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西廣智一が選ぶ、2018年ラウドロック年間ベスト10 ネガティブな話題の中にも豊作が揃った1年

リアルサウンド

18/12/25(火) 8:00

1. Deafheaven『Ordinary Corrupt Human Love』
2. Voivod『The Wake』
3. Alice In Chains『Rainier Fog』
4. Crystal Lake『HELIX』
5. Azusa『Heavy Yoke』
6. Ihsahn『Ámr』
7. Judas Priest『Firepower』
8. Sigh『Heir to Despair』
9. LOVEBITES『CLOCKWORK IMMORTALITY』
10. Architects『Holy Hell』

 2017年はBlack Sabbathの活動終了をはじめ、クリス・コーネル(Soundgarden)やチェスター・ベニントン(Linkin Park)の死去など、HR/HMやラウドロックシーンにおいてネガティブな話題が続いた1年だった印象があります。では、今年2018年はどうだったのかというと、やはり同様のニュースが続いた印象が強いのは否めません。

 例えばSlayerがフェアウェルツアーを5月からスタートさせたことに、多くのエクストリームミュージックファンは驚いたはずです。オジー・オズボーンやKissも同様のツアーを実施中、もしくは来年から開始しますが、キャリア35年以上と大御所の域に達しているものの「ずっと解散しないのでは」と思い込んでいたSlayerがその歩みを止めるという事実には、正直動揺を隠せずにいました。

 また、パット・トーピー(Mr. Big)やヴィニー・ポール(Hellyeah、ex. Pantera)、藤岡幹大(BABYMETAL神バンド)、オリー・ハーバート(All That Remains)などといったアーティストの訃報、グレン・ティプトン(Judas Priest)がパーキンソン病であることを発表するなど、悲しい知らせも続きました。ここ日本においては、2006年から毎年10月に開催されてきた国内最大級のメタルフェス『LOUD PARK』が今年の開催を見送ったことも残念でなりません。

 このように、1年を振り返ろうとするとどうしてもネガティブな情報ばかりを思い出してしまう年の瀬ですが、HR/HMおよびラウドロックの新作に関しては豊作の1年だった気がします。正直、上位3枚は瞬時に決定しましたが、4位以降の7枚を選ぶのにはかなり時間がかかりました。きっと、明日になったら大幅に入れ替わっているんじゃないか……そんな気もしますが、今年も心を鬼にして「2018年を代表するHR/HM、ラウドロックの傑作10枚」を選出し、順位を付けてみました。

 1位は文句なしで、Deafheaven『Ordinary Corrupt Human Love』で決まり。国内盤のリリースは今のところ見送られていますが、これこそ多くのロックファンに届いてほしい1枚だと思っています。ポストブラックメタルとシューゲイザーを掛け合わせた“ブラックゲイズ”なるジャンルを確立させた立役者の1組ですが、本作ではそういったジャンル分けを超越した新機軸が打ち出されており、まるで映画のサウンドトラックを聴いているような夢見心地な気分を味わうことができるはずです。

Deafheaven – “Honeycomb”

 2位には今年結成35周年を迎えたカナダのテクニカルスラッシュメタルバンド、Voivodの14thアルバム『The Wake』を選出。正直、ここ10年くらいは彼らの新譜に触れていなかったのですが、今作ではKing Crimsonにも通ずる不穏さを醸し出す、長尺のプログレッシブメタルが展開されています。正直、彼らの新作にここまで心躍るとは思ってもみませんでした。年明け1月には同作を携えた来日公演も控えているので、ぜひ足を運んでみたいと思います。

VOIVOD – Iconspiracy (OFFICIAL VIDEO)

 3位に選んだのは、もはや“グランジの代表格バンド”なんて枕詞も必要ない存在へと登りつめたAlice In Chainsの5年ぶり新作『Rainier Fog』。レイン・ステイリー(Vo/2002年死去)亡き後、ジェリー・カントレル(Vo, Gt)と新加入のウィリアム・デュヴァール(Vo, Gt)がフロントを務めてきましたが、今作では過去2作でトライしてきた“Alice In Chainsを立て直す”という急務が完成形にまで達し、古くからのファンを満足させるだけの“らしさ”を完全に取り戻しています。しかも、それが単なる焼き直しで終わっておらず、しっかりアップデートされている。そのアップデート感こそが、デュヴァールのカラーなのではないでしょうか。個人的には彼らのキャリアの中でも、3本指に入るほどお気に入りの1枚です。

Alice In Chains – Never Fade (Official Video)

 今年は国内アーティストの新作も良作が多く、選ぶのに苦心しました。そんな中、今回は10枚中3作品をピックアップ。Crystal Lakeの『HELIX』は海外リリースも決まりましたが、「これぞ日本のラウド/エクストリームロック!」と叫びたくなるくらいに衝撃的な内容だと思います。オープニングから脳天をかち割られるような激しさは、何度聴いても興奮します。

Crystal Lake – AEON (Official Music Video)

 Sigh久々の新作『Heir to Despair』は、年末に届けられた新譜の中でも特にお気に入りの1枚。狂気をテーマにしたヘビィでサイケ、なおかつジャズやワールドミュージックの要素もを包括する独特なサウンドスタイルはカオスの一言。聴いていると不思議と心安らぐ、まるで精神安定剤のような快作です。

Sigh – Homo Homini Lupus

 上記2組同様、こちらも海外でリリースされたLOVEBITESの2ndフルアルバム『CLOCKWORK IMMORTALITY』は、アーティストとしての急成長が見事な形で記録された力作。楽曲のバラエティ豊かさは過去イチで、1曲1曲により深みが加わっていることも特筆すべきポイントでしょう。今年は『Wacken Open Air』など海外の大型メタルフェスにも進出した彼女たち、来年はさらなる飛躍が期待できそうです。

LOVEBITES / Rising [MUSIC VIDEO (YouTube version)]

 このほかにも、“メタルゴッド”の称号にふさわしいJudas Priestの新作『Firepower』や、Emperorのフロントマン・イーサーンの最新ソロ作『Ámr』はともに2018年のメタルシーンを象徴するような傑作ですし、イギリスのメタルコアバンド・Architectsの新作『Holy Hell』も新たなスタンダードになりそうな予感がします。そんな中、The Dillinger Escape Planのリアム・ウィルソン(Ba)と、ノルウェーのテクニカルデスメタルバンド・Extolのクリスター・エスペヴォル(Gt)&デイヴィッド・フスヴィック(Dr)が、紅一点のエレーニ・ザフィリアドウ(Vo, Piano)と結成したAzusaのデビュー作『Heavy Yoke』は、エクストリームミュージックの新たな在り方を提示する、未来につながる1枚のような気がしました。

Azusa – Heavy Yoke (Official Music Video)

 こうやって2018年のHR/HMシーンを振り返ると、まだまだパッケージのジャンルなのだなと改めて実感させられます。とはいえ、最近は同ジャンルにおいてもストリーミングで、新曲を単体もしくは数曲まとめたEPとして小出しにしていくリリース手法が増えつつあります。いつまでアルバムという形が維持されていくのか、その行く末が気になるところです。

 昨年の年間ベストの際にも書きましたが、このシーンは「いかに伝統を守りつつ、その中で時代に寄り添いながら進化を遂げていくか」が重要になってきます。2019年前半には、その「伝統の保守と進化」を体現するBring Me The HorizonやONE OK ROCKが新作をリリースします。ともに前作で新たな時代を築き上げた彼らが、次のアルバムで何を提示するのかも気になります。また、DeftonesやTool、SlipknotといったHR/HMとラウドロックをつなぐバンドたちも新作に取り掛かっているようですし、重鎮AC/DCもスタジオ入りしたという話もあります。新たなディケイドを目前とした2019年、HR/HMおよびラウドロックシーンはどこへ向かっていくのか、今後も温かく見守りたいと思います。

■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

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