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ぴあ

いま、最高の一本に出会える

ROLLY×萩原健太が語る、世界を魅了し続けるクイーンの偉業「違和感のようなものが彼らの本質」

リアルサウンド

19/7/17(水) 10:00

 タワーレコードが、次世代のエンターテック人材の育成・輩出なども視野に入れて始動した新プロジェクト・TOWER ACADEMY。クリエイターとリスナーの垣根を越えて、音楽やエンターテインメントのつくり方、楽しみ方をアップデートする体験を提供する同プロジェクトにて、音楽・映画連動企画講座『ボヘミアン・ラプソディ』のPart.2が6月29日、東京・神楽坂の音楽の友ホールで開催された。

 映画『ボヘミアン・ラプソディ』のBlu-ray/DVD やQUEENのアルバムなどを販売する特設ブース、20世紀フォックス提供の撮影用フォトパネルなどが併設された会場は満員の盛況ぶり。その半数がリピーターということからもファンの熱気が伝わってくる。初期3枚のアルバムを取りあげたPart.1(4月6日開催)に続いて、この日の講座ではQUEENが英国の人気バンドから、世界的バンドの座へと上り詰めた時期にあたる、4枚目『オペラ座の夜』(『A Night at the Opera』/1975年)、5枚目『華麗なるレース』(『A Day at the Races』/1976年)、6枚目『世界に捧ぐ』(『News Of The World』/1977年)の3枚のアルバムについて、その当時の時代背景なども盛り込みつつ、詳しく掘り下げられていった。

 13時ちょうど、開講のチャイムと共に前回と同じく、司会進行役の矢口清治が登場。まずは会場の音響システムの説明から。スピーカーはMONITOR AUDIO(モニターオーディオ)社、アンプとCDプレイヤーはROKSAN(ロクサン)社と英国メーカーにこだわって最上級のオーディオがセッティングされ、最高のサウンドでQUEENの音楽を楽しめるのが、本講座の魅力のひとつである。

 そして今回のキーワードは「コーラス」と「ギター」ということで、それぞれスペシャルな専門家が登壇。音楽評論家でコーラス研究家でもある萩原健太は、3枚のアルバムがリリースされた1970年代半ばのミュージックシーンを以下のように総括する。

「60年代アメリカのカウンターカルチャーを象徴するイベント『ウッドストック・フェスティバル』が1969年に終了し、ロックで世界を変えられるという共同幻想が薄れつつあった“あきらめ”の時代。それに代わって米国では、より個人的な“君と僕”のことを歌ったシンガーソングライターが台頭。英国には退廃的なグラムロックが現れた。そして1975年頃になると、音楽ビジネスのシステムが確立。商業的でより“売れる”音楽が求められるようになり、シンプルに若者の感情を発露した楽曲よりも、もっと作り込んだ緻密なサウンドが好まれるようになった。そういう背景があったからこそ、QUEENもあれだけ中身の詰まった精緻なアルバムをリリースすることができたのだと思う」【萩原】

 続いて、当時は小学生だったという、ボーカリスト/ギタリストで海外ロック通、とりわけQUEENの大ファンとして知られるROLLYが登壇。時にギターを奏でて実況を交えながら、その馴れ初めについて以下のように語った。

「自分たちが普段聴いている音楽を教室で発表して、みんなで聴くという授業が小学生の頃にあって。クラスメイトのイトウくんが『オペラ座の夜』のLPを持って来たんです! 僕はそれまでQUEENを聴いたことがなかった。どんな音楽やろ、と思っていたら1曲目の「Death on Two Legs」から耳が釘付け。目の前に、霧に佇むヨーロッパの古城の、暗い螺旋階段を地下まで降りて行って、そこの扉を開け放したような、今まで見たこともないような風景が思いっきり広がった。そして2曲目の「うつろな日曜日」(「Lazing on a Sunday Afternoon」)でも人生が変わる衝撃を受ける。まるで白黒の無声映画を観ているように、リゾート地で貴族が縞々の水着で体操して、その横をプードル連れの貴婦人が散歩しているような、そんな映像が浮かんで、もう、たまげました(笑)」【ROLLY】

Queen – Lazing On A Sunday Afternoon (Official Lyric Video)
Queen – Death on Two Legs (Official Lyric Video)

第1時限目

 まずは「Bohemian Rhapsody」を生んだアルバム『A Night at the Opera(オペラ座の夜)』(英国:1975年11月22日、日本:1975年12月21日 発売)を徹底解剖。なお、当時の音楽シーンがイメージできるように「1975年の日本における洋楽ヒット」として、オリビア・ニュートン=ジョン「そよ風の誘惑」(「Have You Never Been Mellow」)、ブルース・スプリングスティーン「明日なき暴走」(「Born to Run」)、10cc「I’m Not in Love」、ミニー・リパートン「Lovin’ you」などの聴きどころを繋げた、タワーアカデミー特製のメドレーも流された。

「この時代、レコーディング技術も飛躍的に進歩。60年代のThe Beatlesなどの4チャンネルに対して、QUEENは24チャンネルを駆使しつつ、それでもまだもの足りなくて、さらに理想のサウンドを目指して格闘していた。まさに、マルチトラック技術と人の力の合わせワザ。その例が、自分のようなマニアからすると、画期的な多重コーラス。何も省かないで入れる、全部のせの凄まじく濃厚なコーラス」【萩原】

「当時のレコーディング技術くらいなら、今では誰でもノートパソコンがあればできる。でも、あのQUEENのぎっしりと詰まったサウンド、人を不安な気持ちにさせる音階、トップにメロディを置いて、下をフレディ・マーキュリーの魅惑の低音が支えるあのユニークなコーラスは、誰にも真似できないはず」【ROLLY】

 このアルバムから萩原が敢えて選んだ1曲は、当然「Bohemian Rhapsody」。会場は最高級のオーディオが奏でるこの世紀の名曲に静かに耳を傾けた。

Queen – Bohemian Rhapsody (Official Video)

「やはり、ブライアン・メイの個性が際立ってます。こんな風にギターを弾いた人はいなかった。独特のタイム感、チョーキング(弦を持ち上げて音程を上げるギター奏法)もユニーク」【ROLLY】

「チョーキングは普通、音の上げ方にこだわる人が多いけれど、ブライアンは下げ方のニュアンスが独特」【萩原】

「しかもその上げるスピードが誰よりも遅い(笑)。加えて(お母さんが家の小瓶に貯めていたという)6ペンスコインを使ったピッキングの妙。ピックが小さいので弦に指がちょっと当たって、あの味が出る。しかもギターはお父さんと一緒に手作りしたレッドスペシャル。そんなギタリストが他にいますか?(笑)」【ROLLY】

 ROLLYが、ブライアン・メイのギタープレイの特徴を解説しながら、実際に6ペンスコインとピックでの実演を披露。プロの生演奏によってそれぞれの音色の違いを生で体感した客席からは大きな拍手が起こる。座学だけでなく、実際に音楽体験から知識を深められることは、この講座の醍醐味とも言えるだろう。

第2時限目

 続いてアルバム『A Day at the Races(華麗なるレース)』(英国:1976年12月10日、日本:1977年1月9日 発売)に話は移る。「1976年の日本における洋楽ヒット」として、バリー・マニロウ「歌の贈りもの」(「I Write the Songs」)、ボズ・スキャッグス「Lowdown」、Chicago「愛ある別れ」(「If You Leave Me Now」)、ダリル・ホール&ジョン・オーツ「追憶のメロディ」(She’s Gone)、エリック・カルメン「All By Myself」などがメドレーで流された。

「商業主義がますます進んで、“売れない”レコードは出してもらえない時代。だから下手な演奏はなくてあたりまえ。その分、一流ミュージシャン同士のセッションが盛んになって、より洗練された音楽が増えていく。そんな流れの中でアダルト・コンテンポラリーなものが人気を呼び、広がっていった」【萩原】

「QUEENのアルバムではマルチトラックの分離がさらに際立ち、進化している」【ROLLY】

 このアルバムから萩原が敢えて選んだ1曲は「You Take My Breath Away」。

Queen – You Take My Breath Away – (Official Lyric Video)

「やはりコーラスが前作よりも洗練されている」【萩原】

「The Beatlesの「Because」みたいな曲ですよね。アダルト・コンテンポラリー路線を取り入れているけれど、ブライアンはハードロック志向。この頃からフレディは、だんだんブライアンのギターがやかましいと思い始めていたはず(笑)。でも僕は好き。「You And I 」では新しいことにも挑戦して、特に「The Millionaire Waltz」はブライアンの才気がほとばしっている。あの、泣きじゃくった後で遊園地のメリーゴーラウンドに乗っているみたいな感じ。あの世界観が出せるロックギタリストはこの人以外にいない!」【ROLLY】

Queen – The Millionaire Waltz – (Official Lyric Video)

「ブライアンのギターにはブルースっぽさがないけれど、クラシックの伝統とロックが融合していると思う。さすがBBCプロムス(世界最大級のクラシックフェス)の国」【萩原】

「あらゆる音楽のいいところだけが集まっている、いわば闇鍋パーティーのようなゲテモノ感がたまらない。特にフレディはマレーネ・ディートリッヒのキャバレー音楽やエディット・ピアフのシャンソンにも傾倒していた。「伝説のチャンピオン」(「We Are The Champions」)をよく聴くとシャンソンの「パリの空の下」(「Sous le ciel de Paris」)からの強い影響が感じられるはず」【ROLLY】

Queen – We Are The Champions (Official Video)
Edith Piaf – Sous le ciel de Paris

 当時のヒットナンバーと比較しながら、独創的な方向へと変化していくQUEENのサウンドを、音楽評論家とプレイヤーの両方の視点から解説したほか、コアファンも頷ける楽曲の背景も学べる充実した時間となった。

第3時限目

 ここではその「伝説のチャンピオン」や「We Will Rock You」を生んだアルバム『News Of The World(世界に捧ぐ)』(英国:1977年10月28日、日本:1977年11月25日 発売)を解説。「1977年の日本における洋楽ヒット」として、ABBA「Dancing Queen」、The Eagles「Hotel California」、フリートウッド・マック「Dreams」、アンディ・ギブ「恋のときめき」(「I Just Want to Be Your Everything」)、ELO(Electric Light Orchestra)「Telephone Line」、The Emotions「Best of My Love」などがメドレーで流された。

「“売れる”音楽の究極のかたちとしてディスコサウンドの台頭。英国では逆にその反動で、バンド回帰的なパンクの人気が高まる。その一方でアメリカのロックが持っていたスピリッツが消えつつあった時代……The Eaglesの「Hotel California」はその内部告発のような象徴的な曲だった」【萩原】

「このアルバムでのQUEENは、シンプルさと作り込み要素が共存。サウンドもカラッとあっけらかんなかんじ」【ROLLY】

 このアルバムから萩原が敢えて選んだ1曲はベースのジョン・ディーコンが書いた「永遠の翼」(「Spread Your Wings」)。

Queen – Spread Your Wings (Official Video)

「経済不況の英国で、パンクがその怒りをエネルギーにして爆発させているのに対し、この曲はバーで床掃除をしている若者サミーに向かって、もっと夢を追え“翼を広げて遠くまで飛べ”と激励している。同じ世相を背景にしている曲でもこんなに違う。そこがとてもQUEENらしい」【萩原】

「フレディもパンクには相当びびっていたと思います。自分たちの音楽のことを内心、時代遅れかも……って。でもその不安を吹き飛ばすかのように「伝説のチャンピオン」や「We Will Rock You」を歌って開き直るのがQUEENのすごいところ。それが40年近く時代を経て、いまだに色褪せずにこうして世界中を熱狂させているところが素晴らしい」【ROLLY】

「直球の強さです。世相を超えたオリジナル」【萩原】

「そしてギタリスト的な視点で、僕が好きなこのアルバムの1曲は「うつろな人生」(「Sleeping on the Sidewalk」)。ブライアンの音が下がりきらないトレモロ、最高。エディ・ヴァンヘイレンやリッチー・ブラックモアとはまた全然違う最強さ」【ROLLY】

Queen – Sleeping On the Sidewalk (Official Lyric Video)

 まだまだ語り足りない、弾き足りない様子を講師陣からも感じる中で、あっという間に講義の時間も残りわずかに。ROLLYも講義が進む中で、純粋なQUEENファン、ブライアン・メイ信者としてどんどんヒートアップ。最後の最後まで、惜しげも無くギタープレイを披露した。

ホームルーム

 最後にまとめのホームルーム。結局、QUEENの魅力ってひと言で何? 特に映画『ボヘミアン・ラプソディ』を観て目覚めた若いファンにアピールするとしたら? という質問に対して……。

「結局、QUEENは単なるロックバンドじゃないんです。そういうバンドとしての性質を考えたときに感じる違和感のようなものがまさに彼らの本質。そこをリスナーとして追求して、どんどん扉を開いて進んでいくのがQUEENの楽しみ方。皆さんもさらにその冒険を続けてみてください」【萩原】

「ブライアン・メイの魅力も今、この会場にいる皆さんが誰よりも理解していることでしょう(笑)。今日は集まってくれてありがとうございます。またお会いしましょう」【ROLLY】

 萩原健太の専門家らしい含蓄のある話と、ギターを片手に演奏しながら言葉よりも雄弁に語るROLLYのトークに惹き込まれた2時間。ここには書き切れなかったが、参加者から集めたROLLYへの質問コーナーも大いに盛り上がりをみせた。次回は9月7日にPart.3とPart.4の同日開催が決定している。

(取材・文=東端哲也/写真=(C)M.Kiyomoto)

■イベント情報
『音楽・映画連動講座「ボヘミアン・ラプソディ」Part 3 & Part 4』
開催日時:2019年9月7日(土)
Part.3:13:00〜15:00終了予定
Part.4:17:00〜19:00終了予定

講師:Part.3: 未定 Part.4:未定
MC:矢口清治 
ゲストMC:萩原健太(Part.3、Part.4共に解説)
場所:音楽の友ホール(東京都新宿区神楽坂6-30)
チケット代:各¥3,000(税込)
詳細はこちら

<概要>
『ボヘミアン・ラプソディ』最終章が9月7日に開催。1st SessionをPart.3とし、1978年発表の『JAZZ』から1984年発表の『THE WORKS』までを解説予定。2nd SessionをPart.4とし、フレディ・マーキュリーのソロワークに焦点を当てて解説予定。今回もゲストMCは萩原健太氏が務め、他の講師はまだ未定となっている。

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