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ケンドーコバヤシが語る、人生に影響を与えた漫画たち 「ゴルゴ13の影響で、パンツは今だにブリーフ派」

リアルサウンド

20/5/31(日) 10:00

 カルチャーシーンに精通したお笑い芸人にオススメの本や漫画を紹介してもらう連載企画「本と芸人」。記念すべき第1回に登場するのは、5月27日に漫画専門番組『漫道コバヤシ』(フジテレビONE)のDVD巻四、巻五、巻六をリリースするケンドーコバヤシ。同番組の副題ともいえる「大事なことはぜんぶ、マンガから教わった」という言葉にちなんで、ケンドーコバヤシの人生に影響を与えた3作品を紹介してもらった。

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■人生に影響を与えた3作品とは

『ジョジョの奇妙な冒険』(荒木飛呂彦/集英社)

 連載中から読んでいた作品なんですけど、中学2年生くらいの時ですかね? 第2部「戦闘潮流」が始まって、その主人公であるジョセフ・ジョースターと出会ったんです。この男の嫌いな言葉は、“頑張る”と“努力”。敵との対戦でめちゃくちゃ苦労してようやく勝ったのに「余裕勝ちだったぜ」と言うように、相手をナメきった上で勝つっていうこの男から人生の全てを学びました。

 最近、『M-1グランプリ』の追っかけドキュメント(注:真剣に大会へ挑む芸人たちの姿や大会のストイックな裏側を見せる『M-1グランプリ アナザーストーリー』)とか人気じゃないですか。今の時代はああいうのがウケるんでしょうけど、もし僕が取材される立場やったら真剣な姿は見せへんというか。役者を雇ってウソの両親とか、オオカミの毛皮をかぶった両親とか用意したと思います(笑)。ジョセフ・ジョースターにならって“頑張り”や“努力”はずっと見せないようにしてましたから、中学生という早い段階でこの概念に出会えてよかったですね。

『ゴルゴ13』(さいとう・たかを/小学館)

 人間関係をおかしくしてしまったことがあるくらい、ゴルゴ13ことデューク東郷には影響を受けました。ゴルゴ13って利き腕である右手を絶対、人に預けないというのがポリシーで、例え一国の大統領相手でも握手を拒否するんです。そのエピソードに影響を受けすぎて、若手の頃、ファンの人から「握手してください」って言われた時、“利き腕を預けるほど、俺はマヌケではない!”と頑なに握手を拒否してたんです。若手が所属している劇場って人気投票で出番が決まることも多いので、美学を貫いた結果、1カ月丸々、出番がなくなってしまい、同期からだいぶ出遅れてしまいました(笑)。あの頃はそのポリシーを貫き続けましたけど、大人になってからさすがに仕事でお会いする方とは握手するようになりましたね。あと、この漫画の影響で、パンツは今だにブリーフ派です。理由はわからんけどゴルゴ13がやってるなら大事なことなんやろうと信じて、履き続けています。背後にも人は絶対に置きません!

『サザエさん』(長谷川町子/朝日新聞出版)

 小学生くらいの頃に読んで、影響を受けた1冊ですね。『サザエさん』って日常を描いているようで、ウソやろ? ってびっくりする事件が頻繁に起こるんです。例えば、お歳暮を探しに行くからデパートへサザエさんとフネさんが出かけるという回では、内緒でデパートに行かれたという理由だけでタラちゃんがトイレの中に立てこもるという事件が起きてるんです。このエピソードに影響を受けて、僕もデパートへ1人だけ連れて行ってもらえなかった時、タラちゃんのマネをしてトイレの中に立てこもりました。後ほどデパートへ連れて行ってもらうことができたんですけど、行ったら行ったで子供的にはあんまり面白くなかったっていう思い出がありますね。

――漫画との出会いは、いつくらいだったんですか?

ケンドーコバヤシ:幼稚園の年長から空手道場に通い始めたんですけど、そこは近所の子供やおじさんを集めて空手の先生がお寺の境内を借りてやっているところで。本堂の横には蔵があって「魔物を閉じ込めてる。そこに子供が入ったら殺されるから、絶対に入るな」と言われてたんです。そんなことを言われると、僕は絶対に入りたくなる性格。今思えばほんまに申し訳ないんですけど、小学校低学年の時、魔物退治をしようと蔵の鍵をぶっ壊して中に入ったんです。そしたら部屋中、漫画とエロ本がずらっと並んでいて。お坊さんが煩悩だらけの娯楽とエロの部屋を作ってたんですね。それから夜な夜な忍び込んで、漫画を読み漁りました。もちろんエロ本も(笑)。手塚治虫とか全種全冊を読んで、漫画の面白さにのめり込んでいきました。

 もちろん、今回DVDに出てくれた先生方からも影響を受けています。僕ら世代の人間にとってゆでたまご先生が描かれた『キン肉マン』はバイブルのような本ですし、『キャプテン翼』なんて今、活躍しているサッカー選手で通ってきてない人はいないくらい読まれてる作品ですから。ただ、不思議なもので『こちら葛飾区亀有公園前派出所』を読んで警察官になったという話は聞かない気が……(笑)。もし『こち亀』経由で警察官になりました、っていう人がいるなら教えてもらいたいですね。

■『漫道コバヤシ』は漫画にストイックな番組

――今回発売されるDVD3巻では5人の漫画家にお話を伺っていますが、特に印象に残った方は?

ケンドーコバヤシ:『漫道コバヤシ漫画大賞2017』グランプリの、『約束のネバーランド』の作画者・出水ぽすか先生ですね(注:DVD『漫道コバヤシ 巻五』収録)。ヘルメットをかぶったまま取材に応えてくれたんですけど、最初から最後までほんまに顔を見ずに終わりました(笑)。ものすごく繊細なタッチの絵を描かれる人なのでどんな人なんやろうと思っていたら、パワーがある超ハイテンションな人で、作風と人柄って一緒じゃないねんなと印象に残りました。

――DVDを観て感じたのは、ケンドーコバヤシさんの観察力。漫画に挟んである付箋の数がまずすごいですし、細かいイラストのタッチや描写、セリフの1つ1つに深く切り込んでインタビューしているところに感心しました。

ケンドーコバヤシ:スタッフの人がめちゃくちゃ頑張ってくれてるおかげですね。この番組は漫画に対してストイックすぎるので、ADが記録的に辞めていくんですよ(笑)。僕も漫画は大好きですけど、こんだけ好きなのにチェックするように読み込むのは大変。なかなか苦しい作業ですけど、先生たちから「そこに気づいてくれたんですね」って言われた時はやっててよかったなと思う瞬間です。

――漫画家の仕事場や漫画編集部を訪れての取材は貴重な経験だと思います。取材を通して、改めてどんなことを感じていますか?

ケンドーコバヤシ:やっぱり漫画家って、めちゃくちゃ夢のある仕事やなと思いますね。こんな家、建てられるんやって思うほどの豪邸に住まれていたり、普段会えないような有名人とのツーショット写真を飾っていたりする。高級マンションかなと思ったら一軒家で、家の中の移動手段がセグウェイやったり……。今、漫画家を目指していて貧乏している人ってもちろん多いと思うんですけど、歯ぁ食いしばってでも頑張り続けたほうがいいなと思う仕事ですね。もちろん、お笑いで成功されている方の家もたまに行かせてもらうと、うわぁ、すげぇって思うんですけど、やっぱり成功した漫画家の方って格が違う暮らしをしているので夢があります。一生を懸ける価値のある仕事やなって思いますね、漫画家って。

――何もないところから物作りを始めるという意味で、漫画家と芸人は通じるところもあるんじゃないですか?

ケンドーコバヤシ:その共通項でお話しできることも多いですね。例えば、最初の設定が大事だとか。僕ら芸人もネタでは見せないですけど、こういう人やっていうキャラクター設定を決めていたほうが、コントもより面白くなったりしますから。

――若手時代に作られていたコントは、漫画から影響を受けたように感じられる物語設定も多かったですよね。

ケンドーコバヤシ:そうですね。若手の頃はコントの台本をいっぱい書きましたけど、自分がそれまで読んできた漫画からかなりいい影響を受けていたと思います。今、週刊の漫画雑誌5冊は毎週読んでますし、東京で住んでいる家には1万冊以上の漫画が置いてあります。大阪の実家には子供の頃に読んでいた漫画がまだ何千冊残っているんですけど、今では値段の張るようなかなり貴重なコミックもいっぱい残っているはずです。

――『漫道コバヤシ』は現在も月1回、フジテレビONEで放送中ですが、今後会ってみたい漫画家さんはいらっしゃいますか?

ケンドーコバヤシ:いっぱいいるんですけどねぇ……、大作であればあるほどお話を聞くタイミングが難しいんですよ。そんな中、先生にオッケーをもらえる確率が一番高いのは、連載が終わった時なんですね。そういう意味で、先日発売された『週刊少年ジャンプ』が最終回を迎えた『鬼滅の刃』の吾峠呼世晴先生。話を聞きたいファンの人も多いでしょうから、タイミングがうまくいくといいなと思っています。もし話を聞いて欲しい漫画家さんがいれば、番組ホームページやTwitterにリクエストを送ってもらいたいですね。我々もいろんな先生に接触していますし、タイミングが合えば話をしていただけると言ってくださる先生もいるので話を聞ける可能性はあると思います。

――ちなみに、現在連載中の漫画で注目している作品は?

ケンドーコバヤシ:『週刊少年ジャンプ』で連載中の『呪術廻戦』。『ジョジョ~』や『HUNTER×HUNTER』のような、ただの力比べじゃない捻りの効いたバトルが描かれていて面白くて好きですね。今年10月からアニメ化されることが発表されましたけど、今はアニメでブレイクした時に「あぁ、俺、前から読んでたよ」って言えるタイミング。なので、みなさんに今、読んでいただきたいですね。

(取材・文=タカモトアキ)

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