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KREVA、“通過点”としての武道館公演 バンドスタイルでの“成長の記録”を柴那典が解説

リアルサウンド

19/7/27(土) 12:00

 KREVAのライブの妙味は“構成”にある。

 そのことに気付いている人は少なくないだろう。たとえば三浦大知を筆頭に様々なゲストが登場し多数のコラボを繰り広げる『908 FESTIVAL』もそうだし、たとえば様々な機材を紹介しながら楽曲制作の裏側を解説した『完全1人ツアー2018』もそう。2時間から3時間のステージをいくつかのブロックにわけ、飽きさせないエンターテインメントとして成立させる企画構成力が、KREVAのライブの魅力の一つになっている。

 6月30日、KREVAが日本武道館で行ったワンマンライブ『KREVA NEW BEST ALBUM LIVE 成長の記録』も、まさにそういうライブだった。

 ソロデビュー15周年を迎え、今年の1月から9カ月連続リリース企画を展開中のKREVA。タイトルに掲げられたとおり、6月19日に連続リリース第6弾としてリリースされたニューベストアルバム『成長の記録~全曲バンドで録り直し~』を引っさげてのステージだ。

 つまりはアルバム収録曲を中心に代表曲をバンドスタイルで披露するベストセット的なライブになる、ということは会場に訪れたファンは全員わかっていた。加えて、アルバムにまつわるインタビューでは、KREVA本人が「完全一人ツアーで得たものもあるので、自分が演奏する側で参加するものもあったらいいんじゃないかなっていうのは考えています」「アルバムはライブの曲順を考えて作ったんですけれど、自分の中でもうひとつ違う流れもあるので、それを出せればいいかな。だから、アルバムを曲順通りやるっていうことはないということは宣言できる」と語っていた。

 それを踏まえて、今回の武道館。バンドをフィーチャーしたライブになるというのはわかっていたけれど、「へえ! そうくるんだ!」と思ったのは、本編をメンバー紹介ではなく「楽器紹介」で組み立てたことだった。

 ライブはこれまでのアルバムジャケットが映されるオープニング映像から、バンドメンバーである柿崎洋一郎(Key)、白根佳尚(Dr)、近田潔人(Gt)、大神田智彦(Ba)、熊井吾郎(DJ/MPC)がステージにスタンバイ、無数の風船が天井から放たれた後に白スーツ姿のKREVAが登場し、「居場所 ~2019 Ver.~」でKREVAが「日本武道館、ここが俺らの居場所!」と宣言するという、いきなり熱気のピークに達するような演出でスタート。「王者の休日 ~2019 Ver.~」からオーディエンスのシンガロングが巻き起こった「アグレッシ部 ~2019 Ver.~」と、まずは挨拶代わりのオープニングブロックの3曲を披露する。

 そしてMCでKREVAが告げたのは「バンドのメンバーを一人ずつ紹介するんじゃなくて、各ブロックの頭に一つ一つの楽器を紹介していこうかと思います。そうすることによって『成長の記録』がより多角的、より立体的に見えるんじゃないかと思います」という言葉だった。つまり、今回のライブは単にバンドスタイルで演奏するのではなく、それぞれのブロックの冒頭で各楽器とラップとのセッションを披露しつつ、それぞれの楽器の役割や魅力を解説していくという構成から成り立っている、という宣言だ。

 そこからライブ本編は5つのブロックにわかれて展開。まずは「うちのバンドにエッセンスを加えているのはMPC」と、DJ&MPCをフィーチャー。「国民的行事」と「ACE」をマッシュアップさせたビートに乗せたラップを披露し、そこから「パーティーはIZUKO? ~2019 Ver.~」「トランキライザー ~2019 Ver.~」と、ディスコナンバーを続ける。

 次のブロックはドラムをフィーチャー。「初めてバンドでやったときから、自分で曲を作ってるときから、やっぱり俺は一番ドラムが気になる。大事にしたいと思ってます」と告げ、白根と共にテンポの緩急を自在に操りつつ「中盤戦」をスリリングにセッション。そこから「基準 ~2019 Ver.~」「ストロングスタイル ~2019 Ver.~」「存在感 ~2019 Ver.~」とアグレッシブなナンバーを披露。パワフルな演奏に、特効の火花や炎が華を添える。

 さらには「Under The Moon」でベースとのセッションを披露。「ここからはアレンジもベースに寄せたブロック」と、「I Wanna Know You ~2019 Ver.~」「成功 ~2019 Ver.~」はジャズのテイストに生まれ変わらせたスタイルで披露する。「I Wanna Know You ~2019 Ver.~」の途中で挟んだ「今夜はブギー・バック」のカバーでも観客を沸かせていた。大神田はウッドベースを弾き、柿崎の奏でるピアノの音色とのコンビネーションを活かしたブロックだ。

 続いてのブロックでは「自分の音楽人生は4歳から始まってる」と、クラシックギターを習っていた幼少期を振り返り、そのときに用いていたギターをステージに用意。そこからの流れで、近田が弾くアコースティックギターと共に「希望の炎」を歌い上げる。ここまでと同じくこのブロックも「KILA KILA ~2019 Ver.~」「スタート ~2019 Ver.~」とギターをフィーチャーし、しっとりと歌を聴かせる楽曲を並べる。

 そしてラストはキーボード。柿崎の演奏に乗せ「瞬間speechless」を情感たっぷりに歌い上げ、最後のブロックへ。「C’mon, Let’s go ~2019 Ver.~」で(ようやく)メンバー紹介をし、「イッサイガッサイ ~2019 Ver.~」ではブルースハープを吹き自ら楽器に挑戦。本編ラストは「Na Na Na ~2019 Ver.~」でぎっしり埋まった客席の大合唱と共に締めくくった。

 アンコールで登場したKREVAは「ひとつ、成長の記録としてやり切れてなかったことがあるので」と語り、5月に急逝したベーシスト岡雄三のベースラインが印象的な楽曲をつなげたDJプレイを披露した。これまでのライブや『成長の記録~全曲バンドで録り直し~』のレコーディングでもバンドの支柱として大きな存在感を持っていた岡を追悼した。ちなみにこれまでは岡がバンドマスターだったが、今後はその役割を白根がつとめるという。

 さらには、岡とレコーディングしたというJQ(Nulbarich)とのコラボ曲「One feat. JQ from Nulbarich」を大音量で流す。そして最後はエモーショナルな新曲「無煙狼煙」を披露し、KREVAはステージを降りた。

 つまり、今回のライブにはポイントが2つあったわけだ。一つは、これまで書いてきたような、楽器ごとにスポットライトを当てて音楽の成り立ちを解説するという、『完全1人ツアー』に通じるエデュテインメント的な構成。そしてもう一つは、このライブがアニバーサリーイヤーの“大団円”ではなく“通過点”である、ということ。

 たぶんそのこともファンは予想していただろう。今年でソロデビュー15周年を迎え、今年の1月から9カ月連続リリース企画を展開中のKREVA。普通に考えれば、『成長の記録~全曲バンドで録り直し~』のリリースも、それを引っさげたライブも、アニバーサリーイヤーの企画の到達点になっておかしくない。しかし、『成長の記録~全曲バンドで録り直し~』は「第6弾」。この日の終演後に一気に発表されたのは、続くリリースと、9月26日の『908 FESTIVAL 2019』の開催だった。

 まずは「第7弾」としてライブ当日の24時に「無煙狼煙」を、「第8弾」として8月5日に「One feat. JQ from Nulbarich」を配信リリース。さらに「第9弾」として、9月4日にはBlu-ray&DVD『完全1人ツアー2018 at Zepp Tokyo』のリリースが決定。

 そして、9月18日に、通算8枚目、約2年7カ月ぶりとなるアルバム『AFTERMIXTAPE』がリリースされることが発表された。つまり、今回のライブは「9カ月連続リリースの全貌」を武道館に集まったファンに誰よりも先に告げる場でもあったわけだ。

 おそらく当サイトに掲載されたソロデビュー15周年キックオフインタビューの時にも、アルバムに至る構想はあったはずだろう。その時のインタビューでも現在の世界的なヒップホップシーンの潮流についての話をしているが、それを踏まえても、アルバムのタイトルが『AFTERMIXTAPE』となっていることは、とても興味深い。

 アニバーサリーイヤーの“到達点”として発表された『908 FESTIVAL 2019』も含め、この先が楽しみになるようなライブだった。

(写真=岸田哲平、中河原理英、川澤知弘)

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

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