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松本潤×香川照之×杉咲花が語る『99.9』映画版。「帰ってきたな、という感じがする独特のチームです」

ぴあ

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松本潤主演で2シーズンにわたって連続ドラマとして人気を博してきた異色の法廷ドラマ『99.9 -刑事専門弁護士-』がSPドラマ、そして映画版の豪華2本立てで帰ってくる! SPドラマでは“3代目”ヒロインとして杉咲花が参戦! 松本と香川照之のかけあいに杉咲が加わることで、斑目法律事務所の刑事事件専門ルームはさらににぎやかに。SPドラマの放送と映画の公開を前に、松本、香川、杉咲が本作の見どころについてたっぷりと語り合う。

香川がいたのは“末席”、それとも“メイン”!?

――松本さん、香川さんにとってはSEASON2から3年ぶりとなる『99.9』であり、待望の映画版となりました。過去のドラマ2シーズンとの違いなど含め、どのような思いで本作に臨まれたんでしょうか?

松本 多少なり違いはあった気がします。連続ドラマで2回やらせていただいた作品で、これはあくまでも僕の個人的な思いですが、連続ドラマに向いている作品なんじゃないかという気がしていたんです。





 連続ドラマでそれぞれのエピソードの中で無実を証明していきますが、それぞれのキャラクターの関係性やストーリーが連続ドラマの中で進んでいく展開は想像がついたんですけど、単発の登場人物、展開だけでストーリーを成立させるのが難しい作品なんじゃないかな?という気がしていたので、最初に映画の企画のお話をいただいたときは、「どうなるかなぁ? うまくできるかなぁ?」という思いはありました。

ただ、実際にでき上がってみたら、スペシャルドラマから始まって映画で着地する2本立てになったことで、花ちゃん演じる穂乃果や西島(秀俊)さん演じる南雲など新登場のキャラクターが、どういう人で、ストーリーにどう絡んでいくのかなどがすごく分かりやすくなったと思うんです。その点、『99.9』らしい映画でありながら、映画館で観て気持ちよく劇場を後にできる作品になっているんじゃないかと思います。



香川 僕もほぼ同じ思いですね。連ドラ向きか単発向きか?ということに関しては、僕はそこまで思いが至らなかったんですが。僕らレギュラー陣はキャラクター作りはすでに終わってるんですけど、毎回、撮影台本が上がってきてから「ここが……」「あそこが……」と追われるのが大変なので、「それならば最初から関わらせてほしい!」「なんなら、脚本を書く前から関わらせてください」という思いはありました。

2018年のSEASON2が終わってすぐに、次回の構想はあったので、「さあ話し合いましょう!」とばかりに打ち合わせが重ねられ、プロデューサーふたりと松本さん、そして末席に僕も携わらせていただきながら……。

松本 末席じゃなく“メイン”にいましたよ(笑)!

香川 いやいや(笑)。次、どうするんだ? というような話し合いが早い段階で行なわれていて、そこで紆余曲折を経ながら、次は単発のドラマと映画の2本立てにしていくという流れになりました。そこまでで話し合いはほぼ終わっていて、あとはいつもと同じどおりにやろう!というスタイルで臨めたので、話し合いの期間を十分に取れたことがこれまでとの違いだったかなと思います。

──単発ドラマと映画の2本立てという“スタイル”の部分、ストーリーの“内容”の部分の両方におふたりが関わっていたということですか?

香川 そうですね。



――杉咲さんは今回からの参加ということで、でき上がったチームに入っていくことにプレッシャーや緊張はありましたか?

杉咲 はい。緊張していました。

松本 またまた(笑)!

杉咲 いやいや(笑)! 長い時間をかけて作られてきた作品ですし、みなさんの力が入っていることも感じていたからこそ、どれだけ役として溶け込んでいけるか?という緊張感がありました。

松本 またまた(笑)!

杉咲 本当です!



木村ひさし監督の興味は穂乃果のキャラ作りにしかない!?

――深山、佐田、穂乃果の3人が揃うシーンでの杉咲さんのハジけっぷりがすごかったですが、現場ではあの関係性をどのように作っていったんでしょうか?

松本 台本どおりですよ(笑)? 台本どおりにしかやったことないですよね(笑)? 過去SEASON1、2で榮倉(奈々)さんや(木村)文乃さんが演じてくださったヒロインとはまた(深山との)距離感や関係性が違っていて、そこはやっていて新鮮でしたね。前作までのふたりのヒロインのキャラクター設定よりも“バディ”を組んでいる感じが強かったので、そこは今までの芝居とはまた違うところがありました。

じゃんけんの構図というか、穂乃果は僕(深山)には弱いけど、佐田先生には強くいける、みたいな構図をイメージしてやっていたので、僕の中では深山が穂乃果を近くに置く理由ってそれしかないんですよね。彼はひとりで全部やりたい人なんで(笑)。でも(穂乃果を)うまく使えば佐田先生に攻撃ができるからということで、穂乃果と良い距離感を保とうとしたり、丁寧に扱おうとするようなところを面白おかしくできないかと思ってやっていましたね。



香川 そこは今回、映画とは双子の関係にあるSPドラマの方で描いているので、ドラマから観ていただくといろんなことが丁寧に説明されています。その過程で、松本さんが今お話しされたじゃんけんの構図のベクトルだったりについても、話し合いながら「これがいいよね」ということで生まれたりしました。

その中で一番大きいのは、木村ひさし監督のキャラクターづくりへの執念というか、誰に何と言われても「これでいく」と決めたときの面白さですね。特に今回杉咲さんが演じた河野穂乃果への思い入れがすごかったみたいで(笑)。SPドラマの現場で杉咲さんに“木村節”がどんどん植えつけられていく過程が、僕らにとっては「いいなぁ」というか、やっぱり木村さん、頭おかしいなと(笑)。僕らはもうキャラクター作りが終わってるので、木村さんの興味はそこ(=穂乃果のキャラ作り)にしかないわけですよ(笑)。

――杉咲さんはこの個性的なキャラクターを演じられていかがでしたか? おふたりから影響された部分などもあったんでしょうか?

杉咲 客観的に見たアドバイスをたくさんいただきました。弁護士を演じるのは初めてだったので、法廷のシーンなどでは特に、どう立ち回りをしたらいいかが分からなくて。たまたま前日に法廷の中に待機場所を作っていただいたことがあって、そのときにおふたりからアドバイスをいただけて、たくさんのヒントになりました。



――穂乃果の決めポーズなども……。

松本 あれってどうやって生まれたんだっけ? 木村さん?

杉咲 そうです(笑)。気仙沼(でのSPドラマ撮影)の時点で……。

松本 もうやってたっけ? 「ビシッ!」ってね(笑)、効果音まで口に出すという……。

杉咲花はすごいエンジンを積んでいる!?

――クランクアップから少し時間が経っていますが、あらためて撮影期間の3カ月を振り返るとどういう3カ月でしたか?

松本 なかったことにしたい(笑)。嘘です!

なんでしょうね……? これまで、そんなに数をやっている方だと思ってないですけど、僕の中でも独特の現場なんですよね。チーム感があるし、今回を含めて3回目ってこともありますが、「帰ってきたな」という感じがする独特のチームだなと。

個人的には2021年に入って、(嵐としての活動)休止後に初めて入る作品がこの現場だったことはすごく大きかったし、感謝しています。“戻ってきた”感のあるところに入ってのびのびとやらせてもらえた現場なので、それは非常にありがたかったですね。

香川 僕はいつものように『99.9』のチームとして松本さんとじゃれてただけだったので、「イイ夏休みだったなぁ……」って。

松本 “休憩”ですもんね(笑)?



香川 SPドラマと映画の2本立てですが、SPドラマもCMを入れたら2時間では収まらなくて。監督が必ず「尺は青天井です!」って言って(笑)、こっちは芝居の時間を好き放題に延ばしていってたので、決してハイペースで撮影したわけじゃないんです。

先月、僕は別の局のドラマの撮影に入ってたんですけど、2時間ドラマでも10日間くらいの撮影で普通は終わるんです。4時間の尺でも、今の時代はドラマの手法と映画の手法ってさほど変わらないので、終えようと思えば20日間くらいで終えられるんですよね。

この作品はクランクインが4月の半ばくらいで、アップが7月の上旬ですから3カ月かかっているわけです。そういう意味では、僕の体感としては連続ドラマ10本撮ったのと変わらない。今回、単発と映画で台本は2冊ですけど「また連続ドラマをやらせていただいたな」という3カ月でした。それくらいずっと関わることができて、楽しくやらせていただいた作品です。

杉咲さんも楽しんでいただけたようで……本当は心の中ではイヤだったかもしれないですけど(笑)。

杉咲 なんでそういうこと言うんですか(笑)!

香川 表面的には笑顔でいてくださってよかったなと思える3カ月でした。



杉咲 作品をより面白くするにはどうしたらいいのか?ということを常にみなさんが考えられていた日々だったと感じていて。これほどみんなで作品を“育てている”感覚のする現場が、私にとってはすごく刺激的でした。撮影の合間に台本の読み合わせをすることもあって、みなさんが本当に作品に愛情を持っていて、「良い作品にするんだ!」という思いがあふれている現場で。贅沢な時間を過ごさせていただきました。

――先ほど松本さんは、穂乃果の存在について「新鮮だった」とおっしゃっていましたが、杉咲さんとの共演はいかがでしたか?

松本 現場でもずっと言ってたんですけど、とにかくものすごいエンジンの持ち主だと思います。SPドラマの気仙沼のシーンがクランクインだったんですけど、そのタイミングで元々台本に書かれていない穂乃果の設定を木村監督が肉づけして、キャラクター形成をしていったんです。そのときのキャラクターをつかんでいくスピード感だったりを見て、「これはすごいな」と。

普通は、“アイドリング”と言いますか、どこまでギアを入れていいのか?という部分で躊躇しがちになるものだと思うし、(やってみて監督が)「もっとやっていいよ」「もっともっと!」となるものだと思うんですけど、そういうことがなくいきなりトップギアで本番をやられるんです。その姿を見て「このエンジンはどこに売ってるんだろう(笑)? すごいもの持っているな……」と思ったので、気仙沼のロケが終わった時点で「もうキャラクター掴んでるよね?」という話をしたのは覚えています。

だからそこから先、もちろんご本人はバランスのこととか考えることはあったと思うんですけど、キャラクターの方向性とかはわりとすぐキャッチしたという印象でした。「さすが朝ドラヒロインだな」って(笑)。朝ドラから来るとこのエンジンなのか?と思ったんですけど、それは彼女自身のエンジンでしたね(笑)。

香川から杉咲へ、かつて贈ったアドバイス

――香川さんと杉咲さんは過去に親子を演じられたこともありますが、今回はまた違った関係でした。

香川 彼女が14歳のときに……っていつも「14」って言ってるんだけど、間違ってるんだっけ? 15? 16?

杉咲 16歳くらいでした(笑)。

松本 全然間違ってるじゃん(笑)!

香川 僕の中では“14歳”ってイメージなんだけど(笑)。杉咲さんがそのくらいの歳のときに親子役で語るシーンがあったんですが、いろんな子役の方がいる中で、ちゃんと“くすぶっている何か”、“黒い何か”、“否定している何か”、“コンプレックスである何か”、“イヤな部分”、もしかしたら他人を傷つけるんじゃないかという“悪”の自分――そういったものをしっかり持っていたんですよね。

それを僕は“変態”という言葉で呼んでいるんだけど、ちゃんと彼女にも変態な部分があるなと。ちゃんとダークサイドがあるな、どういう育ち方をしてきたんだろう?と感じる部分があったんですよね。

時を経て、今回また共演して、いろいろ話を聞くと「私、臆病なんです」って言うんです。それが僕もすごくよく分かるんです。僕も同じく臆病で。“窮鼠、猫を噛む”という言葉がありますけど、追い込まれてパンチを打っちゃうんですよね。そのときに、ちゃんと“悪”のコショウがパッと振りかけられる部分を内包してるんです。

でもどこかで引っ込み思案で内向的な自分がそこにブレーキをかけていることで、松本さんが今おっしゃった思いきりトップギアで行っても“良い着地点”に行くんですよ。ただそれも、センスがないとメチャクチャになるものなんですけど、いい意味で内向性がブレーキになって、一番上限のところにくるんです。

そのセンスは今回、何度も見たし、本当は引っ込み思案のところと、女優として打ち出したときの“悪のスパイス”とを打ち出すパワーが良い配分だなぁ……と。今、23歳? よくここまでなられたな、このまま行ってほしいなと、成長の過程を確認した瞬間でした。



杉咲 私は以前ご一緒させていただいた撮影の最終日に、香川さんからアドバイスをいただきまして……。

香川 『MOZU』のとき?

杉咲 はい。

香川 なんにも覚えてないんだよ……(笑)。

杉咲 当時、自分の中にあった悩みを相談させていただいたんです。そのときに香川さんは「嫌われてもいいんだ」っておっしゃっていて。「いい作品にするために、自分がどこまでやれるかということが一番大事なんだ」と言ってくださって、それから現場で悩んだときは、何度もその言葉を思い出しました。

どうしても自分のことを守りたくなってしまう瞬間が出てくることってあると思うのですが、そんなときに香川さんのお顔が浮かんで。良い作品にするために自分には何ができるかを考えて、今まで以上に真っ直ぐに向き合っていけるきっかけをくださったので、今回またご一緒させていただけたことが本当に嬉しかったです。

松本 いい人でしたねぇ……(笑)。

松本潤が現場で見せた“0.1%”の奇跡

――みなさんが実体験で“99.9%”不可能だと思っていたけど、なんとかやり遂げることができた経験などはありますか?

松本 なんだろう……? 不可能なこと……。

杉咲 私は運動が苦手なのですが、最近ウォーキングマシンを買ったんです。家にあるとちゃんと毎日やるんだな、と(笑)。

松本 でも外には行かないの(笑)?

香川 外にはいろいろ危険があるからね(笑)。

杉咲 (笑)。家にあったらいつでもやれるな、って(笑)。

松本 ウォーキングやりながらセリフを覚えたり……?

杉咲 ドラマや映画を観ています(笑)。



香川 僕は料理。絶対に一生できないと思ってました(笑)。後片づけのこととかいろいろ考えちゃったりして、絶対にできないだろうと思ってたけど、この(コロナ禍の)状況で外に出られなくなって、やりだしてみたら……まぁ、良い料理人になりました!

松本 油淋鶏(ユーリンチー)とか作られてましたよね?

香川 食べていただいたことありましたね。唐揚げを失敗したんだよね? 撮影で唐揚げのシーンがあったので。

松本 前日に唐揚げの練習をしていたら、うまくできなかったと。

香川 二度揚げを映画と同じようにやってみたんだけど、できなくてビチョビチョになっちゃったのよ(笑)。

松本 それにアレンジを加えて「油淋鶏にする」って言い出されて、「マジか?」って(笑)。そうは言っても初心者じゃないですか? 「初心者が油淋鶏作れるの?」と思っていたら、とてもおいしくて! ビックリしました。

香川 0.1%もなかったんですよ、可能性。

松本 僕はなんだろう…? でもわりと、ドキドキしながらやってますけどね……。 今回の現場でもありましたけど、実際に脚本で描かれていることを自分の頭で想像して、現場に入ってみると「なんだこりゃ!?」ということってあって、その可能性を事前になるべく潰すんですけど、潰しきれていないときってたまに起こるんです。特にこういう作品だと相手の方もいるので、相手とのやり取りをしている最中に「いや、これ刺さりきってないな」と思うときってわりとあるんです。

今回もそれがあって、「いや、これもうちょっとこういうふうにした方がいいんじゃないか?」とか言うんですけど、それって自分の首をどんどん絞めているだけなんです。なぜなら、新しいセリフを覚え直さないといけないから(苦笑)。

「そうですね」とみなさんに納得していただいて、じゃあやるか!ってなったときが、僕はものすごくヒリヒリしてて。だってこれを僕が喋れないと現場がどんどん押してしまうだけなので。不可能だと思う瞬間を頭の片隅に置きながら、「なめんな!」って反骨心みたいなものでなんとか乗りきるっていうことは運良くできているので、今もお仕事が続いています(笑)。

香川 SPドラマのクライマックスの法廷シーンでも、まさに自分で自分の首を絞めながら「全部変える」と。プロデューサーとずっと(変更の話し合いを)やっているわけですよ。その結果、似ても似つかないセリフが出来上がって、そんな作業を30分でやって、30分で1ページ以上覚え直して、「これはすごいなぁ……。深山が乗り移ってるんだなぁ」と思いましたね。あれはまさに0.1%でしたね。

松本 ギリギリセーフでした(笑)。



取材・文:黒豆直樹 撮影:川野結李歌

『99.9 -刑事専門弁護士- THE MOVIE』
12月30日(木)公開

(C)2021「99.9-THE MOVIE」製作委員会



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