現代2020—時空を超える日本のアート』展。新型コロナウイルスの影響により、現在は休館中だが、先日行われた内覧会から展示の様子をレポートする。

江戸時代以前の絵画や仏像、陶芸や刀剣の名品が、現代を生きる8人のアーティストの作品と組み合わせて紹介される同展。

展示室は8つの部屋にしきられ、それぞれの部屋でペアとなった新旧アーティストの作品が展示される。その興味深い組み合わせは、「仙厓×菅木志雄」「花鳥画×川内倫子」「円空×棚田康司」「刀剣×鴻池朋子」「仏像×田根剛」「北斎×しりあがり寿」「乾山×皆川明」「蕭白×横尾忠則」の8組。現代アーティスト側には、美術家、写真家、彫刻家、建築家、漫画家、デザイナーと錚々たる顔ぶれが並ぶ。

最初の部屋に登場するのは、「仙厓×菅木志雄」だ。仙厓義梵(1750〜1837)は、「円」で悟りの境地を示す禅画で知られる江戸時代の禅僧。菅は仙厓の《円相図》に呼応するように、亜鉛板で示した円形に木や石などを配置した過去作を再制作。「人とものの在り方」についての新旧の思想が、最もシンプルな形で立ち現れる。

菅木志雄《支空》 1985年/2020年 
仙厓義梵《円相図》 江戸時代・19世紀 福岡市美術館(石村コレクション)
 

続く第2の部屋「花鳥画×川内倫子」では、花・鳥・草木といった身近なモチーフを切り取った花鳥画と写真作品が並ぶ。

伊藤若冲(1716〜1800)をはじめとする江戸時代の絵師たちは、中国から伝わった新しい写生画画法を基に、四季折々の草木や動植物のフォルムの美しさや生命感を一層際立たせた。一方、川内は花や小鳥など身近なモチーフを、周囲の文脈とは切り離して撮影。移ろいゆくものに宿る生命感と、その背後に潜む無常観が、江戸時代の花鳥画と響き合う。

会場風景
伊藤若冲《鳥禽図》 江戸時代・18世紀 滋賀県立琵琶湖文化館
 
川内倫子《無題》シリーズ〈AILA〉より 2004年 作家蔵 © Rinko Kawauchi

第3の部屋は「円空×棚田康司」。全国を旅しながら立ち木に仏を彫り上げた円空(1632〜1695)と、同じく一本の木から人の像を作り出す棚田。荒々しくも優しさに満ちた神仏と、ぎこちなさの中に力強さも見せる少年少女たちが、木材の持つ生命力をたたえて立ち並ぶ。

左:円空《護法神立像》江戸時代・17世紀 岐阜・神明神社 右:棚田康司《鏡の少女》2017年 常陸国出雲大社コレクション
棚田康司 新作《宙の像》2020年 作家像

第4の部屋「刀剣×鴻池朋子」では、平安時代以降に制作された太刀や刀、刀剣に、神話的なイメージが描かれた動物の皮をつないだ緞帳を組み合わせた、壮大なインスタレーションが登場。巨大緞帳が混沌としたエネルギーを発する中で、研ぎ澄まされた刀剣に潜在する「切り裂く」という根源的な力を感じ取ることができる。

鴻池朋子《皮緞帳》2015年/2020年

第5の部屋「仏像×田根剛」では、滋賀県にある天台宗の古刹、西明寺の日光・月光菩薩に、国際的に活躍する建築家の田根が光のインスタレーションを施す。僧侶の声明が響き渡る暗闇の中、上下に移動し明滅する光に照らされ、全身を金箔で覆われた二つの像が神々しく浮かび上がる。像と語らい、深い内面の経験を得られるような、特別な時空間が味わえる。

《月光菩薩立像》 《日光菩薩立像》 鎌倉時代・13世紀  滋賀・西明寺 田根剛《光りと祈り》2020年

第6の部屋は「北斎×しりあがり寿」。葛飾北斎(1760〜1849)の代表作《冨嶽三十六景》とともに、漫画家しりあがりによるパロディ作品《ちょっと可笑しなほぼ三十六景》が並ぶ。さらに、しりあがりが「ゆるめ〜しょん」と呼ぶゆるいタッチで描いた新作映像《天地創造from四畳半》を巨大壁面に上映。描く喜びにあふれた北斎の人生賛歌を、ゆるく、そして壮大に(!?)謳い上げる。

画像上:葛飾北斎《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》 江戸時代・19世紀  和泉市久保惣記念美術館 画像下:しりあがり寿《ちょっと可笑しなほぼ三十六景 太陽から見た地球》 2017年  作家蔵
しりあがり寿《天地創造from四畳半》 2020年

第7の部屋「乾山×皆川明」には、尾形乾山(1663〜1743)のうつわや陶片に、ファッションデザイナー皆川のテキスタイル、洋服、ハギレを組み合わせて展示。ふたつの異質な世界が、有機的な温もりやシンプルな華やかさという共通項で融合し、新たな世界を作り出している。

会場風景
尾形乾山《銹絵染付白彩菊桐文角向付》《藍絵阿蘭陀写草花文角鉢》江戸時代・18世紀 京都・法蔵禅寺 minä perhonen《piece》2014年

最後の部屋では、奇想の絵描きとして強烈な個性を放つ「蕭白×横尾忠則」。1970年代から曾我蕭白(1730〜1781)に魅了され、何度もオマージュを捧げてきた横尾.の言葉を借りると、「デモーニッシュ(悪魔的)な」魅力にあふれる空間となっている。

会場風景
曾我蕭白《群仙図屏風》(左隻) 江戸時代・18世紀 2曲1双 東京藝術大学 
横尾忠則《寒山拾得2020》 2019年 作家蔵  撮影:上野則宏

今では「古典」とされるかつてのアーティストも、その時代のものづくりの世界では、やんちゃな前衛、過激なアヴァンギャルドだったはず。そんな古典作品に向き合った現代アーティストたちもまた、現代ならではの感覚を研ぎ澄ませた作品で応えている。そんな時空を超えた新旧アートの競演を楽しんでほしい。

『古典×現代2020 時空を超える日本のアート』6月1日(月)まで国立新美術館にて開催予定※現在臨時休館中。開幕日については公式HPにて確認を。
【関連リンク】古典×現代2020 時空を超える日本のアート

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