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『火口のふたり』ヒットの秘訣は主人公たちのエネルギー!? 『映芸』と『秘宝』の編集長が濃密対談

リアルサウンド

19/9/10(火) 14:02

 現在大ヒット公開中の映画『火口のふたり』のトークイベントが9月7日に新宿武蔵野館で行われ、『映画芸術』の編集長であり本作の監督を務めた荒井晴彦と、『映画秘宝』編集長の岩田和明が登壇した。

参考:『火口のふたり』と『天気の子』に共通点!? 人新世を生きる我々に突き付けられたリアル

 本作は、白石一文の同名小説を、柄本佑と瀧内公美のW主演で映画化したもの。故郷・秋田で久しぶりの再会を果たした、10日後に結婚式を控えた直子と、昔の恋人・賢治との関係を描く。

 現在発売中の『映画秘宝』2019年10月号で、初の編集長対談を行った荒井と岩田。各地の劇場で満席が続出している本作のヒットについて、「まずは荒井監督、大ヒット本当におめでとうございます!」と岩田が祝いの言葉をかけると、荒井は「本当にそうなの? 大ヒットしているんですか?」と自作のヒットへ自ら疑いの言葉を投げ、会場を沸かす。「公開から2週間を経てなお満席な今日の客席がヒットを証明しています! あまりヒットの実感はないですか?」と言う岩田に対し、荒井は「わからないなぁ。ほとんど経験ないからね。ヒットする映画にはろくな映画がないから」と皮肉交じりに応え、再び笑いを誘った。

 荒井が編集長を務める『映画芸術』が今年編集長就任30周年を迎えたことを受け、岩田は「今年は『映画芸術』荒井晴彦編集長30周年イヤーでもありますね。大ヒットと合わせてダブルでおめでとうございます!」と再び讃辞を送るも、荒井は「いやいや、でもショックなことがあってさ。国立映画アーカイブで“映画雑誌の密かな楽しみ”って展示をやってるけど、チラシに『映画秘宝』は載ってて、『映画芸術』が載ってないんだよ」とチクリ。岩田は「えっ、載ってないんですか? 知らなかったです」と驚くも、荒井は「またまたぁ、知ってるくせに。その勝ち誇ったような顔~!」と嫌そうに返し、ふたたび荒井節をお見舞い。岩田が「いや、本当に知らなかったんですよ。それは由々しき事態ですね、国立映画アーカイブに抗議したほうがいいんじゃないですか?」と返すと、荒井は「おかしい展示だよ。ドン・キホーテみたいな『映画秘宝』が載っていて、折り目正しい『映画芸術』が載ってないなんて」と、『映画秘宝』を刺しつつ展示への文句を発する始末。場内は爆笑に包まれ、場の空気が温まる。

 話題は本作のヒットの秘訣に移り、荒井はヒットした勝因を問われるも、「全然わかりません」と渋い回答。一方の岩田は、「セックスシーンに清潔感があったことが勝因のひとつじゃないかと思います。ねっとりとした“汗の作家”である荒井晴彦映画を期待して観に行ったら、汗がほとんど映らない。清涼飲料水のようにすがすがしい、上品で明るいセックスシーンばかりだから、女性客も観に来やすい。いっぽう男から観ると『火口のふたり』のような腹八分目の脂っこさのセックスシーンのほうが、女性客や荒井映画の初心者にとってはちょうどいい塩梅なんじゃないかと。カラッと明るく楽しいセックスと、主人公ふたりの爽やかで屈託のない多幸感が、結果ウェルメイドな娯楽映画の気持ち良さになって、女性客もたくさん観に来て、ヒットに繋がったんじゃないかと思いました」と、濃厚な荒井映画のイメージに反して、爽やかな鑑賞後感を観客に与える点がヒットの要因ではないかと分析した。

 また、『映画秘宝』2019年10月号の編集長対談の裏話として、岩田が「最初に上がった原稿が1万字だったんですが、僕がチェックして、その後荒井さんがチェックした結果、1万2千字に増えました。編集長ふたりで2千字も増やしてしまった(笑)。原稿を書いたモルモット吉田さんは、元が第一稿、岩田さんの直し入りが第二稿、荒井監督の直し入りで決定稿だと言っていました(笑)」と明かす。それに対して、荒井が「俺も直すし、そっちも直すし、なかなかいいコンビだよ。つい乗せられてサービスしたくなるんだよ。余計なことを付け加えてね」と返すと、岩田が「書き手がサービス精神から原稿をどんどん足して面白くしていく。荒井さんがやったそれこそが、まさに映画秘宝イズムですよ(笑)」と応酬。終盤には観客からの質問も挙がり、“映画で伝えたかったメッセージをひとことで表すとどんな言葉か?”という問いに、荒井は「んー。“こんな国滅びてしまえばいい”ということかな」と、劇中で描かれる“ある終末的な出来事”に対して痛烈なブラックジョークをかますと、岩田が「国立映画アーカイブのチラシに『映画芸術』がない理由が今よくわかりました(笑)」と返し、再び場内の爆笑をかっさらった。

 さらに、荒井が触れた劇中の終末的な出来事に対して、岩田は「ラース・フォン・トリアーの映画のように、世界も終末に向かっていて、主人公も同じように暗く鬱屈としていたら、そんな苦行は観たくないと思うのですが、この映画の主人公ふたりは、世界が終末に向かっていても、決して死を恐れていないどころか、あっけらかんと明るく前向きに世界の終わりと向き合っている。地球が滅亡しようと私たちは関係ねぇぞ! 死ぬまでヤリ続けるぞ!と決意するふたりのポジティヴな気の持ちようが、観ていてまさに“とっても気持いい”。暗い社会情勢だからこそ、主人公ふたりの前向きなエネルギーが観客に生きる活力を与えた結果、ヒットに繋がったんだなと改めて思いました」と、再び本作への太鼓判を押し、明るい雰囲気のままイベントは終了した。(リアルサウンド編集部)

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