前回の続きです。怪談のDVDを観た夜中、マネージャーの洋介が夜中に耳にした「せっせせーの、よいよいよい♪」。この日は夢の中の体験なのか、現実なのかわからないままだったようだけど、実はこの翌日、また同じように金縛りが起きたらしいです。

さらに3日目にも金縛りが起きたそうだけど、この日は布団に入って寝ている洋介の脇を誰かがピタッ、ピタッと歩いているような雰囲気があったんだって。でも、洋介は怖くて目を開けることができず、ジッと耐えていたらしい。

「お前、バカか。そういうときはちゃんと目を開けろよ。確かに怖いのはわかるけどさ、こういう仕事をしている以上、どんな体験も全部エンタメに変えていかなくちゃダメなんだから」と洋介を諭したんだけど……4日目の晩も、やっぱり金縛りが起きたんだって。

しかも、この日も洋介の周りを誰かが歩いていて、しかも自分の周りをグルグルグルグルしていたらしくて。僕から「そういうときは、ちゃんと目を開けろ」と言われた洋介だけど、やっぱり怖くて開けられないままだったらしい。

するとさ、グルグル回っていた誰かが洋介の顔の近くで一瞬気配が止まったんだって。「うわー来た来た。いるいる。怖い怖い怖い」と思って、ますます目を開けられなくなったらしいんだけど、その誰かが洋介のまぶたをグーっとこじ開けようとするんだって。「ヤメてくれ！！」と念じて、そのまま「誰か」はいなくなったみたいだけど、これ嘘みたいな本当の話。マジで洋介の身に起きた話なんだ

その4日目のことも洋介から報告を受けたんだけど、そこで僕はこう言ったの。「でもさ、よくよく考えてみると、そもそも怪談DVDを観てから、そういうことが連続して起きるんだよね。そのDVDの内容と連動して怪奇現象が起きるのか、それとも、『物』としてのDVDに関係しているのかわからないけど、試しに洋介の友達にそのDVDを送ってみたら？」って。

そしたら洋介は僕の指令通り、そのDVDを地元・川崎時代のYくんっていう友達に「面白いDVDあるから観て」と言ってコンビニから速達で送ったらしい。「絶対に感想聞かせてね」っていうのも忘れずに伝えてね。

その後、Yくんの元にDVDが届いた翌日くらいに洋介が電話したらしいの。「どう、面白かった？」っつって。そしたらYくんは「いや、面白いも何も、とにかく怖かったよ。たださ……洋介、ひとつ聞いていいかな？　気のせいかもしれないけどさ、あのDVDを観て寝たのが深夜2時頃だったんだけど、生まれて初めて金縛りにかかったんだよ。しかもさ、外からなんか女の人が歌ってる声が聞こえたんだ、2回。なんだろうね、これは」って言ったらしい。

洋介は「ヤバい、ヤバすぎる！　同じことが起きてる！」と思ったそうだけど、その場では知らないフリをして「マ、マジで!?　気のせいなんじゃ、ないかなぁ」みたいに答えたらしい。

さらにその翌日、もう一度Yくんに電話すると、洋介と同じようなことが起き続けて、やっぱり4日目にはYくんの周りを誰かがグルグル回っていたらしい。Yくんの顔元でピタッと気配が止まり「うわぁ！」と思ったらしいんだけど、唯一洋介と状況が違ったのは、女の人がYくんの耳元で「ミエコ」って言うんだって。「見に行こう」とかを聞き間違えて「ミエコ」に聞こえたんじゃないかとも僕は思ったんだけど、確かに「ミ・エ・コ」の三文字なんだって。

その話を聞いた洋介は、さすがに観念して、そもそものあらましをYくんに伝えたらしい。「実は俺もこういうことがあって、怖いからYくんに送ったんだ」って。そしたらYくん、パニックになって「ふざけんなよ。やめろよ」みたいになったらしいけど、その後……「わかった、じゃあ俺も誰かに送る！」となったらしい。

それで、今度は3人目で童貞のSくんっていう、やっぱり地元・川崎の4個下の友達に送ることにしたんだって。地元は一緒だけど、今Sくんは実家を出て都内のアパートにひとり暮らし。やっぱりこっちで起きたことは何も伝えずに、そのDVDを送って何が起きるかを聞いてみることにしたんだ。（次週に続く）

構成・文：松田義人（deco）

プロフィール

峯田 和伸

1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル／ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。