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佐藤健の告白に詰まった麦田の成長 『義母と娘のブルース』最終回はドラマオリジナルの“奇跡”に?

リアルサウンド

18/9/12(水) 15:55

「つまり、店長は私にとって“小さな奇跡”ということです」

 今日電車で隣りに立った人、宅配に来た人、飲食店で注文を取った人、SNSで見かけた人……私たちは日々、多くの一期一会を繰り返している。通行人AやBといった群衆の中から、その存在を認識し、さらに特別な人になるのは、一体どのくらいの確率なのだろうか。 そんな会話が釣り船の形をした居酒屋でなされる、なんともにくい演出。『義母と娘のブルース』(TBS系) 第9話では、あらためて多くの生物が行き交う“今”という大海原から、“この人に会えてよかった”と思える人とめぐりあう奇跡に気づかされた。

 義母と娘の出会いから約10年。亜希子(綾瀬はるか)の会社に出入りするバイク便スタッフとして、良一(竹野内豊)がふと足を止めた“奇石の花屋”の店員として、またあるときはみゆき(横溝菜帆)の通う小学校でトイレを借りるタクシー運転手、亜希子とマンションの買い手をつないだチラシを落としたコピー機回収スタッフ、最期のときを迎えた良一と亜希子とみゆきを乗せた霊柩車のドライバー、そして亜希子が再就職するベーカリーの店長に……と、様々な形で親子の物語に接触していた麦田章(佐藤健)。

 私たち視聴者は、第1話から“また、こんなところに佐藤健!” と楽しませてもらっていたが、それは全体を見渡せる神の視点であればこそ。第9話にして何度となくすれ違っていたお互いの存在を知り、亜希子と章は笑い合う。きっと私たちが生きている現実でも、意識していないだけで、こんな出会いと別れが繰り返されているのだろう。街には、まだ知り合っていない“縁”深い人たちがいる。そう思うと、なんだか私たちの身の回りにも小さな奇跡がまだまだたくさんありそうだ、とワクワクしてくる。

 思い返せば、亜希子と良一もお互いにライバル会社のひとりという関係だった。コンペでは、あらゆる策を講じて勝利をもぎ取る亜希子と、あらゆる方向から飛んでくる上司のちゃんばらお小言を受けて笑う良一。花見会場では、全力で宴会芸に取り組む亜希子と、のんびりと場所取り楽しむ良一……何度も通り過ぎてきたふたりが交わる人生の面白さ。良一が、 亜希子の仕事人間という鉄仮面の下にある、愛情深い顔に気づけたのも、日頃から小さな奇跡探しをしていたからかもしれない。

 目の前の人と、自分の人生を重ねて見る。それが、小さな奇跡を見つける第一歩だ。章と亜希子を近づけた大きなきっかけは、章が親を亡くしたみゆきに親孝行できていない自分を投影したことだった。親から逃げるように職を転々としていた章は麦田ベーカリーに戻る。そして、とても経営難に陥ったその店は、亜希子にとって高校生のみゆき(上白石萌音)に親の背中を見せる絶好の場所になる。このめぐり合わせをドラマのご都合主義としてみるか、それとも今この瞬間も自分に起こりうるかもしれないと重ねて見るか。そこでも、小さな奇跡を引き寄せる力が大きく変わってきそうだ。

 「9年だもん、好きな人のひとりくらいできたって当たり前だよね」。良一の旅立ちから9年という月日が経った。人は大きくは変わらない。だが、その間に繰り返された多くの出会いと別れで、人間関係は確実に変化していく。亜希子に恋い焦がれていたあの田口(浅利陽介) も結婚するのだから。みゆきは複雑な想いを抱えながらも亜希子の幸せを願い、章の恋を応援する。当の亜希子の気持ちは置き去りではあるものの「全力でみゆきの父ちゃんになるぞ!」と、ふたりが盛り上がる姿につい頬が緩んでしまう。人を好きになることは、なんて生活を明るく照らすのだろう。

 「やれってんなら、米でパン焼きます。やれってんならパンで米作ったっていいっす。だから俺に一生お世話されてください」。ご飯党の亜希子に、パン職人としてありったけの愛をぶつけた告白。形ばかり美しかった章のパンは、亜希子と出会ってバリエーション豊かになった。それは、章自身の人生にも言えること。外見ばかりのイケメンから、味のある男性へ。人と深く知り合えば、ときに思いもよらぬ化学反応が生まれる。そして人の成長こそ、 最大の奇跡だ。ハイタッチか握手か、長い時間を共に過ごすうちにふたりの息も合ってきた。それは、章はもちろん亜希子自身の成長の証でもある。

 手を取り合うという小さな奇跡を繰り返し、 人生はあっという間に過ぎていく。気づけばこのドラマも、次回が最終回。果たして、章の告白に亜希子はどう返事をしたのか? 原作通りの結末なのか、それともドラマオリジナルの奇跡が描かれるのか。きっと見終えた後、多くの人が“このドラマと出会えてよかった”と思える小さな奇跡が待っているに違いない。

(文=佐藤結衣)

■放送情報
火曜ドラマ『義母と娘のブルース』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜23:07放送
出演:綾瀬はるか、竹野内豊、佐藤健、横溝菜帆、川村陽介、橋本真実、真凛、奥山佳恵、浅利陽介、浅野和之、麻生祐未
原作:『義母と娘のブルース』(ぶんか社刊)桜沢鈴
脚本:森下佳子
プロデュース:飯田和孝、大形美佑葵
演出:平川雄一朗、中前勇児
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/gibomusu_blues/

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