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怒髪天 増子直純 × ナイツ 土屋伸之が語り合う、“ウルトラマンシリーズ愛” 歴代主題歌の魅力から表現に与えた影響まで

リアルサウンド

20/10/29(木) 12:00

 『最新 ウルトラマン主題歌集 ウルトラマンZ』が10月21日に発売された。この作品は、初代ウルトラマンから現在放送中の『ウルトラマンZ』に至るまで、54年間のテレビシリーズの主題歌がコンパイルされた2枚組の作品である。ジャズや歌謡曲を取り込みながら合唱団の美しい歌声で聴かせた昭和シリーズの主題歌から、次第にダンスミュージックやロックと融合したJ-POPへ進化していった平成初期の主題歌たち、そしてメタルやヒップホップまで吸収しながらアニメソングとしても抜群の強度を誇るようになっていった近年の主題歌たち。この作品を聴くだけで、ウルトラマンシリーズの歴史だけでなく、50年にわたる日本のポップスの歴史まで総ざらいできるのが、非常に面白いところだろう。

 そんなウルトラマン主題歌の魅力を語るべく、リアルサウンドでは2回連続の企画展開を行っていく。第1回はウルトラマンシリーズをこよなく愛する2人、怒髪天・増子直純と、ナイツ・土屋伸之による対談である。ウルトラマンシリーズ同様、ロックバンドと漫才はともに長い歴史を持ったカルチャーであるが、怒髪天もナイツも先代へのリスペクトを捧げつつ、時代のなかで独自の道を切り開いてきた正真正銘の実力者である。そんな2人に、歴代主題歌の魅力についてはもちろん、幼少期のエピソードやお気に入りの怪獣、そしてステージに立つ者としてウルトラマンから受けた影響まで、様々な角度から熱く語ってもらった。ウルトラマンファンもそうでない方も、ぜひ楽しんで読んで欲しい。(編集部)

「何代目って受け継がれていくバルタン星人は落語家さんみたい」(土屋)

ーー自分は『ウルトラマンティガ』〜『ウルトラマンダイナ』あたりからリアルタイムでウルトラマンを見始めた世代なんですけど、まずはお二人にとって、思い入れの強いウルトラマンのエピソードから聞かせていただけますか。

土屋伸之(以下、土屋):僕は1978年生まれなので、『ウルトラマン80』もリアルタイムでは見ていない世代でして。昭和のウルトラマンを全部再放送で見ながら、図鑑とかで調べているような子どもでしたね。小学生の頃は自分で新しいウルトラマンを作ったりして、円谷プロダクションに就職したいと思ってずっと研究していました(笑)。中学生になっても変わらず好きで、周りの友達がウルトラマンを卒業してもずっと研究は続けていましたから。ウルトラマンの握手会も4つ下の従妹の引率みたいな顔して行ってましたし(笑)、小学生の列に一人だけ170cm近い自分が並んで、恥ずかしいなって思ったのは覚えています。

ーーその気持ち、よくわかります(笑)。

土屋:それを察したのかウルトラマンも握手のときにすごく力強く握ってくれて、「頑張れよ!」っていうのを感じましたね(笑)。特に僕は『ウルトラマンA』が好きでした。昭和のウルトラマンのオープニングって毎回影絵みたいになっている怪獣が出てくるじゃないですか。自分は必殺技とかを図鑑でいろいろ研究して、どういう動きを使ったら面白いオープニングになるかとか、そういうのを編集して漫画みたいにコマを描いたりしながら、何回もオリジナルを作っていましたね。エースの歌とギロチンショットの必殺技が一番カッコよかったので、そのオープニングを勝手に作ったりとかして(笑)。

ーー創作に没頭した子供時代だったんですね。増子さんはいかがですか?

増子直純(以下、増子):俺は1966年生まれなので『帰ってきたウルトラマン』世代で。それより前は再放送で見たんだけど、一番好きなのは『ウルトラセブン』かなぁ。大人向けだからね。『セブン』は曲も本当に良くて、シンバルがチンチンチンチン……って鳴ってる感じとか、ホーンも入ってたりしてちょっとジャズっぽい歌になっていて。そこからの『帰ってきたウルトラマン』なわけだけど、今考えるとすげえタイトルだよなあ。帰ってきたんかいって(笑)。

土屋:ははははは。たしか(主人公の)郷秀樹ってーー。

増子:そうそう、郷ひろみと西城秀樹なんだよね。

土屋:でも、2人が売れる前から「郷秀樹」の名前が先にあったんですよね。てっきり合わせた名前だと思って調べたら、当時まだ郷ひろみさんが無名で、西城秀樹さんもデビュー前だったらしくて。

増子:えぇー!

土屋:その後にあの2人が出てきたってすごくないですか?

増子:予知能力だ(笑)。ウルトラマンも宇宙人ですからね。

ーー(笑)。

増子:あと、俺はどちらかというと怪獣とか宇宙人の方が好きなんだよね。怪獣のオモチャも大好きで今でもいろいろ買ってますけど、オモチャとしての出来がいいやつ……『ウルトラマンパワード』の怪獣とか最高だったな。昔の怪獣のリメイクで、現代風に生物っぽくなっているのが良かった。『セブン』の宇宙人も大好きだし、成田亨さんのデザインが素晴らしくて……!

ーー増子さんお気に入りの怪獣は何でしょう?

増子:キングジョーが今でもすごく好きで。体がバラバラになって飛んでくるシーンがあるんだけど、あれはカッコいいよなあ。世界的にもかなり画期的だったんじゃないかな。

土屋:体が4つに分かれて飛んでいくじゃないですか。そのとき上半身がすごいポーズになってて、どういう思考回路でこうやって飛ばそうと思ったのかなって(笑)。あんな発想ないですよね?

増子:ない! すっごいカッコよかった。そしてあんなに硬そうだったのに、戦ってるときグニャグニャだったよね(笑)。でもめちゃくちゃ強いし、「ピコピコピコー」って音がずっと鳴っているのもいいんだよなぁ。あと好きなのが恐竜戦車! あれは最高でしょ。びっくりしたもんね。強いものと強いものの掛け合わせというか、「つなぎ目どうなってんだ?」っていう(笑)。

ーー戦車の上にそのまま恐竜が乗っているという(笑)。

土屋:わんぱくですよねぇ。トンカツ牛丼みたいなもんですから。

増子:しかも戦車のいいところって砲台なのに、キャタピラーだけなんだっていう(笑)。

土屋:最終的にめちゃくちゃ戦いづらそうでしたもんね(笑)。

増子:斬新だったなあ。キングジョーと恐竜戦車はやっぱり別格かな。何かオモチャ出たら必ず買っちゃうもんね。

土屋:僕はバルタン星人かな。何代目って受け継がれていくのが落語家さんみたいで、僕も寄席芸人として通じるものを感じるんですよね。本当に伝統芸能に近いというか、分身の術とかも昔の忍者から来ているものだし、「フォッフォッフォ」っていう声も鉄板ギャグみたいな感じですよね。みんなが知ってて、何代目までも繋いでいけるのは普通の敵キャラではないですから、すごいなぁと思います。

増子:デザインもすごいし、たぶん敵キャラでは一番人気あるんじゃないかなぁ。“ウルトラマンの敵”といえば、バルタン星人。

「怪獣の悲哀は大人になってからわかってきた」(増子)

ーーバルタン星人は『ウルトラマン』第2話での登場でしたけど、その時点で宇宙人の全てをやり切っちゃったくらいの感じでしたよね。分身の映像もすごかったですし。

土屋:そうそう。あのときバルタン星人は20億人を連れて地球に乗り込んできて、「住ませてくれ」って言ってきたんだけど、地球人は「今20億人以上が住んでいるから無理だ」って断るんですよね。でもそこから50年経って、今や70億人超えているじゃないですか。だからあのとき受け入れてもギリいけたんじゃないかなって(笑)。

増子:技術的にもバルタンの恩恵ありそうだもんね。

土屋:人類がまだ20億人しかいない時代から、ウルトラマンシリーズが続いているのはすごいですよね。『スター・ウォーズ』の11年前って考えると、当時の技術はすごかったなって。

増子:ストーリーも深いからね。『セブン』は実相寺(昭雄)監督の話とかそうだけど、クセが出ているというか。

土屋:メトロン星人の回ですよね(第8話「狙われた街」)。

増子:そうそう。あのボロアパートが開くところ、「どうなってんだよ?」って思ったけど(笑)。

土屋:しかも『ウルトラマンマックス』でまた出てきましたからね(第24話「狙われない街」)。

増子:あれもカッコいいんだよなぁ。新しいメトロン星人は白髭になって、体が真っ二つになったところを縫ってつないでて。切られたのに大丈夫だったんだっていう(笑)。

土屋:怪獣倉庫でキャラクタースーツを修繕するおじさんが匿ってくれて、傷も縫ってくれてたという。この愛情ですよ(笑)。

増子:「もう争うまでもない。待っていれば自然と人類は滅びるだろう」ってメトロン星人に思われているという。素晴らしいよね。

ーーやはり好きなシーンが尽きないですね。

増子:ウルトラマンに育てられて、いろいろと教わったことがあるからね。勧善懲悪とか。ただ、怪獣の悲哀とかは、大人になってからよりわかってきた感じがあるかな。子どもの頃は「やっつけろー!」しか思わなかったけど、怪獣側にやっつけられる理由なんかほぼないんだよね。ただ寝ていたところを起こされただけとか。もともと人間よりも先に住んでいたのに、なんで倒されなきゃいけないのかって。だからウルトラマンもなるべくそのまま帰してやりたいんだろうけど、怪獣ってどうしても言うこと聞かなかったりするから。

土屋:その葛藤はすごいですよね。円谷プロの方がある本で、「バラエティ番組だとしたら、ウルトラマンがホストで、怪獣は毎週来るゲストだ」って言ってて。だから毎回ゲストがおいしくなるように話を持っていって、ゲストの面白さにスポットライトを当てて終わらせるようにしているから、他のSF作品と違ってウルトラマンっていまだに怪獣が愛されているんだろうなって思います。

増子:なるほど。そう考えると、確かに攻撃自体がツッコミだよね。ちゃんと丁寧にツッコんでから、「出たー!」っていう必殺のツッコミで終わるという。

土屋:そうなんです。割と落ち着いて闘う初代ウルトラマンはタモリさんで、兄弟揃ったときに主役になるウルトラマンタロウは場を回していく明石家さんまさんかな、とか思ったりしましたけどね。芸人になってから(笑)。

ーー(笑)。タロウって末っ子気質でちょっとお喋りな感じありますもんね。

土屋:そうそう、一番ひょうきんな感じがあるから。

増子:名前もタロウだし、人間っぽいよね。エースからタロウになったときはびっくりしたもん。「タロウ!?」っていう(笑)。

土屋:タロウの話ってタイトルも面白くて、「タロウの首がすっ飛んだ!」とか「ゾフィが死んだ! タロウも死んだ!」とかね。オープニング見て、「あ、今日タロウ死ぬんだ」って思いましたよ(笑)。

ーーははははは。

増子:浜村淳さんの映画紹介みたいだよね。「もう言っちゃうんかい、全部!」って。

「音楽的にもウルトラマンからたくさん影響を受けた」(増子)

ーー『最新 ウルトラマン主題歌集 ウルトラマンZ』についても伺いたくて。改めて聴いてみて印象に残った曲はありますか。

増子:やっぱり遠藤正明さんの『ウルトラマンZ』の曲(「ご唱和ください 我の名を!」)はたまらんね。昭和世代にも響くよ。その前の昭和シリーズの曲はツアー中とかによく聴くんだけど、聴く度にウルッとくるというか……自分の忘れてしまったものを思い出させてくれる。気持ちが正されるんだよね。どの曲も、その時代で一番カッコいい音を取り入れて作っているのは素晴らしいし、子どもたちもイントロからテンション上がるだろうなって思うんだよね。『セブン』の主題歌とか、「パーン パーン パパーン パンパン〜」って鳴ったら、もうそれだけでテンション爆上がりだもん。

 あとは『ウルトラマン80』の曲が最高だね。ウルトラマンシリーズ40周年のときに、バンド界隈でウルトラソングのトリビュート盤(『ROCK THE ULTRAMAN』)を作ったんだけど、「エイティの曲やりたい」って言ったらもう他のバンドに取られてて。先方から「『怪獣音頭』をやってくれ。ぴったりなんだよ」って言われたんだけど、「怪獣音頭かい!」ってなったよね(笑)。やむを得ずやったら評判良かったんだけど、俺的には『ウルトラマン80』をやりたかった。〈遠くの星から 来た男が/愛と勇気を 教えてくれる〉っていう歌詞がいい。やっぱり地球人は忘れてるんだよ、大事なものを。だから何回もウルトラマンに教わっているよね。

土屋:エイティはただ倒すだけじゃないですもんね。教師やってるから愛情があるし。そういう精神論みたいなものが結構刺さりました。

増子:結局は宇宙人に優しさとか人間性を説かれるっていうね。まぁ仏教とかでも、仏様や神様に教わっているわけだから、人間ってどんだけダメなんだっていう話でもあるけど……。あと、エイティの曲はほぼゴダイゴだなって。アレンジもこの年代ならではの良さがあってさ。

土屋:それまでの勇ましい感じから急に変わりましたよね。途中で英語が入ってきたりとか。

ーー『ウルトラマン80』は『ウルトラマンレオ』から少し間が空いた作品だったので、楽曲も80年代っぽく様変わりしていますよね。その前の『タロウ』『レオ』は阿久悠さんが作詞していて、まさに稀代の歌謡曲という感じです。

増子:『タロウ』の〈ウルトラの父がいる〉っていう出だしはすごいよね。やっぱり掴みが上手い。普通書かないもん。

土屋:(歌詞カードを眺めながら)『レオ』の主題歌は真夏竜さんが歌ってたんですね。この方は、劇中でもスタントを使わないで自分でやってたんですよ。修行で、モロボシ・ダンにジープに追いかけ回されるシーンがあったじゃないですか。丸太で特訓していたらダンが出てきて、「丸太はお前を殺そうとしないだろ。こっちへ来い」みたいに言って、荒野に連れていかれてジープで追いかけ回されるっていう(笑)。あれもスタントなしでやってて、本当に死ぬかと思ったらしいですね。

ーージャッキー・チェンみたいですよね。

土屋:本当にジャッキー・チェン! しかも歌も歌ってるんだから(笑)。真夏さんすごいな。『レオ』の歌もカッコいいですよね。

増子:〈レオ レオ レオ レオ レオ/燃えろ レオ 燃えろよ〉で、「おぉ!」ってなる。少年少女合唱団と歌うっていうのも素晴らしくて。前にアニメ主題歌をやったときに合唱団に入っている友達の子どもを呼んで一緒に歌ってもらったんだけど、なかなか多人数いないとこういう風にならないよね。

ーー増子さんは『帰ってきたウルトラマン』世代ということでしたが、この主題歌についてはいかがですか。

増子:今聴くと、ピッチが微妙に上ずっている感じ。合唱団の歌は正しいと思うんだけど、メインの歌がそことちょっと乖離してるんだよね。でも、その感じがまたいいんだろうなって。あと最後の〈ウルトラマン〉のところ、合唱団の子たちが下の音程を歌っているんだよね。確かにメインボーカルが下がるわけにはいかないんだろうけど、そこで子どもたちが下に行くんだって(笑)。

ーー高い声の方が最後は下がっていくという(笑)。

増子:そうそう。子どもの頃になんかモヤっとしていたのが、大人になって聴いてみたらわかったというか。『帰ってきたウルトラマン』の曲もたぶん試行錯誤の末にここに落ち着いたんだろうけど、それが感じられるのが面白くて。

ーー歌詞で印象的なところはありましたか。

増子:〈近くに立ってウルトラチョップ〉っていうのがいいんだよね。確かに遠かったらチョップは届かないけど、〈近くに立って〉って歌詞でいう必要あるのかっていう(笑)。

土屋:ははははは。必殺技の名前もいろいろ入っていますよね。ウルトラマンの必殺技集みたいな本を持ってて、当時めちゃくちゃ読んでいたんですよ。技のネーミングが本当に面白くて。帰ってきたウルトラマンが怪獣のツノをグイってやる技があるんですけどーー。

増子:それも必殺技なの?

土屋:そうなんですよ。技の名前が「ウルトラ腕力」っていう(笑)。

増子:ははははは。技でもなんでもない、ただの腕力だ(笑)。

土屋:他にも「ウルトラパワー」とか、シンプルな名前がいっぱいあって面白かったです。

ーーここまでエピソードも含めていろいろと振り返ってきましたが、ウルトラマン主題歌ならではの魅力ってどういうところにあると思いますか。

土屋:やっぱり忘れちゃいけない正義感みたいなのものはありますよね。どんどん大人になると汚れていくから(笑)。ふとしたときにウルトラマンの歌を聴いて、初心に帰るっていうのは大事かなと思います。

増子:一つ一つは全然違う歌なんだけど、ウルトラマンらしさは必ずある気がするよね。名刺というか、聴いたら「これはウルトラマンだ!」っていうのが刻まれている感じがする。「今だったらこう言わないだろうな」という時代が色濃く反映されているのもすごく面白いし。

ーーバンドマンの在り方として、増子さんはウルトラマンから何か影響を受けた部分ってありますか。というのも、怒髪天「HONKAI」などで歌われているロックバンドとしての真っ直ぐな言葉と、ウルトラマンが体現してきた正義って重なる部分があるんじゃないかと思っていて。

怒髪天『HONKAI』Music Video

増子:やっぱり年とってきたからか、子どもとかいろいろな人に対して優しく接したいという気持ちになってきたのかな。若い頃は、どっちかというと怪獣や宇宙人の類だったから(笑)。でもウルトラマンから学んだ愛が、自分のなかでどんどんデカくなっていくのは感じるね。

 シーボーズの話とかもそうだけど、やっぱり怪獣をやっつけるだけじゃないんだよね。正義って時代によってケースバイケースで、何が正義かなんて時と場合によって変わっていくから、それをちゃんとウルトラマンから学んでおくべきだなって。自分に何か危害を加えるものが全て悪なわけではないし、帰してやることも大事だっていうのは、世界中の偉い人たちがもっと学ばなきゃいけないんじゃないかって思う。「本来はウルトラマンであるべきなのに、いつの間にか怪獣になってしまってないかい?」って。

ーー救いたい人たちを救えなかったりとか、自己都合だけで怪獣を退治してしまったりとか。葛藤しながら闘うウルトラマンと人間の姿がたくさん描かれてきましたよね。

増子:そう。「正しさ」というものの多様性を教えてくれたのはやっぱりウルトラマンなんだと思う。だから、日本の子どもたちが今もウルトラマンを大好きだっていうのは救いがあるし、日本はまだまだ大丈夫だって思える一因でもあるよね。

 音楽的にもウルトラマンから影響を受けている部分がたくさんあって。11月11日に怒髪天の『ヘヴィ・メンタル・アティテュード』っていう、とんでもないタイトルのアルバムが出るんだけど(笑)、ちょっとマーチ・軍歌っぽい曲があって、そこに「セイ!」っていう気合いを入れる掛け声が入ってるんだよね。聴いてもらったら絶対わかると思うけど、〈セイ セイ セイ〉って、完全に〈セブン セブン セブン〉だろっていう(笑)。ちょうどそれを入れたところだったの。「これセブンじゃん! もうセブンと言ってくれよ」っていうくらいのアレンジなんで(笑)、やっぱり音楽的な勇ましさや力強さもウルトラマンから学んだんだって思うよね。

「ウルトラの星は漫才協会と重なる」(土屋)

ーー土屋さんは、芸人の在り方としてウルトラマンから影響を受けた部分ってありますか。例えば時事的な出来事をエンターテインメントに昇華する姿勢は、『ウルトラマンA』や『ウルトラマンタロウ』が色濃く体現していた作品性と近いものを感じます。

土屋:確かに時事ネタではあるんですけど、僕らの場合は芸能人がやっちゃった系の話とかだから(笑)。あまりためになるニュースは扱ってないですけど……でも、そういう意味では、ウルトラマンって宇宙がテーマじゃないですか。僕らナイツは内海桂子一門なんですけど、桂子師匠は「漫才は宇宙だ」と言ってたんですよ。

ーー「芸術は爆発だ」みたいな?

土屋:まあ、その意味は最後まで全くわからなかったんですけど(笑)。でも、地球も宇宙のなかで回り続けているから、漫才も常に動きながら時代に対応していかなくちゃいけないんだってことを桂子師匠も言いたかったんだと思うんですよ……なんとなく。ウルトラマンも宇宙からきたヒーローをテーマにしながら、時代に合わせて対応してきた部分があると思うんです。子供の頃好きだった桂子師匠の弟子になったのも何か縁があるのかなって思いますし、「漫才は宇宙だ」を理解できる域に行きたいですね。無理やり繋げましたけど(笑)。

 あと僕は、ウルトラ兄弟が集まる瞬間が大好きで。一つの強大な悪にみんなで力を合わせて立ち向かうのが、子どもの頃から特別に感じて好きだったので、仲間を大事にすることはそこから学んだと思います。今でも「一人一人は弱いけど、漫才協会みんなで力を合わせよう」ってなるときは、ウルトラ兄弟が揃ったシーンを感じている気がしますね。

増子:でもさ、こうしてコロナ禍になったから思うのは、いろいろなことを制限されて、お笑いもバンドも人前でライブができなくなったことで、一番得意な必殺技が使えなくなったわけだよね。だからこの状況を切り抜けるためには、ウルトラマンが必殺技を使えなかった回とか、敵に倒された回を見て学ばなきゃいけない。そのときに誰が助けてくれたのか。新しい必殺技なのか、兄弟が集まって助けてくれたのか。もう1回見ておく必要があると思うんだよね。

土屋:確かにそうだなぁ。地球防衛軍が頑張ったときもあったし。

増子:今は人類みんなが必殺技を使えないときだから。でも、それを乗り越えたら必ず強くなるんだよね。

土屋:ウルトラマンは必ず勝ちますもんね。

増子:勝つ。エースキラーなんて本当に憎たらしかったから。ピッチピチの尖がった変な格好していて「なんだよ」って思ったけど、強かったんだよなぁ(笑)。

ーー強敵でしたね。そのときもウルトラ兄弟の絆で新しい技を作って勝ちました。

増子:そうそう。別に一人で勝たなくていいし、みんなで勝てばいいんだから。

土屋:いやー、今のはめちゃくちゃいい話でしたよ。どこかで言っていいですか?(笑)

増子:ははははは。俺はライブのMCでこういう話したら、みんな何とも言えない顔してたよ(笑)。

ーー(笑)。特にタロウは最終回で変身しないで敵を倒すんですよね。ウルトラバッジを自ら捨てて、人間・東光太郎として立ち向かっていったのも印象的でした。

土屋:結局は地球人が強くならなきゃいけないっていうメッセージもありましたもんね。

増子:ウルトラマンの大きなテーマだよね。

ーーウルトラマンシリーズは50年以上にわたって続いてきていますけど、改めてお二人にとってウルトラマンとはどんな存在でしょうか。

増子:恩師というか、師匠というか。教えてくれた先生だよね。音楽としても、イントロだけでこんなにテンション上がるのは「Y.M.C.A.」とウルトラマンシリーズの主題歌くらい(笑)。歌詞も真理を突いているというか、当たり前のことが一番大事なんだっていうことを教えてくれる。大事な教科書かな。

ーー素晴らしいです。

増子:あとは1回主題歌やりたいっていうのはあるけどね(笑)。俺の声じゃ主題歌って感じじゃないから、挿入歌的なものでもいいんだけど。最終的な目標の一つではあるよね。

ーー土屋さんはいかがですか。

土屋:自分の正義感とか、間違ったことを正さなきゃいけないというのをウルトラマンから教わってきました。今も相方の言い間違いをひたすら訂正し続けているので(笑)。

増子:活かされてる……!

土屋:ウルトラマンにも兄弟や家族や師弟があって、そのなかで光の国から地球に代々派遣されてくるわけですけど、漫才協会でも「今度の営業、誰が行く?」みたいな感じで決めてたりするんですね(笑)。一つの組織を運営していると、ウルトラの星も大変だろうなって思いますよ。宮迫(博之)さんが声優をやっていたウルトラマンベリアルが攻めてきたときなんて、めちゃくちゃ怖いですよね、一人で全員倒しちゃうんだから。浅草に吉本興業が攻めてくるみたいな(笑)。

増子:ははははは。

土屋:束になっても勝てない感じ(笑)。そういうところを見ていると、ウルトラの星ってやっぱり漫才協会と重なりますね。最近はウルトラマンキングのようだった桂子師匠が逝きましたから、これからは僕らが前に立って守っていかなきゃいけないなって思いますね、未来まで。

■リリース情報
『最新 ウルトラマン主題歌集 ウルトラマンZ』
2020年10月21日(水)発売
CD(2枚組)¥2,500+税
日本コロムビア株式会社

【収録内容】
Disc 1
01. ご唱和ください 我の名を!/ 遠藤正明『ウルトラマンZ』
02. Connect the Truth / 玉置成実『ウルトラマンZ』
03. Buddy, steady, go! / 寺島拓篤『ウルトラマンタイガ』
04. ヒトツボシ/ 佐咲紗花『ウルトラマンタイガ』
05. Sign / スフィア『ウルトラマンタイガ』
06. Hope the youth / Bentham『ウルトラマン ニュージェネレーションクロニクル』
07. Hands / オーイシマサヨシ『ウルトラマンR/B』
08. 夢飛行 / 三森すずこ『ウルトラマンR/B』
09. GEEDの証 / 朝倉リク with ボイジャー『ウルトラマンジード』
10. キボウノカケラ / ボイジャー『ウルトラマンジード』
11. GO AHEAD~すすめ!ウルトラマンゼロ~ / 水木一郎withボイジャー『ウルトラマンゼロ THE CHRONICLE』
12. オーブの祈り / 水木一郎withボイジャー『ウルトラマンオーブ』
13. Shine your ORB / ボイジャー with クレナイガイ&SSP『ウルトラマンオーブ』
14. ウルトラマンX / ボイジャー feat.大空大地『ウルトラマンX』(『新ウルトラマン列伝』)
15. Unite (ユナイト) ~君とつながるために~ / ボイジャー『ウルトラマンX』(『新ウルトラマン列伝』)
16. ウルトラマンビクトリーの歌2015 / ボイジャー with ヒカル&ショウ feat. Takamiy 『新ウルトラマン列伝』
17. ウルトラマンギンガの歌2015 / ボイジャー with ヒカル&ショウ feat. Takamiy『新ウルトラマン列伝』
18. 英雄の詩 / THE ALFEE『ウルトラマンギンガS』『新ウルトラマン列伝』

Disc 2
01. キラメク未来~夢の銀河へ~ / ボイジャー feat. ウルトラマンギンガ『新ウルトラマン列伝』
02. Legend of Galaxy ~銀河の覇者 / Takamiy with 宮野真守『新ウルトラマン列伝』
03. Final Wars! / THE ALFEE『ウルトラマン列伝』
04. ULTRA FLY / 宮野真守『ウルトラマン列伝』
05. DREAM FIGHTER / 宮野真守『ウルトラマン列伝』
06. ウルトラマンメビウス / Project DMM with ウルトラ防衛隊『ウルトラマンメビウス』
07. ウルトラマンマックス / TEAM DASH with Project DMM『ウルトラマンマックス』
08. 英雄 / doa『ウルトラマンネクサス』
09. Spirit / Project DMM『ウルトラマンコスモス』
10. ウルトラマンガイア! / 田中昌之&大門一也『ウルトラマンガイア』
11. ウルトラマンダイナ / 前田達也『ウルトラマンダイナ』
12. TAKE ME HIGHER / V6『ウルトラマンティガ』
13. ウルトラマン80 / TALIZMAN『ウルトラマン80』
14. ザ・ウルトラマン / ささきいさお、コロムビアゆりかご会『ザ☆ウルトラマン』
15. ウルトラマンレオ /真夏 竜、少年少女合唱団みずうみ『ウルトラマンレオ』
16. ウルトラマンタロウ / 武村太郎、少年少女合唱団みずうみ『ウルトラマンタロウ』
17. ウルトラマンエース / ハニー・ナイツ、少年少女合唱団みずうみ『ウルトラマンA』
18. 帰ってきたウルトラマン / 団 次郎、みすず児童合唱団『帰ってきたウルトラマン』
19. ウルトラセブンの歌 / みすず児童合唱団、ジ・エコーズ『ウルトラセブン』
20. ウルトラマンの歌 / みすず児童合唱団、コーロ・ステルラ『ウルトラマン』
©️円谷プロ

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■番組情報
『ウルトラマンZ』
テレビ東京系にて毎週土曜あさ9時から放送中
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新TVシリーズ『 ウルトラマンZ 』PV初公開! -公式配信- 変身アイテム & 3タイプの姿、初登場!

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