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『IT/イット』ビル・スカルスガルド&アンディ・ムスキエティ監督が明かす、ペニーワイズの秘密

リアルサウンド

19/10/24(木) 12:00

 映画『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』が11月1日に公開される。スティーヴン・キングの大人気小説を実写映画化した『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017年)は、ホラー映画の歴代興行収入No.1に輝く大ヒットを記録。その続編にして完結編となる本作では、幼少時代に“それ”の恐怖から生き延びたルーザーズ・クラブの仲間たちが、27年前に固く誓い合った“約束”を果たすために再び立ち上がる模様が描かれる。

参考:『IT/イット』監督が語る、恐怖を与えるために必要なこと 「共感できるキャラ作りを意識している」

 続編では、『IT/イット』を象徴するキャラクターであるペニーワイズが、前作とは異なった形でも登場する。監督を務めたアンディ・ムスキエティとペニー・ワイズを演じたビル・スカルスガルドに、ペニーワイズについて話を聞いた。

ーー今回の完結編では、ペニーワイズは原作どおり、前作とは異なった形でも登場します。造形面ではどのようなことを意識したのでしょう?

アンディ・ムスキエティ(以下、アンディ):僕とビル(・スカルスガルド)は何時間もかけて話し合いをしたよ。ペニーワイズを演じるビルがこのキャラクターに共感することはとても大事だ。彼は、ペニーワイズとしてこれらのことを経験していかなきゃいけないんだからね。どんなふうにこのキャラクターにアプローチするのか、ビルの頭の中を毎日確認することはしなかったけれど、話し合いはたっぷりしている。このキャラクターがどうあるべきか、どんなふうに怖いのかというコンセプト的なことについてだ。そうやって僕らが決めたことのひとつに、“予測がつかない”というのがある。そこからスタートし、ビルは、僕を驚かせるようなことを次々にやってくれた。予測がつかないから、驚かされるわけさ。撮影を始める前に、僕は、それぞれのシーンをどう編集するつもりなのかについても、彼に話している。そして彼にはそれぞれのテイクで違うパフォーマンスをやってもらった。それらを編集で組み合わせたんだ。それはすばらしい効果を生み出してくれた。そんなふうに、かなり実験的なことをやったんだよ。僕は、予定どおりにやったら生まれないものを期待していたんだ。予測がつかないものは予定できないからね。

ビル・スカルスガルド(以下、スカルスガルド):1作目の段階でも、僕らはこのキャラクターのコンセプトについてじっくり話し合っているんだ。今回は2回目だったから、お互いによくわかっていて、素早かったよ。たとえば、顔のバリエーションには10種類くらいあって、それぞれに名前がついていたんだ。この役はとてもテクニカルなので、そうやってスムーズにコミュニケーションが取れたのはよかったよ。

ーーそれは見た目に関してのバリエーションですか?

スカルスガルド:そう。顎を引いて笑うとか、首をひねったのとか。この2作目に入る前、今回のペニーワイズは前と違うのかという話も、もちろんしたよ。1作目で、彼はほぼやっつけられそうになったわけだからね。そんな経験は、彼にとって初めてだったんだ。彼はその仕返しをしたいと思っている。だけど、彼の中には、今度こそ、本当にやっつけられてしまいたいという気持ちもあるんだ。そこが僕にとっては非常に興味深かった。彼は怒っていて、復讐したいと思っている。その一方で、彼はどこかで破壊されたいとも思っているんだ。

アンディ・ムスキエティ(以下、ムスキエティ):いまビルが言ってくれたおかげで思い出したよ。僕らは、ペニーワイズの中に「ついに殺されてしまいたい」という願いがあるというところに、すごく惹かれたんだよね。そこは1作目の時に話したことにもつながるんだ。それは、ペニーワイズは必死でサバイバルしようとしているキャラクターだということ。彼は子供のイマジネーションの中に生きる存在だからね。つまり、生き続けるためには、殺し続けないといけない。殺し続ける限り、彼は生き延びられる。その部分がどこまで完成作に残ったかはわからないが、その概念については、話したね。

ーービルさんは前作の完成後、夢にもペニーワイズが出てきたそうですね。

スカルスガルド:役者の仕事というのはとても奇妙なんだよ。撮影前に役作りをし、その時からそのキャラクターになりきって、長い期間を生きる。その過程において、そのキャラクターと非常に親密な関係を築くことになる。なのに、撮影が終了すると、突然そのキャラクターのことをもう考えなくてよくなるんだ。どの映画の時も、撮影終了の翌日、目が覚めて、「ああ、そうだ。もうあの人のことは考えなくていいんだった」と、ふと気づく。ペニーワイズも同じだった。1作目の撮影では、準備も含め4~5カ月もあのキャラクターになりきっていたんだ。撮影が終わり、僕は飛行機に乗って家に帰り、翌朝はもう彼のことを考えなくてよかった。だけど、夢を見たんだよね。

ーーペニーワイズの方が、まだあなたのことを考えていたと。

スカルスガルド:そうなんだ。家に帰って、僕はまだ時差ボケ状態だったから、すごく変な夢をいっぱい見た。ひとつは、僕がペニーワイズになってストックホルムを歩いているもの。そこで僕は、「このメイクで人前を歩くのはまずい! これじゃあ、ミステリーが台無しになってしまう!」と焦っている。そうやって、怒りながら家に戻るという夢。もうひとつは、自分がペニーワイズを見つめている夢だ。僕は、彼のことがなんとなく好きだなと思っているんだよね(笑)。

ーー今回はルーザーズ・クラブの子供時代と大人時代、どちらとも共演シーンがありましたが、それぞれの撮影を振り返っていかがですか?

スカルスガルド:ふたつの面があると思った。彼らはいま大人だから、怖いと感じることも、大人なりのことになっている。だけど、彼らの中には未熟な部分もある。この映画が見せるように、彼らは大人として完全には機能していない。子供の頃の恐怖体験を拭い去ることができないんだよ。それでペニーワイズはしょっちゅう「僕は君を知っているよ。君は怖がっている小さな子供だ」と言う。そうやって彼は大人になったルーザーたちを挑発するんだ。「君はこんなふうを装っているけど、実際は違うんだぞ」とね。その実際の姿とは恐怖であり、子供時代のトラウマだ。つまりペニーワイズは、彼らを大人として見ておらず、ただキャラクターとして見ているんだよ。スタンリーはスタンリー、ビルはビルというようにね。ペニーワイズにしてみたら同じなんだ。彼は、人と同じ形で年齢を認識しないんだと思う。それに、この映画は本当に見事なキャスティングをしたので、大人版と子供版がちゃんと同じ人に見えるよね? そして彼らは、勝つために子供の頃のトラウマを乗り越えないといけないんだ。

ーー大人を怖がらせるのは子供を怖がらせるよりも難しかったですか?

スカルスガルド:僕の仕事は共演者を怖がらせることではなくて、キャラクターを怖がらせること。だから、アプローチは今回も前回も同じなんだ。もちろんいくつか新しいやり方も使ったけどね。普通は共演者のおかげでいい演技ができるようになるものだけど、ペニーワイズは全然そうじゃない。彼は、共演者に向かって自分のパフォーマンスをするんだ。すごく奇妙なことだけど、ペニーワイズはそういうキャラクターなんだよ。

ーーフラッシュバックのシーンでは特殊メイクなしの顔も初披露されました。

スカルスガルド:違うメイクだけど、あれでもまだメイクはしているんだ(笑)。でもすごく楽しい経験だったね。実は撮影前には一度も試さず、撮影当日に初めてあのメイクをやったんだ。あれが何なのかよくわからないけれども、僕はあのルックスが自分でもとても気に入っていて、写真も撮ったし、良い気分でセットを歩き回った。彼はなにか別のもので、完全にペニーワイズではない。今回の撮影では何度も頭が爆発しそうになったけど、あのシーンもそのひとつだった。もとの脚本は違っていて、実際は僕が即興でやったものが本編に使われたんだ。現場で、あんな奇妙で怪物的なものになっていったんだ。(文=宮川翔)

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