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石原さとみ主演『高嶺の花』で大役に挑む、俳優・峯田和伸の武器を探る

リアルサウンド

18/8/15(水) 6:00

 今期放映中のドラマの中でも一際異彩を放っている『高嶺の花』(日本テレビ系、水曜22時~)。『高校教師』や『人間・失格~たとえばぼくが死んだら』(ともにTBS系)など、センセーショナルな題材の作品を次々に発表し、一世を風靡した脚本家・野島伸司の新作でもある『高嶺の花』は、華道の家元の娘として生まれた才色兼備のお嬢様が、下町の自転車屋の主と恋に落ちる、いわゆる“格差恋愛”をテーマにしたラブストーリーだ。

参考:石原さとみ、艶っぽさ全開 『高嶺の花』“ベッドシーンの翌朝”に溢れる幸福感と美しさ

 主人公の月島ももを演じるのは、『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ系)、『アンナチュラル』(TBS系)と、近年、ヒット作に恵まれている石原さとみ。家柄、才能、どれをとっても超一流な一方、自由奔放で酔うと酒乱ぶりを発揮するギャップの多いキャラクターだが、何より、“高嶺の花”を地でいく、凄まじいまでの美しさには毎度目を見張る。そして、そんな彼女の相手役・風間直人に抜擢されたのがミュージシャンで俳優の峯田和伸だ。民放のドラマで主役級を演じるのは初となる彼が、石原さとみとラブストーリーを演じることは大きな話題に。例えて言うなら「美女と珍獣」。それこそ、野島伸司の代表作『101回目のプロポーズ』の浅野温子&武田鉄矢カップルを思い出した人も多かったのではないか。

 音楽ファンにはGOING STEADYや銀杏BOYZのボーカルとして知られる峯田和伸だが、役者としての経歴もなんだかんだで15年を超える。デビューはみうらじゅん原作、田口トモロヲ監督の『アイデン&ティティ』。自分のロックを模索しながらもがくバンドマンという当時の峯田本人に当て書きしたようなキャラクターは、作品に圧倒的なリアリティをもたらし、多方面から絶賛された。その後も『グミ・チョコレート・パイン』、『少年メリケンサック』、『色即ぜねれいしょん』とサブカル臭の強い作品への出演が続くが、ここまでは峯田の「ちょっと危うくてぶっ飛んだキャラ」を求めるが故のキャスティング。“演技”としての転機となったのは花沢健吾の原作コミックを、劇団「ポツドール」の主宰・三浦大輔が映画化した『ボーイズ・オン・ザ・ラン』で演じた田西だ。

 女性経験もなく、仕事でも大した成果は出せずくすぶっていた男の、鬱屈した思いを爆発させるような演技には鬼気迫るものがあった。その後、2016年にBSプレミアムで放映された『奇跡の人』が、一般視聴者にリーチするきっかけに。障害のある少女を献身的に見守る青年役には「自然で説得力のあるお芝居に引き込まれた」など称賛の声が相次ぎ、脚本の岡田惠和との仕事は朝ドラ『ひよっこ』(NHK)にも引き継がれる。来年には大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(NHK)への出演も控え、俳優業はますます引く手数多だ。

 ではなぜ、峯田がここまで作品に欲されるのか。それは彼の佇まい、表情から醸し出される“説得力”だろう。これまで演じてきたキャラクターがしばしば「峯田以外にはできない」と語られてきた所以もそこにある。演技よりも本質的な部分でキャラクターとリンクする、それが彼の武器だ。『高嶺の花』で演じる直人は、30代後半になり、ももに会うまで女性経験はなし、商店街で自転車店を営みながら細々と生きているような男だ。それを峯田はわずかな目線の動かし方やちょっとした仕草の中にも表現できてしまう。セリフや演技はもはや添え物。話していなくても動いていなくても、その場にいるだけで直人とはこういう人物なのだろうという説得力がすごい。決して「役者然」という演技ではないし、上手いかというと正直わからない。でも、彼にしかできない役があるというのは、それだけの魅力があるということだし、本作でもまさにそこが決め手となっている。直人は峯田だからこそ意味がある。“高嶺の花”に手を伸ばす、健気でいじらしい男を出現させるには、峯田が必要だったのだ。

 先週放映された第5話では、祖母伝来の結婚指輪を渡して直人がももにプロポーズ。しかし、直前の場面で月島流の家元になる決意をしていたももは複雑な表情を見せる。その後の第6話の予告編ではふたりの結婚式で大きな波乱が起こる展開を予感させ、画面には「第1章完結編」の文字が躍った。果たしてももと直人の恋の行方には、どんな結末が待つのか。お家騒動や登場人物のややこしい過去など、ますますエキセントリックに転がっていくストーリーの中、峯田のブレない存在感がまぶしい。(渡部あきこ)

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