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Fukase 映画『キャラクター』で俳優デビュー「もう一人の自分のような感覚で両角と共鳴していた」

ぴあ

Fukase 撮影/奥田耕平

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6月11日公開の映画『キャラクター』。『20世紀少年』『MASTERキートン』など漫画家・浦沢直樹の作品のストーリー共同制作者・長崎尚志が10年の歳月をかけて構想した企画がついに実写映画化を果たす。売れない漫画家が偶然殺人犯と遭遇するところから始まる完全オリジナルストーリーだ。

本作で俳優デビューを果たすのはSEKAI NO OWARIのボーカル・Fukase。劇中ひときわ目を惹く不気味さと美しさをはらんだ物語のキーパーソン、殺人犯の両角を見事に演じている。しかし、本作のオファーを受けた際には多くの迷い・葛藤があったと言う。

気づいたら両角になるしかなかった

ーー本作で演技初挑戦のFukaseさん。オファーが来た際、率直にどのようなお気持ちだったのか教えてください。

オファーの資料をいただいたとき、ちょうどレコーディング中だったんです。概要とざっくりとしたキャストが書かれた紙の資料をマネージャーからサッと渡されて。頭の中からレコーディングの中身が飛んじゃって、マネージャーに対して「知らせるタイミング、ブスだなぁ……」と思ったんですけど(笑)、オファーが来た日は殺人鬼役か~!と気持ち的にすごく楽しかったですね。

外国人の方とかとシェアハウスをしているので、家に帰ってお酒を飲みながら「殺人鬼役だって! ついに来ちゃったよ!」と面白がって話していました。

ーー楽しかったんですね。

でも、オファーを受けた次の日の朝「これ無理じゃない?相手役、菅田将暉なんだけど……」「冷静に考えたら、芝居したことないじゃん」と(笑)。そこでお断りしようと思いました。僕自身、映画がとても好きなので、自分が未熟なことによって作品が不完全になったり完成度が下がったりするのがどうしても許せなかったんです。

とはいえ、お断りするにしても直接理由をお伝えした方がいいだろうと、プロデューサーの村瀬(健)さんにお会いしに行きました。そしたら「できるできる!」と強引に心のドアをねじ開けられ。おだてりゃ木に登る精神だったんでしょうね、僕はまんまとおだてに乗せられてしまいました……。いやでも、直前まで出るかは迷ってはいましたよ。

ーー当初抱いた気持ちは変わらなかったと。

作品が良くないものになるなら僕じゃない方がいいという気持ちは変わらないですね。撮影が始まるまで1年半くらいの期間があると言われたから、一旦演技のレッスンをしてくださる先生に話しを聞こうと。1年半でこういう役を演じられるようになるのでしょうかと相談したら、「とりあえずやってみましょう」と何の保障もないコメントをいただき、とりあえずレッスンを受けることに(笑)。

最新の台本がずっと来なくて両角というキャラクターが分からない中、役者さんがゼロから演技を学ぶようなレッスンを続けていて。殺人鬼役のレッスンではなかったため、レッスンを開始してからも本当に大丈夫なのかなと不安を募らせていました。それで、マネージャーに「本当に俺で大丈夫かな?」と相談したら「今断ったら事故るので無理です」と言われ、気づいたら両角になるしかなかった(笑)。完全に罠にはめられましたね……。

ーー断れない状況になっていたんですね(笑)。

こうなったらやってやろう!と腹をくくってからはすごく楽しめました。監督(永井聡)とも村瀬さんともマネージャーともたくさん話しをして、それでも僕を映画に出すと決めてくださった。どう思われようと何を言われようと責任はあなたたちにある!と(笑)。ダメでも僕のせいではない!……とまでは言わなかったですけど、定期的に演技のワークショップに通い、宿題もこなし、お芝居と真摯に向き合えたと自信を持って言えるくらい僕ができることは全部やりました。

それで撮影前ラストの1~2ヶ月で両角という役に向き合って、すごく集中して初めての役づくりをやらせていただきましたね。

神木隆之介からのアドバイスが役づくりのヒントに

ーーどのように「両角」という殺人鬼のキャラクターをつくり上げていかれたのでしょうか。

オリジナルストーリーということもあり、完璧に「両角」のキャラクターを把握している人がいない状態でした。漠然としているからこそ縛りがなくて、どう演じてもいいんですよ。台本にはセリフが書かれているだけで、立ち振る舞い・行動・仕草などの指定は一切ない。非常に困りました(笑)。なので、みんなの持つ漠然とした両角の像をもとに、みんなで一緒につくり上げていきましたね。

ーー漠然とした両角のイメージをFukaseさんご自身はどう定着させていきましたか?

僕が役者をやることに対して最初に背中を押してくれたのが神木隆之介という男でした。役に対してもいろいろ考えてくれて、その中で彼が言った「Fukaseくんは優しい殺人鬼が似合うよ」という言葉がすごく印象的だったんです。

ーー「優しい殺人鬼」……?

僕も初めは優しい殺人鬼って何?と思いました。優しいやつは殺人しないだろ!と。一方で言ってることはわかるなと思い、当時渡されていた未完成の台本に書かれているセリフをとりあえず優しい声で喋ってみようと。その喋っている声を自分で聞いて過ごす日々を続けました。

この声のイメージからまずは両角の喋り方を決めたんです。そこからどんどん両角の人間が自分の中でつくり上げられていきました。

ーー声からキャラクターの理解を深めていったんですね。

両角は快楽殺人犯のように殺人をして興奮する人間ではありません。基本的にフィクションで描かれる殺人鬼って人が悶え苦しむのを見て喜びや興奮を覚える快楽殺人犯が多いと思うのですが、台本に書かれていた両角にはそういった要素が全く出てこなかった。参考にできるものは一切ないと考え、自分の優しい声をキーワードにちょっとずつ肉付けしていきました。初めてのことなのでこれが本当に正しいやり方かは分からないですけど、自分の中では役を掴みやすかったです。

ーーキャラクターを掴んでいく中で両角というキャラクターに対して共感できる点はありましたか?

最初は正直、両角は自分の目的のために命を奪う人間で最強のエゴイストだから共感できるところがないなと。それで演技レッスンの先生に相談したら「Fukaseさんの小さい頃に戻って、幸せだった嬉しかった大切な思い出、大切な人・もの、それこそ音楽とかいろんなものを一個ずつ頭の中から消し去ってください」と言われたんです。

かなりメンタルにきそうな作業だなと思いながらも3日くらいかけて一個ずつ消していきました。そしたら自分も大切なものがなければ、こういう人間になっている可能性があったと気づいた。誰しもが加害者になり得るとは昔から思ってはいましたけど、それが腑に落ちたというか。いろんな良い出会いをして僕には守るもの・大切なものがあって、社会のルールへ則るために法律を犯さない生き方をしているだけで、それら全部がなくなったら僕は両角のような人間になる可能性もあったんじゃないかと。ある種のパラレルワールドだと思いました。大切な人・ものに一個も出会わない人生を歩んでしまったもう一人の自分のような感覚で両角と共鳴し合っていきました。

ーー表情や挙動などの細かい演技はそういった共鳴によるものも大きかったのでしょうか。

どうなんでしょうね……。ただ、自分で意識して演じていたわけでも、監督やプロデューサーから「こうしてほしい」と言われたわけでもなく、勝手にあの表情や挙動になっていたんですよね。初めて菅田くん演じる両角と対峙するシーンの撮影で、みなさんに「今のよかったよ!」と言われて。自分では何かしていました?という感じでした。でもプレイバックを見てみたら、何かしてんな!と(笑)。それは自分の喋っている声やセリフの内容に自然と引っ張られて、そういう挙動や表情になったのだと思います。

ーーそれはもはや才能ですよね……。

やめてください、そんなこと言わないで!(笑)映画が公開したら、映画のレビューサイトでは、僕の演技に対する優しい優しい星5を期待しています……!

「人を殺すって二日寝込むくらい疲れるんです」

ーー演技初挑戦で殺人鬼役という大変な役柄を演じられていますが、中でも特にきつかった・大変だったことを教えてください。

人を殺すシーンの演技をした次の日は、全身筋肉痛で体が全く動かなくなって大変でした。人を刺すシーンはアクションを教えてくれる専門チームの方たちが指導してくださって。最初のアクション指導のときに「そんな力じゃここまで刺さらないっすよ!」「人間の肉ってもっと固いんですよ!?」と言われて、なんでそんなこと知っているのだろう……この人たち何者なんだろう……目も超怖いし……とビクビクしていたんですけど(笑)。

ーーあはは(笑)。

とにかくアクションに対する熱量が高く真摯な方たちで。指導の通り思いっきり動作を入れないと本当に刺しているように見えなかった。指導の成果が出せたときは「Fukaseさん、今のばっちりでした。あれだったらちゃんと刺さっています!」と言っていただき、僕もありがとうございます……!ってなりましたね(笑)。

ーーそれだけ力を入れるから全身筋肉痛になるんですね。

すごく疲れますよ。「人を殺すって二日間寝込むくらい疲れるんだよ」という両角のセリフがあるんですけど、本当にその通りでした。あのセリフも最後に渡された台本では「一日寝込むくらい疲れるんだよ」と書き直されていて、何で書き直んですか!?と監督に聞きに行きましたからね。4人殺したら絶対二日は寝込む!何なら三日でもいい!一日寝込むなんてただの風邪じゃないですか!と言いに行った結果、「それなら二日でいいよ」とセリフを変更してもらいました(笑)。

ーーFukaseさんの意見が組み込まれたセリフだったんですね。共演者の方との印象的なエピソードはありますか?

撮影中、菅田くんと高畑(充希)さんと一緒の楽屋の日があって、僕の入りが最後だったんです。慣れない撮影現場で、初めての合同楽屋だったから入っていいのかすら分からず、スタッフの方に入っていいか聞いて「役者なので入って大丈夫ですよ」と言われ(笑)、めちゃめちゃ緊張しながら入ったんですよ。

そしたら、このあと割と緊迫したシーンを撮影するにも関わらず、二人とも実家の正月の四日目くらいのすごく緩やかなテンションで。俺、肩に力入り過ぎているな……と思いましたね。

ーー楽屋ではどんなお話をされていたんですか?

二人は大阪出身だから「大阪の人が東京に上京して感じたあるあるネタ」をずっと話していて。「東京は会話にオチがなくていいんや。今日、天気いいですねみたいな話しでもいいんや」「分かる分かる!」みたいな。なんでこんなに緩い話しをしているんだろうと思いました(笑)。きっと僕がガチガチに緊張していたので、緊張しないようにしてくださったんだろうなと。

僕も途中からめちゃくちゃ穏やかになって、しょうもないFukaseと殺人鬼の両角を行ったり来たりすることができました。きっと菅田くんは僕のことをしょうもない人間だと思っているはずです。

ーー役と自分をパッと切り替えられるものなのでしょうか。

割と切り替えられるタイプだったんですよね。シェアハウスをしているので、役が決まったとき同居人が真っ先に「撮影期間中、殺人鬼のお前が毎日家に帰ってくるってこと?それマジで怖い……」と気にしていて。僕もたしかにその可能性はあるかもと思っていたんですけど、いざ撮影期間に入ってみたら幸か不幸かスイッチを切り替えられました。

いろいろ調べてみると、役に入り込み過ぎる人は自分のセリフを自分が思っている言葉だと脳が勝手に認識してしまうからだと。でも僕はそんなこともなく、撮影するとなったらパッとスイッチがオンになった。ある時は、撮影の待ち時間に菅田くんと、お互い血だらけの姿でしりとりをした後、シリアスなシーンの撮影をするとか。本屋で撮影したときは、二人で「好きな女の子がどの本を手に取ったらグッときます?」「俺はこれ~」「キャンプ飯とかいいっすね!」と緩い会話をした後に、ガチギレの演技のシーンを撮影するとか(笑)。意外と切り替えられるもんなんだなと思いました。

ーーすごい……。

たぶん僕は気持ちからスイッチをオンにしていくというよりも呼吸からスイッチを入れています。というのも、菅田くんってカメラが回り始めてから演技を始めるまでに呼吸の仕方が変わるんですよ。本人は全く気づかなかったと言っていましたけど、僕はそれを見て呼吸を変えて感情を入れていくっていいなと思い、実践していました。

それとこの前どなたかも言っていたのですが、芝居は音楽と逆なんですよ。音楽の場合は本番が始まると歓声が上がるから音でスイッチをオンにしていくけど、演技の場合は本番が始まると静寂になるから音が消えた瞬間オンにしていく。音が消えたら両角になると意識したら、すごく切り替えやすかったですね。

憧れのキャラクターは『GTO』の鬼塚英吉

ーー菅田さん演じる売れない漫画家・山城圭吾が、一家殺人の事件現場でFukaseさん演じる殺人犯・両角を見てしまい、その顔を“キャラクター”化して描いた漫画が大ヒットしてしまうというストーリーの本作。漫画が大きなキーワードの一つになっていますが、Fukaseさん漫画はお好きですか?

すごく好きです。漫画はかなり読んでいると思います。

ーー最近読んだ漫画で面白かった作品を教えてください。

『BEASTARS』ですね。(SEKAI NO OWARIの)メンバー全員読んでいて、僕が一番最後に読み始めたんですよ。ずっと読もうと思っていたのですが、最初読み始めたときに脳みそが疲れすぎていたのか世界観が全く入ってこなく、一度断念していて。最近になってすごくインプット欲が増してきたので読んだらなんだこれ……!と思いました。こんなに世界観を緻密につくり込めるのか!どういう脳みそしているんだろう!って。作者の板垣(巴留)さんは天才としか言いようがないです。まだ途中までしか読んでいませんけど、泣けますね……。

ーー漫画のキャラクターで憧れのキャラクター、なってみたいキャラクターはいますか?

『GTO』の鬼塚英吉です。『湘南純愛組!』からずっと好きで、僕の人生の師みたいな人。中学生のときにアニメの『GTO』を見ていて、漫画は親父が買っているのを読んでいました。親父もメジャーどころからマイナーなものまで漫画をたくさん読んでいて、仕事用カバンにいつも漫画を入れていたので、それで『GTO』を読み始めたんですよ。

僕は当時学校に行っていなかったから、鬼塚英吉を自分の先生として読んでいましたね。やり方はめちゃくちゃだけど、ちゃんと愛があって筋が通っている。僕自身が蒲田のチンピラだったので(笑)、人生において「筋が通っていること」は一番重要で。憧れのキャラクターといったら鬼塚 英吉ですね。

アドリブに注目して見てほしい

ーーSEKAI NO OWARIのみなさんはFukaseさんの本作の出演について何か仰っていましたか?

実は僕自身が演技やお芝居に興味を持ったのではなく、「演技やお芝居はきっとライブのパフォーマンスや表情に生かされるだろうから、絶対やった方がいい」とうちのメンバーからの意見もあり、みんながそう言うなら……と出演を決めた部分が大きいです。

ーー実際に撮影を終えてみて、パフォーマンスやアーティスト活動で影響を感じることはありましたか?

表情から歌っていくことはすごくたくさんあるので、表現方法としてとても参考になっている部分はありますね。ライブで殺人鬼の顔をして歌える曲も何曲かあるので、そういう曲ではすぐに殺人鬼の顔ができるなと思います(笑)。

先ほど呼吸の仕方からスイッチを入れていくとお話ししましたけど、音楽でもそれを取り入れていて。実際、この前出演したテレビ番組で、呼吸から歌詞の主人公に気持ちを切り替えてみたら、すごく評判が良かった。「やった!」と思いました(笑)。

ーーそれでは最後に完成された本作を見て改めて思うこと、ご自身のシーンの中で「ここに注目してほしい!」という見どころポイントをぜひ教えてください。

完成された映像を見たとき、僕が映っているところ以外は全部カッコいいなと(笑)。キャストのみなさんもカッコいいですし、映像もスタイリッシュで、こんな作品に出られてすごく嬉しいと純粋に思っています。初芝居にも関わらずポスターにこんなにも大きく載っていて大丈夫なのだろうかと心配ですが、僕なりに一生懸命頑張りました。完全オリジナルストーリーでどうなるか予想のつかない展開も魅力なので、そこも楽しんでいただけたらと思います。

また、自分のシーンを直視できず薄目でぼんやり見ていたので、その中での見どころになってしまうのですが(笑)。僕がアドリブで入れたセリフがかなり活かされています。殺す前から殺した後のセリフは結構アドリブを言っているので、そこは注目して見てほしいです。

「やっぱりFukaseって本当にヤバいやつじゃん」と思われるかもしれないので、複雑な気持ちなんですけどね。世間的にヤバいと思っている人が半分くらいいそうですが、僕は人を殺したこともなければ、そんな人間ではありません! すべて演技ですからね! 「Fukaseはとっても優しい人間だ」ということは理解した上で見てほしいなと思います(笑)。

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撮影/奥田耕平、取材・文/阿部裕華

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