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田中泰の「クラシック新発見」

世界最高峰のオペラを特等席で楽しむ。METライブビューイング・アンコール&新シーズン展望

隔週連載

第15回

ビゼー『カルメン』

「きっとオペラが好きになる」。これは2021年のMETライブビューイング・アンコール上映のキャッチコピーだ。シンプルでストレートながら、見事にオペラの魅力を言い表しているようで小気味よい。過去には「オペラは恋の教科書」なんてのもあったように記憶する。

とかく敷居が高く思われがちなオペラは、キャッチコピーからも伝わってくるように、すべてのクラシック音楽の中でも最も親しみやすいジャンルだ。コテコテの物語に付けられた音楽と歌に合唱、更にはダンスまでもが盛り込まれるオペラはまさに総合芸術の極みだけに、極上のステージを観れば「きっとオペラが好きになる」に違いない。

ちなみに「ぴあ」ではオペラは音楽ジャンルでミュージカルは演劇ジャンルに振り分けられる。その理由は、音楽が主体か演技が主体かの違いによるのだが、名作『ウエストサイド・ストーリー』によって、両ジャンルの壁を軽々と超えてみせたレナード・バーンスタインに言わせれば、「楽しめればそれでいいのさ」となるのだろう。

余談はさておき、その極上のオペラに出会うチャンスが目前だ。毎年恒例の「METライブビューイング・アンコール」が、今年は拠点の「東劇(東銀座)」のほかに「シネ・リーブル池袋」でも上映されるのは嬉しい限り(9月3日〜23日)。過去の上映作品から選りすぐられた極上の18タイトル(『魔笛』は2パターン有り)による怒涛の3週間のスタートだ。

「METライブビューイング・アンコール」上映作品

オペラ初心者でも楽しめること請け合いの定番作品といえば、ヴェルディ『椿姫』、モーツァルト『魔笛』、ビゼー『カルメン』、プッチーニ『蝶々夫人』、ロッシーニ『セビリアの理髪師』、レハール『メリー・ウィドウ』の6作品。

この中には、オペラを構成する必要要素「恋と嫉妬と裏切りと殺人にファンタジー」のすべてが込められているだけに見応えがある。6作品を観終わった時点で“オペラを語れる素敵な大人”の仲間入りだ。

さらに先へと進みたい方にはワーグナーの『ニーベルングの指環』が待っている。映画『ロード・オブ・ザ・リング』と世界観を共有するこの作品は、4部作の総上演時間が15時間以上にも及ぶクラシック史上空前の超大作だ。

しかも今回の上演作品は『シルク・ドゥ・ソレイユ』のロベール・ルパージュ演出となればこれは気になる。現代最高のテクノロジーを駆使した神々の戦いをぜひご堪能あれ。そしてここから先はオペラならではの泥沼へ。「きっとオペラが好きになる」というキャッチコピーに偽りなしだ。

さて、気になるのは、昨年コロナ禍で中止となってしまったMET(ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場)新シーズンの状況だ。こちらもすでに再開が発表され、11月からスタート予定のライブビューイング10演目も公表された。

ヴェルディ『リゴレット』

その内訳は、ムソルグスキー『ボリス・ゴドノフ』、マスネ『シンデレラ』、ヴェルディ『リゴレット』『ドン・カルロ』、R.シュトラウス『ナクソス島のアリアドネ』、プッチーニ『トゥーランドット』、ドニゼッティ『ランメルモールのルチア』にMET初演作品3本の10作品。

2年ぶりのステージがきっと新たな刺激を与えてくれるに違いない。コロナ禍によって海外渡航が厳しい現状において、“世界最高峰のオペラを日本にいながら特等席で楽しむ”という素敵な時間の価値と意味を、再認識する必要がありそうだ。

METライブビューイング・アンコール2021詳細
https://www.shochiku.co.jp/met/

METライブビューイング詳細
https://www.shochiku.co.jp/met/

『カルメン』『フィガロの結婚』『メリー・ウィドウ』『ロメオとジュリエット』『リゴレット』(C)Ken Howard/Metropolitan Opera
『魔笛』 (C)Richard Termine/Metropolitan Opera

プロフィール

田中泰

1957年生まれ。1988年ぴあ入社以来、一貫してクラシックジャンルを担当し、2008年スプートニクを設立して独立。J-WAVE『モーニングクラシック』『JAL機内クラシックチャンネル』などの構成を通じてクラシックの普及に努める毎日を送っている。一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事、スプートニク代表取締役プロデューサー。

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