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HOWL BE QUIETのラブソングはなぜ切ないのか 竹縄航太が紡ぐ言葉を軸に考察

リアルサウンド

21/3/1(月) 18:00

 HOWL BE QUIETが3月1日、新曲「ベストフレンド」を配信リリースした。

 昨年、「ラブフェチ」(2017年のアルバム『Mr.HOLIC』収録)がTikTokで拡散。10代、20代のリスナーを中心にストレートに感情を表現したラブソングとして支持を得たのは記憶に新しい。またソングライターの竹縄航太はSexy Zoneの楽曲「名脇役」を手がけるなど、作家としても大きな注目を集めている。

「ラブフェチ」

 コロナ禍によってライブ活動が停滞するなか、楽曲の魅力によって知名度を上げ続けているHOWL BE QUIET。新レーベル<APARTMENT>の第1弾として配信された新曲「ベストフレンド」は、このバンドの魅力を端的に示す楽曲だ。

HOWL BE QUIET – ベストフレンド

 煌びやかなピアノのグリッサンドから始まる「ベストフレンド」のテーマは、息が詰まるような片想い。主人公の〈僕〉は、〈コンビニでさえも 楽しそうに選ぶ 君〉に恋心を抱いている。友達としての関係から一歩踏み出すことができず、好きという気持ちをひたすら増幅させながら、〈なんで好きになってしまったのかな〉と一人呟く。テーマ自体はきわめてオーソドックスだが、〈白い息〉に象徴される冬の風景、〈朝まで話した 電話に残った履歴〉など二人の関係性を想起させるフレーズなどを散りばめることによって、聴く者の強い共感を呼び起こすことに成功している。シンプルな言葉で普遍的なポップスへと結びつけるセンスは、竹縄航太の真骨頂だ。

 90年代のJ-POPを想起させながら、現代的なポップミュージックに昇華させるサウンドメイクにも注目してほしい。アレンジには、100回嘔吐が参加。ボカロPとしてキャリアをスタートさせ、ずっと真夜中でいいのに。、原因は自分にある。などの楽曲を手がけているクリエイターとのタッグは、HOWL BE QUIETの音楽性をさらに広げている。2019年のアルバム『Andante』では、TAKU INOUE(『アイドルマスター』シリーズをはじめとするゲーム音楽やアニメ音楽、DAOKOらの楽曲を手がけてきたクリエイター)をサウンドプロデューサーに招くなど、いわゆるバンドシーン以外のクリエイターともタッグを組んできた彼ら。ジャンルを超えたポップネスを志向する姿勢は、「ベストフレンド」でも継続されているというわけだ。

 “切ないラブソング”という自らの特徴をさらに突き詰めた「ベストフレンド」。ここからはHOWL BE QUIETの代表的なラブソングを紹介しながら、その魅力を改めて検証してみたい。

 まずは2016年にリリースされたシングル曲「サネカズラ」。〈最後の夜になったね〉から始まるこの曲は、恋人たちの別れの夜を描いたバラード。一緒に暮らしていた部屋を出て行き、最後に「幸せになってね」と告げるこの曲は、竹縄の実体験に基づいているという。決してきれいな別れではなく、後悔や憤りなども表現したこの曲はまちがいなく、HOWL BE QUIETを代表する1曲だ。

「サネカズラ」

 また、2010年代の半ばにバラード曲をシングルにしたという事実も、このバンドのスタンスを表わしている。当時は4つ打ちのダンスビートが主流で、“フェスで盛り上げるための楽曲”が必須だった。その状況のなかで切ないラブバラードを提示したのは、“このバンドの最大の武器は竹縄の歌”という明確な意思があったからだと思う。

 アルバム『Mr.HOLIC』に収められた「208」も、切なさをたっぷり味わえるナンバーだ。「208」とは、主人公が住んでいる部屋の番号。恋人との別れを受け止めきれないまま、〈合鍵は左端 上から二つ/208のポストに返してね〉と伝える〈僕〉を描いたこの曲は、まるで映画のワンシーンのようなリアリティを備えている。この曲もおそらく、竹縄の実体験がベースになっているのだろう。

「208」

 その他、クリスマスの光景のなか、「本当にごめんね」が口癖だった恋人のことを思い出す「Merry」、〈離れないで 僕から/君がいなきゃ腐ってしまうよ〉というラインが胸を打つピアノバラード「GOOD BYE」も。切ない失恋曲だけでプレイリストが作れそうだが、それは彼らが一貫して、リスナーの感情を揺さぶるラブソングを追求してきた証左だと言っていい。

HOWL BE QUIET「Merry」MV
HOWL BE QUIET「GOOD BYE」MV

 これまでのラブソングに比べて「ベストフレンド」は、具体的な描写を抑えることで、より幅広い層のリスナーに訴求する楽曲に仕上がっている。それはつまり、ポップスとしての精度が上がったということだ。昨年4月のインタビュー(参照:「ラブフェチ」がTikTokで話題 HOWL BE QUIET 竹縄航太に聞く心境とこれからの曲づくり「恋愛は大きなファクター」)で竹縄は、「「ラブフェチ」が代表曲ではダメなんです。次に出す新曲が代表曲になると思うので、それまで楽しみにしていてください」と語っていた。それが「ベストフレンド」であることは、言うまでもないだろう。

「ベストフレンド」

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

■リリース情報
デジタルシングル「ベストフレンド」
配信はこちら

HOWL BE QUIET Official Website

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