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椎名林檎、児玉裕一監督とともにMVを語る 「ミュージックビデオはモニターを使った音楽の体験装置」

リアルサウンド

19/12/14(土) 18:30


 11月13日に初のベストアルバム『ニュートンの林檎~初めてのベスト盤~』を、さらに12月11日にはミュージックビデオ集『性的ヒーリング ~其ノ伍~七~』『The Sexual Healing Total Orgasm Experience』をリリースした椎名林檎。これを記念して、『轟音上映会 And The Beat GOes ON ~The Sexual Healing~』が12月7日、都内で開催された。

 椎名林檎のMVを数多く手がけ、この会自体も発案したという映像ディレクター・児玉裕一監督は「このスクリーンの2時間だけの支配人、児玉裕一です」と自己紹介。劇場の大きなスクリーンを用い、轟音で作品を体感してもらうことにより「小さな画面では気づかなかったことを感じ取ってほしい」と語り、今回のために児玉が編集した約70分間の映像の上映が始まった。

 冒頭、デビュー当時に作られた、椎名がイメージガールとして登場するTOSHIBA EMIや、EMI御殿場工場の(架空の)CMなどが放映された。その後、「鶏と蛇と豚」「獣ゆく細道」「神様、仏様」「長く短い祭」「目抜き通り」「都合のいい身体」「NIPPON」「浪漫と算盤」など、宮本浩次やトータス松本、宇多田ヒカルとのデュエット曲も含め、全6チャプター・15曲のMVが上映された。

 上映が終わると、客席で見ていた児玉が立ち上がり、会場のお客さんにマイクを向けて感想を聞きながらステージへ。「裏方の人間なので、1人で話すのも限界」と椎名を呼び入れた。発売間近のMV集のパッケージを想起させるチョコレートカラーの衣装を着た椎名が登場すると一際大きな拍手が起こる。児玉は「(クローズドな環境で)強引にMVを見せる会をずっとやりたいと思っていた」と語り、椎名は「直前に言うものですから……」と急に発案されたことを明かした。この日は来場者に「鶏と蛇と豚」「神様、仏様」「都合のいい身体」「いろはにほへと」の絵コンテや、小道具のメモが掲載されたブックレットが配布されており、来てもらったせめてものお礼にと、児玉は「映えるコンテを入れておいた」と語った。

左:椎名林檎、右:児玉裕一

 MVの制作過程について椎名は「(タイアップシングルなどと違い)アルバムとライブはお客さまのためだけを考えて作れるが、プロモーションする時にどの曲を取り出してアルバムのことを伝えるかというコマーシャルの部分は、監督に任せている」と選曲は児玉が行っていると話した。また、児玉は曲に対してMV案を2、3持っていくといい、椎名は「強調したいことを伝えるために、2案どちらも必要ではないかと詰め寄り、全部乗せで、というケースが多い」と明かした。

 また椎名は「長く短い祭」のMVに対する思い入れが強いそうで、児玉は「全女性から怒られる代表の男性のようだった」と椎名から女性の気持ちについて諭されたと振り返った。これについて椎名は「ビデオというのは、例えば石鹸とかそういったアイテムにその人の暮らしぶりが全て映りこんでしまう。だからヒロインがどういう人生を歩んでどういう時間を過ごしてきたのかが間違って伝わるのは許せない」と語り、結局私物を持ち込んだり、ヒロインを演じたSAYAのスタイリングやヘアメイクも椎名が自ら手がけたという。「女性には、今日がもしかしたら人生のピークを迎えているのかもしれない、喜ばしいことかもしれないけれど、同時にそれは今まさに折り返しているのかもしれないという不安がよぎる、そういう1日ってきっとあると思うんです。そういう具体的なことを私は自分なりにリアリティーを持って十代の頃から実感していたから、そういうのが間違って伝わってしまうのがすごく恐怖なのです」と話した。児玉は「その思いを受けて作らないといけないから大変」と話すも、椎名が「でも結果喜んでいるじゃないですか。感謝しています」と微笑む場面も見られた。

椎名林檎 – 長く短い祭

 さらに児玉は「MVは音楽を体感する装置だと思っている。ディズニーのアトラクションのようにいつの間にか終わったらもう一度並びたくなるようなものが理想。音のシーケンス、感情の起伏、椎名の気持ち、これらがうまく掛け合わさった時に良いものになる」と話した。椎名も「曲と映像は似ている」と共感した上で、レコーディングも椎名の場合は「プレイヤーの手癖も含めて家で再現して資料を作ってみて、当日は狙い録りしにいく」と語る。児玉が「設計図しっかりしてるな、すごいなと思ってみている。MVも無駄遣いしない方が良いものになる」と言うと椎名も大いに頷いていた。

 また、ファンからMVは伏線を仕掛けていると言われることに対し「奇跡的につじつまがあっちゃう」と児玉は言う。この理由について椎名は「作り手がリアルな現実社会に暮らしているからだと思う。そのリアリティがお客さんとの共通項となって、つじつまがあっていくのだと思う」と見解を示した。今回上映されたMVについて椎名は「どれも決め所とリンクして表現してくれていて嬉しい」と話した。

 2人は、この轟音上映会を全国で開催したいと話し、会場からは拍手が沸いた。児玉は「MVは自由なカテゴリーで、ディレクターの腕の見せ所なので、MVの世界を盛り上げていきたい」と意気込んだ。最後に児玉は「(椎名が)良い音楽を作ってくだされば、制作も頑張る」、椎名は「MVや曲の枠をこえて、みなさまの暮らしに溶け込みたい」と語り、「2020年こそ、みなさんにとって何か良いことがありますように」と2人で締めくくって、トークショーは終了した。今回上映されたMVは、12月11日発売予定のMV集にほぼ全て収録されるそうなので、是非チェックしてみてほしい。

 この日、児玉が監督したMVを轟音で体感して、どれも彼にしか作れない唯一無二の作品だと思った。またどの作品にも、破壊・衝動・哀愁が含まれているように感じ、MVが椎名の曲の世界観をより鮮明なものにしている。椎名林檎と児玉裕一、共鳴し合う2人の作品をこれからも楽しみにしたい。

(Photo by 太田好治(yoshiharu ota))

■深海アオミ
現役医学生・ライター。文系学部卒。一般企業勤務後、医学部医学科に入学。勉強の傍ら、医学からエンタメまで、幅広く執筆中。音楽・ドラマ・お笑いが日々の癒し。医療で身体を、エンタメで心を癒すお手伝いがしたい。Twitter

椎名林檎オフィシャルサイト

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