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国立劇場の文楽公演が開幕、『心中天網島』など3本を上演

ぴあ

19/9/7(土) 0:00

『嬢景清八嶋日記』

1体の人形を3人の人形遣いが動かす人形浄瑠璃文楽は、ユネスコの無形文化遺産にも登録されており、日本が誇る伝統芸能だ。その東京公演が本日9月7日から23日(月)まで、東京・国立劇場 小劇場で開催される。11時開演の第一部は『心中天網島(しんじゅう・てんのあみじま)』。16時開演の第二部では『嬢景清八嶋日記(むすめかげきよ・やしまにっき)』と『艶容女舞衣(はですがた・おんなまいぎぬ)』の2作を上演する。

『心中天網島』は日本のシェイクスピアとも称される近松門左衛門の傑作のひとつで、大坂の商人・紙屋治兵衛(じへえ)が曽根崎の遊女・小春と心中する話。上之巻にあたる〈河庄の段〉はよく上演されるが、全編を通しで観られる機会は少なく、今回は治兵衛や小春の行く末を最後まで見届けられる。最終段〈道行(みちゆき)名残の橋づくし〉では音楽の美しさが際立つ一方、死にゆく恐怖や無残さが浮き彫りに。とても人形とは思えないリアルな動きから目が離せない。曽根崎から網島目指して進むふたりの足取りの中には、桜橋や天満橋など大坂の中心地に今も残る橋の名前や地名が多く読み込まれている。

『艶容女舞衣』も心中ものだが、〈酒屋の段〉では子供を残して死なねばならぬ三勝(さんかつ)の苦しみや、正妻ながら一度も本当の妻になれなかったお園の胸中が切ない。半七と三勝が心中へと向かう〈道行霜夜の千日〉は、東京では44年ぶり。文楽ファンにとってもなかなか観ることができないレアな公演だ。

『嬢景清八嶋日記』は、源平合戦での活躍で名を馳せ、平家物語などさまざまに語り継がれている藤原景清を主人公とした物語。平家滅亡後、頼朝暗殺に失敗して捕らえられた景清は、源氏の世など観たくないと自らの目をえぐってしまう。零落し日向の国(宮崎県)で暮らす盲目の景清を案じ、娘がやってくるが景清は親子関係すら否定。長い間会っていなかった父を助けたい娘の一念と、男の生き様を孤高に貫こうとする景清の強いプライドがぶつかり合う場面には、ギリシャ悲劇にも似た壮絶さが感じられる。この『嬢景清八嶋日記』の元になったエピソードは、11月に同じ国立劇場の大劇場で、『孤高勇士嬢景清(ここうのゆうしむすめかげきよ)―日向嶋―』と題し、中村吉右衛門主演の歌舞伎としても上演されるので、歌舞伎と文楽を見比べるのも面白いだろう。

文:仲野マリ

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