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年末企画:加藤よしきの「2020年 年間ベスト映画TOP10」 厳しい状況だが劇場や配信で良作が

リアルサウンド

20/12/21(月) 8:00

 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2020年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに分け、映画の場合は、2020年に日本で公開された(Netflixオリジナルなど配信映画含む)洋邦の作品から、執筆者が独自の観点で10作品をセレクトする。第3回の選者は映画ライターの加藤よしき。(編集部)

1. 『フォードvsフェラーリ』
2. 『アンカット・ダイヤモンド』
3. 『ホワイト・ストーム』
4. 『ハスラーズ』
5. 『タイラー・レイク -命の奪還-』
6. 『エクストリーム・ジョブ』
7. 『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』
8. 『淪落の人』
9. 『悪魔はいつもそこに』
10. 『鬼手』

 2020年、本当にロクでもない1年でした。コロナで新作は軒並みキャンセルになって、映画館へ行く機会がゴソっと減りました。私生活でも今年は運よく生き残れましたが、それも本当に紙一重、来年は僕も仕事があるか謎です。そんなこんなで厳しい状況ですが、それはそれ、劇場だったり配信だったりで、面白い映画があったのもまた事実。そういう楽しかった思い出を振り返っていきたいと思います。

 まず不動の10位が『鬼手』です。こういうベスト10って、色々な評価軸があると思うのです。「とにかく自分が好きな映画」とか「人にオススメしたい映画」とか「好き嫌いはさておき、これは評価しないといけない」とか。そんな色々な条件が重なってベスト10は出来ると思うのです。なので条件や発表する媒体、あるいはその日の気分によって順位が入れ替わることは多々あると思うんですよ。実際、今回のランキングでも1~5位あたりは気分で変わるでしょう。ですが何があろうと、どんなことがあろうと、絶対にランキングに入れたい――そんな10位映画が『鬼手』です。囲碁アクション映画なる前人未到のジャンルを作った『神の一手』(2015年)のスピンオフなんですが、前作以上にワケが分からない勢いを感じまして、人にオススメできるかはさておき、よく出来てるかもさておき、ともかくランキングに入れなければと使命感に駆られた次第です。基本的に負けたら死ぬ殺人囲碁対決は、見ている間「!?」の連続でした。こういう映画は大切にしていきたいです。

 続いて9位の『悪魔はいつもそこに』(2020年)。こちらは記事も書かせて頂いたのですが、Netflixオリジナルの劇映画で、スパイダーマン役で有名なトム・ホランドが、狂人神父・猟奇殺人鬼・汚職警官に襲われるドン底人間ドラマです。絶対に60年代のアメリカに生まれなくてよかったなぁと感心しました。辛い2020年ですが、この頃よりはずっとマシだなと思うばかり。タイトル通り、悪魔みたいな人間はそこら中にいます。人間に絶望できる1本です。

 一方の8位『淪落の人』は、香港を舞台にしたヒューマンドラマ。事故で半身不随になった中年男性と、彼を支える若い女性介護士との友情を描いた1本です。人を饅頭にする役で有名なアンソニー・ウォンが頑固な、しかし優しい中年男性を好演。美しい香港の四季と相まって、観終わった後は爽やかな気持ちになりました。人間を信じたくなる1本です。

 7位は『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』(2020年)。近年のアメコミ映画は世界の命運を賭けた壮大な戦いを繰り広げがちですが、本作はチーズバーガーを食えるか食えないかの小さなスケール感、それでいてキレのある格闘アクションが心地よかったです。ハーレイクインの原作漫画は邦訳版をいくつか読んでいたのですが、あのユーモラスな空気感がちゃんとありました。変な表現になりますが、『午後のロードショー』にピッタリの作品だと思います。今後は『午後ロー』枠でヘビーローテーションしてあげてほしいですね。

 続いて6位の『エクストリーム・ジョブ』(2019年)は、韓国のコメディアクションです。今年も韓国映画は傑作/快作がたくさんありましたが、その中でも本作のドリフ的な笑いが大好きでした。出てくるキャラも立っていて、一発ギャグやら顔芸やら音楽ネタやら、とにかく観客を笑わせるために創意工夫を凝らし、それでいて最後はきちんと爽快に物語をシメる。コメディかくあるべしだと思いましたね。

 5位の『タイラー・レイク―命の奪還―』(2020年)は、再びNetflixオリジナル映画。傭兵が戦場で必死こいて戦う。それだけの話なんですが、見たことのないアクションが連発。これほどストイックな企画が通ったのが、まず驚きです。アクションの凄さはいくらテキストで書いても伝わらないと思うので、これはもう百聞は一見に如かず、「興味がある人は観てください」以上に言いようがありません。冒険小説『暗殺者グレイマン』の実写版も楽しみだなぁ。

 そして4位の『ハスラーズ』(2019年)。これは久々に泣くかと思いました。女性ストリッパーたちが時代に翻弄される中で犯罪に手を染めていく物語です。『友へ チング』(2001年)の惹句じゃないですが、「俺たち、遠くに来すぎたよ……」映画の傑作でした。そして何よりジェニファー・ロペスという人物の凄味を感じましたね。特に彼女がストリッパー衣装にゴツいファーのコートを羽織って屋上で煙草を吹かしているシーンは今すぐTシャツにしてほしいです。

 3位に食い込んだ『ホワイト・ストーム』(2019年)は、今や香港の鉄板コンビとなったアンディ・ラウ主演×ハーマン・ヤウ監督による、男たちの大暴走ノーワル・アクション。久しぶりに劇場で爆破と銃声を堪能できました。能面のような顔のアンディと、例によってゲス顔のルイス・クーが、通行人が大勢いる地下鉄の駅構内に車で突っ込んでいくシーンは今年一番盛り上がったかもしれません。香港アクション健在なり。

 栄えある2位は、三度Netflixオリジナル映画『アンカット・ダイヤモンド』(2020年)です。どうしても配信サイトの映画は(僕の加齢の関係で)途中でトイレ休憩などの一時停止をしがちなのですが、本作に関してはそういう瞬間が全くありませんでした。アダム・サンドラーが繰り広げる借金地獄は1秒たりとも画面から目が離せません。手に汗握りっぱなしで、体感2キロは痩せました。これは完全なウソ科学に基づく記述なんですが、観ると痩せるダイエット映画としてオススメしたいです。

 そして1位ですが、今年は『フォードvsフェラーリ』(2019年)に送りたいと思います。これには私がアメリカ映画に求める全てがありました。荒々しくもタフでカッコいい大人たちの粋な人間模様、デカくてカッコいい車……そして何より、全編を通して鳴りまくるエンジンの爆音です。あの爆音に身を任せる感覚は、一生忘れることはないでしょう。ド迫力のレースシーンは、『ワイルド・スピード』シリーズや『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年)が紡いできたカーチェイスの歴史を、また1ページ更新したとすら思います。幼少期からアメリカに漠然とした憧れを抱いている身として、映画館で映画を体験することが大好きな人間として、今年は本作にベスト1を捧げます。

 そんなわけで、今年は基本的に辛いながらも、それはそれとして、楽しい映画に10本も出会えた1年でした。これが来年には全てが解決して、人類的にもオールオッケーになるとは到底思えませんが、こと映画に関していえば、話題作はごまんと控えているわけで。今はただ耐えつつ、まだ見ぬ傑作に期待して堪え難きを耐えたいと思います。

TOP10で取り上げた作品のレビュー/コラム

『タイラー・レイク -命の奪還-』はアクション映画のノウハウ満載 期待するもの全てある凄まじさ
“手を組む”距離感が絶妙! 『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』アンサンブルとしての面白さ
香港映画の新たな傑作! アンソニー・ウォン主演『淪落の人』が実直に語る、明るいメッセージ
Netflixの醍醐味がここにある トム・ホランドらの名演光る『悪魔はいつもそこに』でドン底気分に

■加藤よしき
昼間は会社員、夜は映画ライター。「リアルサウンド」「映画秘宝」本誌やムックに寄稿しています。最近、会社に居場所がありません。Twitter

■リリース情報
『フォードvsフェラーリ』
デジタル配信中
Blu-ray+DVDセット発売中
発売:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)2020 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

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