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2021年のクラシック展望

ぴあ

21/1/7(木) 12:00

テオドール・クルレンツィス Photo by JuliaWesely

コロナ禍に翻弄され続けた2020年のクラシック界。新たに迎える2021年はどのような展開となるのだろう。

毎年恒例のメモリアル作曲家はといえば、没後100年のサン=サーンス(1835-1921)、没後50年のストラヴィンスキー(1882-1971)、そして生誕100年のピアソラ(1921-1992)あたりに光が当たるが、昨年(ベートーヴェン生誕250年)のような盛り上がりは望みにくい。逆に盛り上がりきれなかったベートーヴェン・イヤーをもう1年引っ張るような雰囲気すらも感じられるあたりが興味深い。

イベントを開催する上に於いての最大の懸念は、先が読みにくいことだろう。クラシック界の公演情報は遅くとも半年ほど、早いものでは1年以上先の公演が告知され、いち早くチケットの発売が始まることが慣習だ。コンサートホールの数も多く、競合の多い首都圏に於いては、他公演よりも少しでも早くチケットを売り始めることが常套手段であったところが、コロナ禍の現在は、コンサート直前まで発売が据え置かれるケースも散見する。特に、春先から初夏にかけて予定されている来日公演の多くが今も様子を見ている段階だ。先が読みにくい状況の中で、コンサートのあり方はもとより、聴く側のスタンスも微妙に変化しているのだろう。それに伴い公演チラシを撒きまくるといった重厚長大なプロモーションが影を潜め、短期的かつ有効なWEBプロモーションを模索する時代に突入したようだ。

一方、昨年盛んに行われた無観客での「ライブ・ストリーミング(配信)」は、コンサート会場の入場者数緩和に伴い、“有観客公演と配信のハイブリッド”という新たなスタイルに変化しつつある。これは演奏者の収入増につながるとともに、ファン層拡大の有効な手段となるだろう。

国際的な話題としては、1年延期された「ショパン国際ピアノコンクール」に注目が集まる。11月のショパンの命日を軸に5年に一度ポーランドのワルシャワを舞台に開催されてきた同コンクールは、最高の人気と知名度を誇る若手ピアニストの登竜門だ。本来ならば昨年の秋に誕生するはずであった新たなスターの姿を、今年こそは拝めることを、クラシック界全体が期待している。

明るい話題も届いている。昨年、新型コロナ感染拡大の影響を最初に受けた大型イベントとして記憶に残る「東京・春・音楽祭」2021年の開催概要が発表されたのだ(2021年3月19日〜4月23日)。“桜の季節の上野を舞台に実施される国内最大級のクラシック音楽祭”としての内容や位置づけはそのままに、あらゆる状況下においてもコンサートを届けたいという想いの下、全プログラム対象のライブ・ストリーミング配信(アカデミー講義を除く/有料)が行われる。これは会場に来られない方々にとっての朗報だ。さらには、巨匠リッカルド・ムーティによる「イタリア・オペラ・アカデミーin東京」で、昨年延期となったヴェルディのオペラ『マクベス』が取り上げられるなど、リベンジの準備も着々と進められている。

レコーディングに於いて大きな話題を呼んでいるのが、テオドール・クルレンツィス指揮ムジカエテルナだ。昨年発売されたアルバム、ベートーヴェンの『交響曲第5番「運命」』の人気は凄まじく。残念ながら中止となってしまった春の来日公演を惜しむ声が未だに絶えない。そのクルレンツィスの新譜として4月に発売が予告されているのがベートーヴェンの『交響曲第7番』だ。クラシック業界待望の大ヒットアルバムに期待が募る。

“Withコロナ”の時代を標榜する2021年のクラシック界に求められるのは、“忍耐と革新”だ。

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