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凛として時雨がライブで示した、“3人の特別さ” 初期曲と最新曲の対比から浮かぶもの

リアルサウンド

19/6/27(木) 15:30

 6月22日、凛として時雨が『Tour 2019 Golden Fake Thinking』のセミファイナルとなる東京公演を豊洲PITで開催した。彼らがツアーを行うのは、結成15周年イヤーとなった昨年、アルバム『#5』のリリースツアーである『Tour 2018 “Five For You”』および、その追加公演である『Five For You~Vacuum The Hall Edition』以来、約1年ぶり。

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 その間、TKはソロで『katharsis』と『P.S. RED I』という2枚のシングルを発表し、ツアーも開催。345もti-ti.uuでミニアルバム『door』(TKがエンジニアを担当)を発表し、ピエール中野はZiNGをはじめとするレコーディングサポートで数々の作品を発表、フェス開催やDJピエール中野としてのライブなど、個々がそれぞれの活動を行っていたが、久々となる3人の集結に大きな期待が寄せられていた。

 リリースツアーではないために、まず気になるのはセットリストだが、今回のポイントは「初期作中心」ということ。凛として時雨のライブは基本的にMCらしいMCがないので、彼らの意図は定かではないが、15周年という区切りを経て、「3人である」という原点を見つめ直す意味が少なからずあったのではないだろうか。「Telecastic fake show」や「DISCO FLIGHT」といった定番曲はもちろん、演奏される機会の少ないインディーズ時代の楽曲も多数披露され、新旧のファンが歓喜したのはもちろん、メンバー自身にとっても、この3人が揃うことの特別さを再確認するような、エモーショナルな演奏が印象的だった。

 この日のセットリストのもう1つのポイントは、7月3日に両A面シングルとしてリリースされる2つの新曲「Neighbormind」と「laser beamer」が披露されるということ。映画『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』の日本語吹替版主題歌であり、赤と青のスパイダーマンカラーのライティングで演奏された「Neighbormind」は、まさに「3人の特別さ」をネクストレベルで証明するような一曲だったと言えよう。

 かつてはあくまでバンドが軸であり、「サイドプロジェクトとしてのTKソロ」という印象だったが、近年はアニメ『東京喰種』をはじめとしたタイアップが続き、海外でも知名度を獲得するなど、ソロのキャリアも積み上げられたことによって、現在ではバンドとソロがいい意味でのライバル関係となっているように感じられる。アニメーション映画『スパイダーマン:スパイダーバース』の日本語吹替版主題歌として、一足先にリリースされたTKのソロ曲「P.S. RED I」は、ソロならではの自由度を最大限に生かして、ピアノやストリングスといった生楽器とシンセを織り交ぜて作られた楽曲だったが、「Neighbormind」はあの曲と同等のドラマ性を、3人のみで描き出すべく作られた楽曲であるように思われる。

 そして、TKソロとの比較という意味でも、改めてその存在の大きさが明らかになったのが、345のボーカルである。「Neighbormind」もサビにおけるツインボーカルの掛け合いが楽曲のドラマ性に大きく貢献し、曲を締め括っているのも345による〈赤く染まっていく〉という印象的なフレーズ。インディーズ時代の楽曲も数多く披露されたこの日は、それが結成当初から変わることのない、凛として時雨の強烈な個性であることを示していた。

 もう1つの新曲である「laser beamer」は、まるでサンプラーで出しているかのようなエフェクティブなTKのギターがとにかく耳に残る。「Neighbormind」のよれを生かしたようなフレーズも含め、よりシンプルに、かつカラフルに、インパクトの強いフレーズを生み出すことが、今の時雨におけるTKのギターの命題なのかもしれない。もちろん、フロントの2人を下支えするのはピエール中野のドラムであり、この日はソロコーナー前のMCもなく、ドラムソロでは4つ打ちのバックトラックに合わせて変拍子やポリリズムを猛烈な手数足数で叩きまくる、まさに圧巻のプレイであった。

 初期曲と最新曲の対比から浮かび上がる、凛として時雨の変わらない軸と止まらない進化。それが明確に体現されたのが今回のツアーであり、これからさらに新たな楽曲を生み出していくであろう3人にとって、重要な通過点となったはずだ。「また3人でライブをやるので、ぜひ遊びに来て下さい」という345の最後のMCに会場から割れんばかりの大歓声が起こったのは、この日のライブの素晴らしさを物語ると同時に、すべてのオーディエンスがこの3人が集まることの特別さを再度噛みしめていたからに違いない。(金子厚武)

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