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KinKi Kidsが歌うバラードの力ーー「光の気配」制作背景から伝わること

リアルサウンド

19/12/6(金) 6:00

 KinKi Kidsが、12月4日に41stシングル『光の気配』をリリースした。2人が40歳を迎えた今、2人にとって偉大な恩師であるジャニー喜多川氏が旅立った今、そして誰もが1年を振り返り始める12月という今……そんな“今”が重なったタイミングだからこそ、この「光の気配」という歌が心にしみる。

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 「光の気配」を作詞したのは、声優、歌手、ナレーターなどマルチな活躍を見せている坂本真綾。彼女とKinKi Kidsを繋いだのは、2000年から数々の作品を提供・プロデュースしている堂島孝平。同世代の4人に共通しているのは、幼いころから現在の活躍に繋がる才能を開花させてきたこと。そして、人生をかけて続けてきたことだ。

 雑誌『音楽と人』(2020年1月号)のインタビューでは、KinKi Kids、坂本、堂島それぞれの口から、「光の気配」が誕生した背景が語られた。「40歳って、ある意味で人生折返しの年齢じゃないですか? だからこの歌をきっかけに思い出すのも悪くないかな、って」と、堂本光一が感じたように、「光の気配」を聴きながら自分自身の今までを思い返してしまう。

 「長くひとつのことを続けてるって、想像以上に大変なんですよ」とは坂本。それは、“歌う“、”演じる“、”作る“という作業だけではなく、“生きる“ことにかけてもそうだ。〈今日まで僕が手に入れたものを数える 犠牲にしたもの 奪ったものはいくつ〉という歌詞を聴いた瞬間、まるで紙で指を切ったときのような痛みが走った。致命傷ではないけれど、気づけばジンジンと広がっていくような痛みだ。

 生きていれば、手に入れたものと引き換えに、こぼれ落ちたものがあることを、私たちは知っている。あることを選択したということは、そのほかを選ばなかったということ。そして、多くを手に入れているように見えているアーティストたちは、視点を変えれば他の人が手に入れているものを手放してきたとも……。

 そんなふうにわかっているのに、見なかったようにしていたことが、新しい年齢になる節目や、新しい歳を迎えるタイミングで、突きつけられる。だから、誕生日の前や、この時期はなんだか焦燥感に駆られるのかもしれない。

 この曲は、その痛みにもまっすぐに向き合い〈選ばなかった道はもう振り返らない この先どこかで繋がるはずさ〉と言ってくれる。堂本光一も「この曲の根本にあるテーマは前向きだなと思った」と話すように、迷ったり焦ったりしても、行き着くところはきっと同じで、その光を求めて彷徨っているのは、自分だけじゃないと言ってくれているような気がする。

 わかりやすい応援ソングではない。売れ線のジャパニーズポップスでもない。キラキラのアイドルソングでもない。でも、小さな痛みを受け止め、一つずつできることを丁寧にやっていこうと、落ち着かせてくれる。それがKinKi Kidsの歌うバラードの力。

 「漠然とした喪失感や虚無感が滲んでいる歌は、KinKi Kidsとしてもすごくリアル」と語ったのは堂本剛。もちろん、その心にあいた空間とは、ジャニー喜多川氏を亡くしたという現実だ。関西にいた偶然同じ名字の少年2人がデュオを結成し、表現者として私たちの生活に根付いたのは、ジャニー喜多川氏がいたからこそ。

 「ジャニーズという音楽の素晴らしさをKinKi Kidsなりに、僕なりに、頑張って鳴らし続けてほしいって言ってるような気が僕はするんですよね」インタビューの最後に堂本剛はそう語った。そして堂本光一も「これからも自分の中で生き続けてるジャニーさんと、喧嘩しながらやっていくんだと思います」とも。

 2人が今、感じている光の気配とは、恩師が作ってくれたKinKi Kidsという場。繋いでくれたファンやアーテイストたちとの縁。そして、その人たちと歩んできた道のりそのものなのかもしれない。

 2019年も、あと1カ月弱。「あのとき、ああしてれば、こうしてれば……」と悶えることもあるけれど、きっとこの曲を聞けば、自分の中にある〈かすかな光の気配〉に気づけるはず。この年末は『KinKi Kids Concert 2019-2020』も開催される。KinKi Kidsと共に〈まだ叶えてない夢 出会えてない人たちを なりたかった自分を 思いがけない何かを〉、2020年を迎えに行こう。(佐藤結衣)

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